第83話 焦土
ウワ
森の中、たえの放った火炎術式によって燃える木はパキパキと音を立てながら倒壊する。
「もう腹を括るしかねぇよ。こんだけ森が燃えちまえば戦わざるを得ない。」
しぐろはそう言うと術式を発動し、なにやら短刀のような物を作り出す。
「悪いけど四方八方に敵が居るような状況じゃお前らの事を守る余裕は俺には無い。自分の身は自分で守ってくれよ。」
しぐろはそう春雨寮組の三人に声をかけると転移術式を発動し、近くに見えていた怪異家へと奇襲を仕掛けに行った。
「ええと、じゃあ、そうだな。そういう事で、生き残ろうか。」
たえも松も、しぐろもおのおのが付近の怪異家へと戦闘を仕掛けに行ってしまい取り残された春雨寮組の中で廉は言う。
「ぬるっと始めるなぁ。」
狐はそう言い、へらっと笑う。
「あれ?そう言えばリーザさんは?」
京子はふと、先程まで居たはずの怪異枠での参加者、リーザの姿が見えない事に気付く。元々殆ど口を開かなかった為、存在感が薄かったが流石に居なくなれば気付く。
「あぁ、リーザさんならあそこに。」
廉はそう言うと上空を指差す。
京子と狐が廉の指差す方へと視線をやると、上空50メートル程の位置で浮遊しながら地上に向けて広範囲に爆発術式を撒き散らすリーザの姿が目に入った。
そこそこ高火力の爆発術式を広範囲に振りまきながらもリーザ自身は上空50メートル。並の怪異家であれば術式が届かないか、届いたとしても悠々と回避される。リーザを叩き落とそうと空へ飛んできた怪異家はリーザの手によって逆に叩き落とされている。
「うわぁ……。ひでぇ……。」
リーザの容赦ないはめ殺し戦法に狐は思わず引いたような声を出す。
正直言って、リーザ自身、この場にいる怪異家達よりも何倍もの永い時間を生きてきた上に、その永い時の間鍛錬を怠っていないともなれば、この場にリーザ相手に戦えるような怪異家は殆ど居なかった。
「まぁ、僕達も頑張ろうか……。」
圧倒的な実力で場を制圧するリーザを見て、廉達はそう言い合った。
* * *
「なぁ!!暇なんだけど!!!」
「うっそだろ。お前二分前までバチバチに戦ってやってたじゃん!!」
国沈の生み出した特殊空間。えんえんと裕一は囚われ続けながら駄々をこねる国沈の相手をさせられていた。
「なぁなぁなぁ!!!お前を殺す方法ってねぇの?」
裕一は駄々をこねる国沈にうんざりとしながら問う。
「我を殺したいか!!この空間では肉体の時が止まっているからな!!互いに死ぬ事は叶わんぞ!!」
裕一の少々の殺意を感じ取り、ニコニコとしながら国沈は答える。
裕一自身は確かに国沈の面倒を見る事にうんざりとしているが、同時に国沈の相手をする事に楽しみを見いだす事には成功していた。それは人間とは違う価値観を持つ神という存在に触れる事による新鮮さであったり、新たな知識を裕一へともたらす知的好奇心を満たしてくれる存在としてであった。
裕一は現在、国沈との戦闘の交流を繰り返す最中で以前は己の力のみでは使えなかった神性属性の術式を扱う事が可能となっていた。その上、神性属性の知識の応用で以前は使えなかった悪魔術等、特定の種族しか用いる事が叶わなかった術式の模倣すら身に付けていた。
「じゃあお前を殺す為にはこの空間からお前もろとも脱出する事が前提条件で必要なのかよ。面倒だな。」
「我は邪魔せんぞ?そのような技法の確立に成功した時には挑戦してみるが良い。」
己の命を狙われているというのに、国沈はそこまでの反応を示さない。その理由は国沈自身の生への執着心の低さにあった。邪神として永い時の間、一人この空間に閉じこめられ続ける事には国沈自身も飽き飽きとしていたのである。
「がぁーー。ちょっと横になりたい。」
裕一はそう言うと地面に横になり寝始めた。
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