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世界の修復作業は死にたい僕に託された  作者: 鳥眠具
第一章「間違い探しの始まり」

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第三十四話「渡さない」

 「彼って——林道のことか?」


 僕のこと......? やっぱり、あの襲撃時の狙いは最初から僕だったのか。でも、どうして?

 僕は——味方に数えられてすらいなかった。


 後ろで砂藤さんが立ち上がった。


 「渡さない」


 そしていつもより一段低い声で、そう言った。襲撃者は......砂藤さんの味方だって言ったのに。


 背後からこつこつ、と足音がして、砂藤さんが歩いてきた。僕は驚いて彼女の顔を見つめる。その表情は固く、真剣だ。普段の様子からは考えられないほどに彼女の感情は、はっきりと表に出ていた。


 「あなたが......バグを直したの?」


 すぐに返事は返ってこなかった。

 

 襲撃者が下を向いた。どこか悲しげな雰囲気を匂わせたあいつは、ため息をつき、顔を上げる。表情に変化はない。

 そして、しっかりと砂藤さんの目を見つめた。


 ゆっくりと、口を開き——


「当たり前だろう?」


 ......と言った。

 

 その声を聞いた砂藤さんは口を閉ざしたままだった。静かに言葉を噛み締めているように見えた。


「もし事実なら、どうして林道を襲うんだ」

「彼だけ、味方じゃないのはおかしいだろ。林道だって、仲間としてバグを探しているんだ」

「俺らの要、と言ったっていい」


「はっきり言って意味がわからないな。理由は明確だろう?」


「なっ......」


 市松さんはその回答にあまりに意外だったようだった。襲撃者の言う理由。僕たちはそれに全くと言っていいほど、心当たりがなかった。


 襲撃者にとって、二人は仲間である理由。——僕だけを襲う理由。僕らの違いはなんだ? 僕が、死にたがっていたから?


「じきにわかる」


 襲撃者はそう言うと、右手を前に出し、指を鳴らした。


 

 パチンッ——

 


 世界が一瞬歪んだ気がした。黒い波が、視界を右から左へと、高速で移動した。世界全体が、波打つ。

 それと共に、いつものあの脳に直接訴えかけるような違和感が走る。


 猛烈な吐き気が、僕を襲った。


「うっ......うぇっ」


 咄嗟に下を向き、手で口を押さえた。胃がひっくり返る感覚。思わず膝をつく。苦しい......けど。

 込み上げてくる胃酸を必死で堪えた。舌に少々甘酸っぱい味が広がる。


 口から垂れた(よだれ)を拭き、ふらふらと前を向いた。


「くそ......こんなのどうしろって言うんだ」


 市松さんの嘆きが聞こえた。僕は崩れかけた姿勢を無理やり持ち上げて、顔を上げる。襲撃者に特に変わりはない。違うだろ、そう自分に言い聞かせ、首を動かし周りを見た。


 ああ、これは——無理だ。


 周りには襲撃者が複数人。


 いつの間にか僕らを囲うように、静かに佇んでいた。

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