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世界の修復作業は死にたい僕に託された  作者: きくずれ
第一章

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第十一話「荷物持ち」

 目の前には真剣な表情で吟味(ぎんみ)する砂藤さん。見える範囲に僕以外男性の姿はない。


 僕はここにいていいのか? と居心地の悪さをひしひしと感じる。


 少しずつ腕の重みが増していく。執事はこんな気持ちなのかな? と思う。


 ラックにはフリフリのついた薄い服や寒そうなスカートが複数着かけてある。


 僕らは服屋にいた。僕の両手には数着の服。なんかデジャブだな、と僕は思う。


 これも世界のバグとして報告した方がいいのだろうか。いや、デジャブは大きすぎて対処しきれないんだっけか。


 僕はずっと今日の砂藤さんの服装について疑問を抱いていた。質問した時の反応がどうも引っかかる。前みたく自分の意思ではなく製作者によって着させられたものだったら、指摘に対して「あれ、ほんとだ」などというだろう。


 それとも僕が「夢で出てきた服装」などと言ったからだろうか? 砂藤さんも同じ夢を見ていた、もしくはあの夢自体砂藤さんが関与していたのか。


 考えてもありきたりな考えしか浮かばず僕は頭をかいた。


 今日はどうやら前回とは違うらしく、商品を見て比べはするもののそのまま服をかけなおしている。


 一着を長く見つめたあと、ため息をついて服を戻し、僕に何も言わず店を出た。僕はその背中を慌てて追いかけた。


 

 今度は雑貨屋にきた。店内には全体的に淡いブラウンで統一されていてあたりには香料の甘い香りが充満している。疎い僕でも女子向けの店であることがすぐにわかった。


 こういう店はいったことがなく、横目で見ることすらなかったため僕にはすごく新鮮だった。


 前なら何も面白いことがなくただ虚無の感情で砂藤さんの言われるがままに後ろをついていっていたのだが、今回は僕は自主的に色々な棚を見て回っていた。


 初めて見る雑貨屋はスーパーとも、服屋とも、文房具屋とも違う品揃えで面白い。淡い水色のシンプルなハサミがあったと思えば、その棚の裏には透明で枠がクネクネしているスマホケース。少し離れた場所には木でできた滑らかなおもちゃ。


 あまりにも不揃いな商品だがただ一点おしゃれという点だけ共通していた。


 たしかに、ポップで可愛い雑貨はあまり文房具屋などでは見なかった。世間の女子がよく持っていた淡い色の文房具などはこういう店で買っていたのだろう。


 感心しながら見ていると、急に右手にカゴがかけられた。


 え? と隣を見ると砂藤さんが特になんとも思っていない表情で次々と手に持った商品を入れている。徐々に重みを増すカゴを僕はじっと見つめるしかできなかった。


 僕が驚いた表情で砂藤さんを見ると、砂藤さんはいつも通り無表情のまま僕の目を黙って見つめ、そしてまた選び出した。一瞬だけ目が細くなった気がして、逆らうものなら怒られる気がした。


 結局、僕の一時の自由時間は終わりを告げ砂藤さんの荷物持ちとなったのだった。

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