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一〇コンカフェ嬢マッチング

 ここ数日はコロネに付きっきりで色々と教えていた。なんだが本当に無邪気で可愛く見えて仕方がない。もう中身おじさんでも良いやとか思ってる。だが残念ながら今日はソロプレイだ。


(……カオリ…………いないよな?)


 張り込むと豪語していた暴君はおらず、俺は従来のフィールドにて星屑の神殿に手をかけた。どうしても気になるのだ。ユニーククエストの発生、そこに通常のダンジョンはどう影響が生じているのかと。


「んんんんんんん?普通にクエストあって草」


 というより、既に星屑の神殿という名前のダンジョンが解禁されていた。いつの間に?という疑念は残るが、恐らくは特殊ダンジョンで触れた際に同時に通常ダンジョンの方も解禁されたのだろう。


(失われた祭殿……こっちの特殊ダンジョンはチョコの鍵がなければ突入不可、だが通常の星屑の神殿はできる……と、じゃあ、普通の方をクリアしたらどうなるか……検証しますか)


 ひとまずスコアを塗り替えるのは後だ。ユニーククエスト『星霊の墓守』が消えてしまうのか否か。恐らくはあの特殊フィールドに入るための条件は俺の持つ『祭殿への羅針盤』。読みが正しければ、通常ダンジョンをクリアした所で消えないだろう。







『星屑の神殿 開始します』


 転送からダンジョンへと突入した。ここで現れるエネミーは全部で十種類。そしてダンジョン内のエネミーは全てがアクティブであり、見つかれば問答無用で襲いかかってくる。せっかくのソロなんだし、手始めにスコア狙いの動きで試してみるか。


 星屑の神殿スコアは一位が九六五五。知らない人が見ると意味がわからないだろう。分かる俺から見ると、この数字は当時の環境で言えばキ○ガイである。ランキングに残るゼロのスコアは七七八六、約二〇〇〇近く離されているのだ。


「死神の悪戯!!そして……!!道中の雑魚は全部無視ぃぃぃぃぃぃぃ!!ひぃぃぃっっゃはぁぁぁぁぁあ!!」


 全スルーからのノーダメボス撃破。多分これが一番スコア高いと思います。だがもしかすると、武器のレアリティ上限が解放しているなら雑魚を全滅させつつ、理論値のクリアタイムと同等が出せるのかもしれない。


「はぃぃぃぃ到着ぅぅぅ!!悪魔像さんちぃぃぃぃす!!」


 ダンジョンボスは人型の石像である。レベルシンクの影響で強いウェポンスキル、法撃スキルも没収されてしまうため、最速のために揃える武器種がある。ここで使うのは法撃だ。だがその前に――


「ブラストクラッシュぅぅ!!」


 エリアインからの最速最短で走り込めば、反撃もなく大斧によるウェポンスキル『ブラストクラッシュ』が急所(顔面)に入る。シンプルな縦から下の振り下ろし。んでもって背中から倒れるので空中から追撃。斧特有の性質、空中からの急速落下を使う。


「グラビティパージ!!」


 この技は発動後に猛速度で複数回に渡って前宙し、落下と共に斧を叩きつける。落下位置が高ければ高いほど威力が上がるぞ☆なぜこんなに余裕なのかと、それはもうパターン化しているからである。このエリアに俺が最速で入った地点で既にこいつの敗北は決まっているのだ。


「へいへい……!スタンしちゃったねぇ……!!ふへぁ!」


 転倒&スタン、そして顔面の部位破壊が完了した。他の人は知らないがここまでが俺のテンプレであり、持ち替えるは両手で持つ大杖。武器種が同じでも両手持ちか否かは、攻撃の倍率が異なってくるのだ。簡単に言うと両手持ち武器は火力が高い。


「新たな確定急所……!そこにヒャッハー!!」


 ゼロ距離ブレイズバースト連打一択である。石像系のエネミーは打撃以外の物理にめっぽう強い。特に貫通なんかは死んでる。だが法撃はその限りでは無い。それでもボスクラスになると法撃の攻撃倍率も微妙なので、先手必勝部位破壊による強制急所の露出が必要なわけですね。


「ブレイズバーストぉぉぉぉぉ!!」


 しかし低レアリティ武器なため、火力不足だった。エーテルが空っぽだ。スタンによるダウン時間も終わってしまうが、最後に大斧で数発しばいてガチバトルといこうか。


「……斬撃耐性いくつだっけなぁ。六割カットだっけ?斧でいくか……片手剣でいくか……悩みどころだな」


 死神の悪戯の効果時間は残り五〇秒。このダンジョンの最速理論値は二分六秒のはずだ。つまりはもう虫の息である。武器種で悩んだのは気分の問題だ。せっかくなので道中のエネミーが追い付くまでは片手剣で遊ぶ事にした。


「へいへいへいへいへい!!範囲は広いけど当たらないよ!割れた顔面にどーん!!」


 おなじみのストライクバッシュ。片手剣のくせに打撃特性があるため使った。そして丁度怯んだのでスラストを続けて打ち込み、巨体なので一度腕に着地を失礼させてもらう。ついでに突いとく(・・・・)か。


(そういやこいつに貫通特性は試したことなかったよな?八割カットだし、でもせっかくの片手剣持ち込みだからやって――)


 部位破壊した顔面へと突き刺した刹那、真紅色の稲妻が迸った。先に感想から言わせてくれ。多分俺は今、人に見せられないほど気持ち悪い笑みを浮かべていると思う。


 何故ならば真紅色の稲妻エフェクトとは、特殊部位破壊の前触れなのだ。エネミーの中には二段階の部位破壊が可能な奴がいる。部位破壊報酬とかないのであまり気にしないが、スコアに関わるダンジョンなら話は別だ。


「割れたァ!!中身空洞で草ァ!うわっ!めっちゃヒットストップ入る!!肉質柔らかくなってるぅぅぅ!!」


 無事討伐した。だがもう一度行こう。いや、ユニーククエストが消えていないかはちゃんと確認するが、エーテルが切れていて法撃が試せていない。あのクソ柔らかくなった部位に、もともと通りやすい法撃をぶち込んだらどうなるのだろう。


「ユニークは消失なし!!一度ステラヴォイドに戻って大槍だぁぁぁぁぁ!!」


 転送、転送、秒速でウェポンチェンジを行い、再び星屑の神殿へと突入した。勿論開幕デンジャースキル。スタミナ効率を爆上げして全力疾走、そして顔面への打撃スキル二連打。多分これが一番早いと思います。


「ここからは未知の時間だァ!!行くぞぉぉぉ!」


 先程と同じく、スタン&転倒から大槍のウェポンスキルをぶち込む。この技は突進からの突き刺しなのだが、当然ながら位置関係の都合で寝ている相手の急所には当てにくい。ならばどうするか、それはこのゲームの仕様であるムーブアシストを解除するのだ。


 全てのウェポンスキルには決まった型がある。スラストならば右から左へ一閃、グラビティパージならば飛び跳ねてくるっとドカン、本来ならばそれらの決まったムーブを勝手に動かしてくれる。動きに対して要求されるエネルギー、それらを生み出せるならばその形は無限大と化す。


(スタン直前に顔面を踏みつけて飛ぶ……っ!)


 跳躍からの大槍を逆手に持ち、更には前宙による遠心力を上乗せしながら最後に足で柄を固定した。落下と遠心力と全体重、それらがウェポンスキル『スピアアンカー』に必要な突進の推進力へと形を変える――


「スピアアンカぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 深紅の稲妻と共に二段階部位破壊の達成。しかもまだスタンのダウンが継続。激アツである。俺としたことがこんな初歩的な検証を怠っていたなんて信じられない。石像系に貫通はゴミ、そんな偏見は今後捨てていこうと思います。


「ブレイズバースト連打ぁぁぁぁ!!」


 もう凄かった。法撃はヒットストップがないため肉質を感じにくいのだが、自己ベスト更新した。三秒もだ。二分三秒、いや待て二分三秒?聞いたことないタイムなんですがそれは。


「うぉぉぉぉ……?スコアが九五〇三!?六位なんだけど!!!??」


 俺が使っている武器は軒並み☆一のものであり、そのどれもが補正のかかる数値以下。つまり、伸び代の塊である。みんながどういうムーブをしているか分からないが、この動きで斧や槍の☆七固有ウェポンスキルなんかを混ぜるとどうなるのだろう。


(悲報、ゼロちゃんサブに抜かれる)


 とは言え動き自体が分かればゼロでも再現可能だ。むしろ装備が潤沢なメインキャラの方が検証の幅も広がる。今すぐにでも本垢を起動して試したいのだが、それはそれでめんどうなのでしばらくはお預けだ。


 誰に聞かせるわけでもないが考えてもみてほしい。自分で言うのもなんだが、かつてアストラを騒がせていた有名人が三年も失踪していたのに、突如としてログインしたらどうなる?それはメッセージの嵐だ。


 やれ復帰したんですか!?だの、やれゼロ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!だの、やれ怪文書だの、視界が埋め尽くされんばかりのメッセが届くに違いない。というより俺はそんな常に監視されてるみたいな環境が嫌だったから、あんなにすっぱりと社畜にもなり下がれたんだ。


(…………いや、自分に嘘はつけないか。まぁいいや!今はレイだし、ゲームの楽しみ方なんて人それぞれだしな)


 せっかくゲームを楽しんでいるのだ。過去の陰気な思い出はさておき、一度リアルに戻って休憩しよう。腹が減ってはなんとやらというやつだ。カオリから聞いた話だが、最近近所に新しいカフェが出来たらしい。


「ログアウト」


 アストラからリアルへ、んで持ってその足で件のカフェへと向かう。最寄り駅から乗り換えて数駅、そこから数分ほど歩いた場所にあるらしい。だが辿り着いた俺は、想像していたカフェとはまるで違う事に目を見開くことになってしまった。


「コンカフェですやん……」


 コンセプトカフェ。ムカつくがカオリのやつは俺の好みをよく分かっている。乗せられたようで癪だが、ここまで来て入らないのも無礼だろう。いや別に興味津々なわけじゃあない。決して。


「おかえりなさいませ!」


「ど、どーも……」


「人間さん絶滅しちゃったかと思いましたぁ……どうぞ中でお掛けください!!」


 担当してくれたコンカフェ嬢のビジュが良すぎた。短くまとめるなら異世界の赤ずきんっぽい。めちゃくちゃどもってしまった。今日のコンセプトはファンタジーだろうか。青に近い緑色のハイウエストのスカートに、胸周りは白色のシャツかな。肩には茶色の短いローブが添えられていて、よく見えないが肩はノースリーブ。


 絶対領域を強調するような少しキツめのニーソに、膝まであるロングブーツ。そして栗色のセミロングに頭頂部にはカチューシャのケモ耳。多分狼だ。カチューシャのプラスチック部を隠すためか、茶色と白のストライプリボンで装飾する細部にまで拘ったプロの一品。何が言いたいのかと言うと――


「可愛すぎだろ!!絶対チェキ撮ります!!てか通いますわ!!名前なんて言うんですか!?」


「ありがとうございます!コロちゃんって呼んでくれたら嬉しいです!!」


「コロちゃんね、覚えた!何頼もうかな〜 オススメとかありますか?」


 そうして俺は普段よりほんのちょっぴり浮かれた気持ちで食事を済ませる事になる。平日の昼間ということもあってか、ほとんど客はいないためコロちゃんとは付きっきりで話せた。


 なんでも最近アストラを始めたらしく、毎日の楽しみらしい。分かっている。ここでオタク知識をひけらかすほど俺は堕ちていない。へー!!俺もやってるっす!!楽しいですよね!!あーだこーだでこうでこうで!!くらいしか言うつもりはない。


 のはずが気がつけばマシンガントークしてた。勘違いじゃなければ別に引かれてはなかったと思うが、今後はアストラに対する過剰反応は自重しようと思える一日でした。





『エーテル』


法撃等の発動に消費される魔力。体力、スタミナに並ぶ三大要素であり、法撃以外にも消費するため管理と運営が戦況を左右する。


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