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prologue
鮮やかな朝焼けに、胸を打たれた。
「寝ずに頑張っちゃったね」
柔らかな笑みを浮かべる君の顔も、夜とは違い、真っ赤に染まる。
三月の底冷えする寒さの中、白い息を吐きながら、僕も彼女の隣に立った。
ベランダから見る東雲の空は、夕焼けとはどこか違う。
世界が紫色に染まるような、他に誰もいないような、不思議な感覚。
「なんか、感動するね」
「……うん」
「別に、初日の出でもないのにね」
そこまで言うと、君は僕に体を預けて、柔らかくも冷えた肌を寄せた。
布団の温もりが消えた肌に指で触れると、抵抗しないままに、でも、君は顔を見せないように背ける。昼間、学校の教室ではおさげにしているから、誰も知らないんだ。こんなにも綺麗で真っすぐな髪をしていることを、知っているのは僕だけ。
それが、とても嬉しいと思える。
君はこの瞬間、間違いなく、僕の彼女だった。