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六十四 吸血の先剣

四葉飯です。毎日更新は続けますが、更新時間が不規則になります。↓↓↓以下本編。


 リヴァイアの特殊部位破壊によるダウン時間は約三秒。この隙に各々が火力技やデンジャースキルを併用して畳み掛ける。だがそれでも竜、体力は高く削り切れるか微妙なラインだ。


「チョコ……っ!解放後の儀式(・・)を手短に!!」


「ええっと……っ!自傷!!血を吸わせた後は魔力を込めた時間に比例して威力があがる固有ウェポンスキルらしいわ!!」


「ダウンで三秒……っ!起き上がるまで二秒と少しだったか……っ!!俺達のペースじゃ美味しいとこには入れねぇか!!」


「初見技だし射程も何も分からないのよ!?ぶっつけ本番であの化け物に当たって砕けろって言うわけ!?」


「俺が命令する前に、どうやらユキナは意地でも俺達全員に報酬抽選をさせたいらしいぞ――」


「――お身体失礼します。チョコさん」


「ちょ!?ユキナさん!?待ってよ!!だってこの先剣の解放なんて未知の最前線でしょ!!?そんなよく分からないものに……っ!」


 ごちゃごちゃとやかましい。ゲームなんだからぶっつけ本番だろうと当たって砕けるのみ。わざわざ削りに行かずに戻ってきたユキナに礼を尽くすべきだろう。今は共に戦う仲間、ラストアタックのチャンスを非効率の館(ひこやか)に恵んでくれると言うならば、その道は俺が作ろう。


「リヴァイアは特殊ダウンの後は大きく体を伸ばす!!その一瞬に合わせて道を作る!!チョコは溜めとけよ!!多分ロマン砲だそれ!!」


「道を作ってくれるならば、どこまでも運びましょう」


「レイ!!?ちょっとは私の話しを……っ!」


 リヴァイアへと急接近したためチョコはフルシカトし、俺は杖へと持ち替えて潜水した。リヴァイアのシッポびたーんよりかは高度は出ないが、それでもこれならそれなりの高さにまで水柱が立つ。


「ブボビベンブばーぶぼぉぉぉぉぉぉ!!べんびぎびぼぐがばあぁ!!」


 水の中で詠唱させるな。今すぐこの仕様をどうにかしろ運営。だが唱えたことが大事であり、聞こえ方なんてどうでも良いのだ。プロミネンスバースト変式威力型、これによって水蒸気爆発を引き起こして一気に水を捲り上げる――


「ぶわぁぁだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「お見事、ひこやかのリーダー……!!」


「行けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


「っ…………!」


 爆発と共に空へと舞いながら、水柱を駆け上がっていくチョコの姿が映った。『水霊の先剣』の刀身を左手で握りしめ、自傷と共に水色の刀身が赤く染め上がっていく。仕様は俺にも分からないため後で聞くことにしよう。


「行きます……っ!!」


「ご武運を」


「固有ウェポンスキル……っ!『フォルテ』!!」


 赤黒い刀身と共にチョコの渾身の突きがリヴァイアの瞳へと突き刺さる。そして間髪入れずに独特な十字のダメージエフェクトと共に、呻き声を上げながらその巨体を大きく仰け反らせた。あれだけの人数で殴りまくった上にまだ落ちない、流石は竜と言うべきか。


(いや解放した先剣の性能が抑え気味な説も……)


「まだ……っよ!!!!『シャープネスアサルト』!!」


 片手剣のウェポンスキル『シャープネスアサルト』。合計十二回までの突きを短時間に打ち込むものだが、貫通特性故に弱点に合わせなければダメージの期待値が低い。アクションが速いせいでムーブアシストを解除して手動で打つのも難しいが、チョコに限ってはその限りではないらしい。


「全部目に当ててやがる……っ!!行け!!チョコ!!」


「いい加減……っ!!落ちろ!!」


 スキルリンクから『シャープネスストライク』。恐らく『水霊の先剣』の解放とは、剣に血を吸わせることがトリガーであり、そこから時限強化というものだろう。ラストアタックを達成したチョコが水飛沫を上げながら海面へと叩きつけられたのだった。


「ナイスチョコ!!良いラストアタックだった!!」


「ぷはぁっ!!わ、私!!りゅ、竜のラストアタックなんて初めてなんだけど!?やったぁ……っ!!」


「『水霊の先剣』とやらの解放に、アストラ界初出土の星七を二本……お膳立てするつもりがまさかこちらが魅せられるとは驚きましたよ」


 リヴァイアの死体が粒子となって散りゆく中、静かにリーシアに跨ったユキナがそう告げた。オレンとコロネも合流し、この戦いに参加した全員が笑顔を浮かべながらゲームシステムの抽選を待っていた。


「まさか星浄と結託して竜討伐することになるなんて夢にも思わなかった。色々とありがとな、ユキナ」


「こちらこそ。楽しいひとときをありがとうございました。しかし抽選ばかりはどうしようもありません。この大勢の中、誰が幸運の女神に振り向いてもらえるのか、一興ですね――」


 俺の持論だが、幸運と不幸はシーソーの理屈だと思う。ココ最近だと俺達は割と美味しい想いをしているわけで、正直なところ全然期待していなかった。そもそも竜からのレア泥自体稀だし、そこから百人近い中で抽選になるのだ。無理無理。


『抽選を終了します』


 レアリティの低いものから順に、リヴァイアの粒子が選ばれたプレイヤーの元へと集いアイテム化していく。そして次第に粒子は少なくなり、最後の一つが選ばれたプレイヤーへと集結した。その姿と結末に誰もが驚きの声を上げたのだった。


「「「リヴァイアの星七が出たぞ!!!!!」」」


「……へ?」


「あ?え?ええ?オレン!?」


 アホ面のままリヴァイア産の星七大剣を持つオレンに俺もあんぐりしていた。ありえないのだ。だってこいつは貧乏神で運に見捨てられているはずだ。いや、これまでの不運を精算するかのように、たった今こいつの運は対価を得たのかもしれない。


(まずい……っ!!呆気に取られて反応が遅れた――)


 アストラ界で警戒は怠ってはならない。これまでは一致団結していたプレイヤー達だったが、レイド戦が終わったあとにも戦争が続く。出土したばかりの品を狙い、PKによる強奪が始まるのだ。


「オレン……っ!!避け……っ!!」


「ひぃぃぃ……っ!?」


 オレンへと伸びた弓矢が聖剣に弾かれ、甲高い音が大海原へと響き渡った。うちの貧乏神を守るように、エターナルカイザーを掲げたユキナが野良プレイヤーを睨む。ここまでしてくれるとは太っ腹にもほどがある。


「〝星浄の騎士〟はこれより〝非効率の館〟を防衛します。死にたい方はどうぞ前に……私直々に相手して差しあげましょう」


「な、なんで星浄がそんな出来たてのクランなんかに……っ!」


「クランとは歴の長さが善し悪しを決めるものではありません。我々は一度この方達に敗れています。それはすなわち、少なくとも対等であり、良き友好関係を築く価値があるということです。財産が惜しいのなら去りなさい」


 流石の野蛮な野良プレイヤーも〝星浄の騎士〟を相手に分が悪いと踏んだのか、ぽつりぽつりとその姿を消していく。ようやく落ち着いて感想会が出来るというものだ。


「良かったなオレン。礼言っとけよ」


「ユキナさぁぁぁぁぁぁぁん!!ほんっっっっっとうにありがとぉぉぉ……っ!」


「いえいえ、これでも礼を返せていないくらいです。レアドロップ……おめでとうございます」


 『海王の鋭牙』、正真正銘の星天級(☆七)の大剣だ。オレンは初めて見たようであり、その刀身を掲げるように眺めていた。水色の刀身とノコギリのように逆立つ刃、まさか予定していたビルドの武器種が星七で手に入るとは思わなかった。


「アストラはオレンにサブタンクをやらせたいようだな」


「ね!?まじでびっくりだよ……本当にありがとうございました!」


「俺からもサンキューな、ユキナ。返せるものが何もないけどな〜!」


「……では一つだけお願いを聞いてくれませんか?」


「…………絶対親善試合の件だろ」


 クスクスと隠すように笑うユキナが、鞘に収めた長剣の柄を叩く。ていうか立ち泳ぎし続けるのしんどくなってきた。お前だけ優雅にリーシアに跨りやがって。


「驕るわけではありませんが、私はいつからか剣だけの試合では負け知らずでした。だからこそ勝ち逃げした姫様を挫くまで……私はどんな些細な事でも技術を磨きたいのです。あなたには私をまだ強くさせてくれる何かを感じています」


 終始爽やかな表情だったが、勝ち逃げってワードの時だけ血管が浮き出ているような幻覚が見えた気がする。感情を隠してはいるが多分相当ゼロに私怨があるだろコイツ。コイツと剣縛りの試合とか本音を言うなら勘弁して欲しい。


「……まぁここまでヨイショされちゃあ受けるしかないよな?ただ今は色々と忙しいと言うか、強くなってる最中だから待っててくれ」


「もちろん。暇を潰すならばこのゲームは幸いにも時間が足りないほどですから」


「だな」


「レイッちとゆきなっち戦うの!?まじ!?氷狼の魔女だけじゃなく剣聖様にも見初められるってまじで何者なのさ〜!!」


「あれ?そういやレンカは?おたくの狼だろ」


「誘ったのですがランクマに……」


「あ、察し」


 闘技場のランクマッチ。ゼロやその他PvP勢の家だ。だってボタン一つで実力の近いプレイヤーとマッチして戦えるんだぜ。時間なんか忘れて籠るに決まってる。おつまみ感覚で脳汁畑に飛び込めるんだから仕方ない。


「レイっちてさ、戦うの好きなのにあんまり闘技場は行かないよね?」


「まぁこのキャラは良いかな。前垢で死ぬほど回したからな〜 のんびりクランメンバーとハウジングやダンジョン攻略に勤しむのも悪くない」


「実力を隠してる風なのくぁっこぅいぃ〜」


「次それやったらしばくぞ」


 ユキナが。


「サブキャラなんですか?差し支えなければ本垢のプレイヤー名を――」


「レイクロォォォォォォォォル!!!!」


 まさか海上マウントを漁りに来たらこんなことになるとは思わなかったが、結果的にクランメンバーにとっても良い経験となった。寄り道しまくるのもゲームの醍醐味だし、次こそは海を渡るためのエネミーを捕まえに行くとする。

『防具』


装備することで主に敵からの攻撃を緩和させる効果を持つ。また、装備によっては特殊な効果を秘めているものも存在し、それぞれ頭、胴、腕、腰、足の五箇所に装着が可能だ。

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