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18話 解毒薬を作ったら

リゼルが毒を注入される前の出来事です!

 シウィアは今日も、国民に認められようと色々国のためになる政治の本や、資料集を読んでいた。リゼルを送り出して二時間か経ち、今は『王女の図書室』……ではなく、個室の研究室にて研究をしていた。


(ザレンカの毒を無効にする解毒薬………何とかして、作れないでしょうか)


 資料集はもう一時間くらい前に読み終わっており、暇になってしまったためこうして個室にて研究をしているのだ。


(花弁の毒を取り除けば、いける?)


 毒と言えど、猛毒だ。だがザレンカの研究は、リゼルが自分の近衛になる前からずっと行っていた。色々な可能性を試し、失敗していった。だが、逆に選択肢が絞られていく。こうしても駄目、ああしても駄目となると、そしたら………という言葉が広がっていくのだ。


「やってみるしか、ないでしょうね」


 気合いを入れるためにそう呟き、白衣を羽織った。

 別に、シウィアは研究が趣味な訳でも好きな訳でもなかった。それでも王家に住む一人の人間として、民に認めてもらえる人間でなければという気持ちから研究していた。


「やらなければ。きっと、成功したら、皆に、認められる……」


 それ一心で、いつも乗り越えてきた。

 ザレンカの毒を取り除いて、その取った毒とリゼルが軍手を紫色に染めても採集してくれた、その茎の猛毒を研究すれば、解毒薬が作れるかもしれないと思っていた。それが最後の可能性、そして成功したなら、きっと皆の役に立てる。


(花弁は触れば紫色に肌が染まる。茎の毒に触れた軍手の色は、痛々しい紫色でも、少しだけ赤が混じっていた)


 リゼルは気付いていなさそうだったが、シウィアは観察眼が人並み以上。その観察眼を頼りにシウィアは研究を行ってきた。ただ皆に認めてもらいたい一心で。


「赤………それを、分けて………」


 保管していたザレンカが、この個室にはある。冷蔵庫とか、そういうのに入れているのではなくて、ただ木製で作った箱に入れているのだ。木は毒が唯一効かない素材だから。解毒薬が出来たら、木箱に入れようと、既に木で造った箱は用意している。


(あった)


 木箱に入れていたザレンカを、軍手をつけながら取り出し、急いでまな板に置く。そして、包丁で切っていく。もう料理みたいになっているが、手で触らないためにはそれが一番だ。


「やっぱり………赤い箇所がある」


 その赤いところだけを器用に小瓶に移し、冷蔵庫に入れる。多分、温かくして駄目ならば寒くすれば良いのだろうと。これまでの経験からそう思い、シウィアは小さい冷蔵庫に毒を入れた。


 そして暫く経ち冷蔵庫を開けてみると、赤の毒だったのが紫の毒になっていた。


 軍手をその毒に少しつけてみると、薄紫になっていた。


 資料集には、ザレンカには回復するの効果もあるが猛毒が入っていると書かれてあった。ならば——。


「…………そうしたら、いける」


 ♢*♦︎*♢


 シウィアは赤から紫に変わった毒を取り出し、温水を入れる。そしたら、あっという間に紫から赤に変わっていた。逆にキンキンに冷やした水を入れてみると、赤から紫に変わった。

 この毒自体が、解毒薬の材料になっているのかもしれない。


「毒も工夫次第では、薬になる………」


 資料集やこれまでの経験を元に、シウィアはその毒と他の薬草を入れていく。その薬草と毒を麺棒(めんぼう)を縦に持ち混ぜて、潰していく。そして蛇口で温かい水と冷たい水を同時に入れて、複雑な色にする。

 試しに軍手をつけてみると、それには全く、色がなかった。


「っ………!」


 色がない。ザレンカの毒を意味する痛々しい赤色や紫色がない。毒が消えた。これで、回復する効果だけが残った。

 茎の毒はあまり研究されていないから、気付けなかったのだろう。茎は赤い毒が混じっていて、それは冷やせば毒が少し薄れ、薄紫色になるということが。

 温水と冷水を交互に入れていけば、毒が消えるのだ。


「そっから………」


 毒が消えたとされるそれに、シウィアは薬草を何個か入れる。


「これと、これ。それも混ぜて………」


 次々と他の解毒薬で使用されていた薬草を毒を抜いた回復の効能だけのその液体に入れ、麺棒でまた混ぜていく。そして、出来た。ザレンカの毒に効く、解毒薬。


「これを、御父様に認めてもらえれば………!」


 試しに小指に液体をつけて舐めてみる。液体をつけても、小指は薄紫色にも痛々しい紫色にも染まらなかった。そして、舐めても吐き気や苦しい感覚もなく、毒が入ったなどそんなことはなかった。


「お願いっ。これで、解毒薬が出来たと思うんです………」


 父、国王に認めてもらうため、シウィアは個室を出て王がいる広間へ向かった。

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