第87話 看破
サブタイトルがそろそろどっかの話と被るんじゃないかと思っています。過去のサブタイトル覚えてないから……。
ヒキヤは悠々と遮蔽物に隠れる廉の元へと歩いていく。ヒキヤの発動した隠匿術式により、完全にこの場でヒキヤを観測している者は居ないように見えた。
「おい、お前。」
誰かがヒキヤを呼び止め、言う。ヒキヤはまさか自分が呼び止められているとは思わず、声の主に気付かない。
「待てよ。お前だ、お前。そこのチャラ男。」
ここでようやくヒキヤは己が呼び止められている事に気付き、視線を超えのする方へと向ける。そこには現在人の姿へと身を変身させていた狐翁が居た。
ヒキヤは声を出せない。姿かたちは隠匿術式でかき消しているが、音を出してしまえばこの場にいる怪異家達にたちどころに居場所がバレてしまい、総攻撃を受ける事が目に見えていたからだ。
「何で見えているのかって顔をしているな。その手に持つナイフは何だ?それは術式で作った物では無いだろう。武器の持ち込みは禁止されているぞ。廉を殺そうとしたのか?そのナイフにはずいぶんと強い毒が塗ってあるな。人が切られれば死ぬレベルだぞ。試合中の故意の殺人も禁止されている筈だが。」
狐は落ち着いた様子で言う。狐は神。神を騙す事は難しい。人間の発動する隠匿系の術式においては非常に強い耐性を持つ存在であった。
ヒキヤは汗を垂らした。隠匿が看破された上、目的や、手に持った武器の性質までも言い当てられたからである。ヒキヤ、彼自身の強みはあくまで隠匿一辺倒であった。単純な基本スペックは並の怪異家とそう変わりない物である。もしも彼がこの場で隠匿術式無しに、必死に廉の首へと手を伸ばしたとしてもその手はたえ達宇喜田の人間にはばまれ、ほぼ確実に届かないだろう。
(クソがよ……。)
ヒキヤは内心で毒付いた。
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