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第90話 束縛

ワチャワチャワチャ


 国沈の生み出した老いの存在しない永遠に続くかに思える空間。ここに閉じこめられてからどれ程の時が経ったのか分からない。時計のような役割を果たす術式を組んでみても直ぐに術式は狂い出す。頭で数えようなどという事は面倒でやってられない。



 とりあえずはいつの日かこの空間を脱出した時に竜宮城から帰った浦島太郎のような目に遭わないことを祈るのみである。




 「お前自身をこの空間の中で殺す事は出来ない。」




 「そうだ。」




 「そして俺自身が自ら命を絶つ事も叶わない。」




 「そうだ。」




 国沈と俺は互いに術式で作り出した剣を用いて戦いながら話す。




 この空間で国沈は何度も何度も、楽しくて堪らないといった風にこの空間で俺に戦いを挑み続ける。それでも最近は落ち着いてきたのか、戦いを仕掛けてくる頻度は若干減ってきている。




 こいつ自身も永い時の間、恐らくずっと一人この無限に続くかのような広さの薄暗い空間で過ごし続けてきたのだろう。となれば多少過剰に遊びたがるのも無理はないのかもしれないと最近は思うようになってきた。国沈は恐らく根が割と邪悪な大きい子供なのだろう。




 この空間から脱出するには外部の存在から俺自身や国沈、この空間への何かしらの干渉が必要となる。



 何かしらの干渉さえ発生してくれればその術式の通り道を応用し脱出する為の術式を捻じこめる筈、というのが最近考えてる脱出方法だ。




 この脱出方法の悪い所は完全に外部の存在に初動を丸投げしてしまう事にある。外部の存在が次我々に干渉してくれるのはいつになるのか。



 十日後か一年後、下手したらそれこそ過去の国沈戦から現代へと経った時のように千年近く待つことになる可能性もある。



 しかもそこで必ず脱出が成功するとは限らない……。出来るだけ失敗しないように努力しようとは思うが、理論が完璧である事を確認した訳でも無いぶっつけ本番脱出劇である。失敗の可能性も十分にある。




 まぁ、時間はたっぷりあるのだから、もっと良い手を考える時間もあるだろう。




 「裕一!!集中しろーーっ!!」




 国沈はそう言うと手に持った刀を振り回した。





 * * *




 「君は裕一の孫だろう?僕は裕一に会いたいんだ。国沈にもね。」




 一見人間かのように見えるフードをかぶった長身の男は廉へと優しそうな口調で語り掛ける。しかし、その優しそうな口調とは対照的に辺り一帯には殺気すら伴う緊張感が漂っていた。




 「じいちゃんに会って、何をするつもりですか?」




 廉は言う。横に居た京子は尋常でない空気感に気圧され、本能的に後ずさりをしてしまう。




 「ただ、昔話がしたいだけだよ。」





 廉と男の間で何かを考えていたたえが口を開く。




 「廉、応じようか。」




 



 

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