第三十話「人、人、人」
静かな通りから一変。ガラス張りの大きな扉を抜けた瞬間、視界に入ってきたのは見渡す限りの人、人、人。人混みはあまり得意ではないのだけど三人でいると不思議と不安を感じない。一人が怖かったのだろうか。
でも、別に僕は一人だったわけじゃない。少なかったけれど一定数友達はいたし、たまに遊びにも行っていた。ただ、ある日、歯車がずれてしまっていけなくなってしまった。もし、そこに家まで迎えに来てくれるような幼馴染がいたのなら違ったかもしれないなんて、しょうもない妄想をする暇もなく......。
その時を基準にするのなら、今の僕は成長していると思う。友達......なのかはわからないが、少なくとも自分以外の他人と一緒に目的を持って外に出ている。砂藤さんがいなければ今頃どうなっていたのだろうか。あまり実感はない。でも心の中には少しずつ生きることへの価値が芽吹き始めていた。
そんなことを考えているうちにも砂藤さんの歩みは止まることを知らない。幸い、お気に入りの店舗はここにないらしく辺りをキョロキョロしながら店自体を物色していた。砂藤さんは明らかにバグ探しという名目で買い物を楽しむつもりだ。僕たちの疲れを最小限にするためには、僕が素早くバグを見つける必要があるだろう。
僕も砂藤さんと同じく、鳥のように首を回しながら違和感を探す。先ほど感じた違和感は飛散していて、探るに探れない。この広さの中で特定するのは至難の業だぞ、と怖気づきながら彼女の後を追った。
ただの間違い探しも、引きこもりの集中力には敵わない。デパートには同じような店が複数あるんだな、なんて意識が本筋から離れていたとき、僕の視線は、自然と市松さんへ引き寄せられていた。
砂藤さんみたいにデパートに対して用事はなく、外にも慣れていると思っていたので、一番暇だろう、と勝手に考えていた。けれど、実際そんなことはなく、彼は鷹のような真剣な目つきで辺りを見て......いや。監視していた。もちろん、それは僕のための行動だろうとすぐにわかった。この前の襲撃。市松さんはその場にいて、かつ実際にやつと拳を交わしている。そのため砂藤さんよりも一層警戒心が強いのだろう。市松さんの警戒を早めに終わらせてあげるためにも、僕は急いで探す必要があると再度決意した。




