第三十一話「継ぎ接ぎ衣装」
小声で「よし」と呟き、再度意識をバグへと向ける。こんな広い場所でどこに、なにに発生するかわからないものに集中するという作業は辛いもので、何度も気が散りそうになる。バグを見つけられるのは僕しかいないんだ、と自分に言い聞かせ、怠けた頭を精一杯動かした。
5分ぐらい経ったときだろうか。僕が服屋で砂藤さんのハンガーラックとなっていた時、違和感は訪れた。ゴールはもう少しだ、と疲れかけた思考に鞭を打つ。どこだ......? この違和感はどこからきているんだ? できる限り首を動かさず、目線をあちらこちらに移動させる。
壁は......違う。人も......違う。床......も違う。きっと店内にあるはずだ。なのに、一向に見つかる気配はない。ふと、視界の端にある自分が持たされていた服に目が行く。ただの、砂藤さんがいつも着ているような、カラフルな——。
いや、おかしい。僕は急いで辺りを見渡す。やっぱりそうだ。この店に、こんな色の、原色に近いサイズの異なる布切れを継ぎ接ぎに縫い合わせたみたいな服は一つもない。砂藤さんがこの趣味の悪い服を全て取った可能性はまだあるけど......違うだろう。
「砂藤さんっ!」
僕が彼女に報告しようとしたとき——
バチッ——という音と共に僕の腕から服が跳ねた。腕と服、というよりかは服同士が反発しあったみたいに1Mほど吹っ飛び、宙を舞う。
その様子がスローモーションのようにゆっくりと見えた。
それぞれの服が別々の方向へと舞い......それは重力に流されるままに地へ降りる。
そして、その全てが、固いガラスのように砕け散った。
音もなく、粉々に。まるで、最初から存在しなかったかのように。
「「「え」」」
「持ってた服が、急に——」
僕が状況を説明している途中で砂藤さんの声が響く。
「林道くん! 後ろ!」
またあいつか?? 僕は焦りながら体制を崩しながら振り向く。
そこでは......あまりにも衝撃的な惨事が起きていた。




