第94話 跳躍
わっ
いつも通り、遊びに飢えたままえんえんと戦いを仕掛けてき続ける国沈の対応をしていた時の事だった。
突如として国沈と裕一しか居なかった空間。その床に眩い光の亀裂が入る。
「あぁ、解析術式か。」
裕一は呟く。眩く光り、若干の青白い色が含まれるこの術式の発生源は廉達が生きる世界からであろう事。何者かが裕一、もしくは国沈の血縁者を介してこの空間に居る存在へ影響を与えようとしているのだろう所まで即座に裕一と国沈は理解した。
廉達の生きる世界に国沈の血縁者が居るとは思えない故、恐らく通り道となったのは現在生きている中では裕一の唯一の血縁者、廉であろう。
「解析術式をチョイスした理由はあれか、血縁経由の術式の通りが良いからか。ん?詠唱方式が随分と古めかしいな。」
裕一はこの空間へと届いた術式に違和感を感じる。その違和感というのは、古代から現代へ長い時をかけて洗練されてきた術式とは異なり、まるで大昔の人間が唱えたかのような術式に感じるという物であった。
「しかしまぁ、誰がやってくれたか知らんが丁度良い。この解析術式を経路にこの空間から脱出してやるか。」
裕一はそう言うと非常に大きい出力を放つ特殊な術式を唱え、解析術式を触媒に元居た世界への通り道を力尽くでこじ開けようと試みる。
「何だ、我の遊びを邪魔しようとしておる奴が居るな。裕一、行くのか?」
国沈は腕を組みながら言う。
「悪いが行くぞ。ここまで来りゃお前がいくら邪魔しようと多分脱出出来るな。追ってきても良いが今度こそ殺すぞ。」
裕一は術式を唱えながら腕を組み、突っ立ってる国沈へと無慈悲に言う。
「馬鹿を言え。我が邪魔なんかするか。それよりも我を連れて行け。外の世界へもっと面白い事を探しに行きたいのだ。」
裕一は最近になって気付いた。国沈がこの空間から出ない理由。いや、出ないのではなく、出れないのだという事に。国沈は強大な力を持つがそれ故、まるで巨大な星がそのまま万物を引き寄せるブラックホールに変貌するかのように自力ではこの空間から離れる事が叶わない身となっていた。
「あぁ、そうか。可哀想な奴だな。じゃあ付いてこいよ。悪さするなよ。悪さしたら直ぐに殺すからな。」
裕一は一瞬の思案の後、国沈へそう言う。
野に解き放てばそれこそ国が一つ沈むかのような大厄災をぽん、と言葉一つで連れて行こうとする。裕一のリスクを承知した上での身勝手さ、勝手気ままさは健在なままであった。
「道開いたぞ。行くか。」
「ふははははは!!!久しぶりの外界じゃ!!楽しむぞ!!!」
国沈は両手を広げ高笑いをする。直後、国沈は待ちきれんとばかりに裕一の手を掴み、そのまま光り輝く裕一の作り出した外の世界へと広がる穴へと飛び込んで行った。
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