第81話 乱戦
ぬぬぬ
「ちょっと!たえさん!?」
突如として桔梗家と名乗った一団へと駆け出し、戦闘を仕掛けるたえに面食らい、堪らず廉はたえに話し掛ける。
「馬鹿!狙われてるぞ!!」
たえに気を取られた廉のすぐそば、距離にして十メートルも無いような位置で桔梗家のメンバーの一人は廉に向け術式を詠唱していた。
「っ!!」
廉は横へ飛び、間一髪で桔梗家の術式を回避する。
「ちょっと待ってください!!一緒に協力すれば良いじゃないですか!!」
次弾を装填と言わんばかりに二発目の術式を詠唱しはじめる桔梗家に対して廉は叫ぶ。
「無理に決まってんだろ!!廉!集中しろ!!」
廉の背後で叫んだのはしぐろ。既にしぐろの側には気絶した桔梗家の人間が倒れている。
「え?え??」
廉が呆然としている間に桔梗家の人間の全員が宇喜田家によって倒される。呆然としたまま混乱していたのは廉と京子だけであった。
直後、たえ達が倒した桔梗家の人間の肉体は光る霧のような物に包まれ、消失する。
「えぇ!?消えた!!?」
足元で消失した桔梗家を見て京子は驚く。
「試合開始前の場所に転送されただけだよ。」
たえは言う。今回、戦闘続行が困難と見なされた参加者はこの舞台から追い出される事になる。その後負傷などしていた場合は試合開始前の集合場所に待機する医療系の怪異家達の手によって治療が行われる事となる。
「廉と京子はまだ鈍いか。やっぱ初戦じゃそうなっちゃうよね。」
たえはそう言うと己の衣服をぱたぱたと叩き、戦闘によってついた砂ぼこりを払う。
「じゃあ今度こそ早めに砂漠から抜けようか。移動するよ。あっちの方に多分森がある。そっちに行こう。」
たえはそう言うとスタスタと歩き出す。
「あっ!はい!!」
廉達もたえに続き、歩き出す。
「廉、たえさんがあの場で協力ではなく戦闘を選んだのは何故か分かるか?」
廉の背後、突如影が出来たかと思いきや宇喜田家随一の長身男、松が身をにゅっと乗り出し、廉へと問いかけた。
「確か、桔梗家の人に足手まといって……。」
廉は戦闘の直前の状況を思い出しつつ言う。
「そうだ。今回戦闘になったのは宇喜田家と桔梗家の戦力差が大きかったからだ。桔梗家も戦えば確実に負けるだろう事を理解していたから一か八かで協力を持ちかけてきたのだろうな。」
松はそう言いながら術式を詠唱している。付近の状況を探査術式で確認しているようだ。
「えっ、戦力差とかぱっと分かるんですか?」
廉はふとした疑問を松へと投げかける。
「分かるさ。誰が何処の家の人間か。どんな術式を得意としているか。その家はどれくらいの実力があるのか。俺でもなんとなくは把握してるくらいだ。たえさんは多分今回の参加者くらいだったら全員細かく情報を把握しているだろう。」
「えぇ!?確か今回、人だけで五百人近く居ましたよね……!?」
廉は驚きの声を上げる。
「怪異家なんか狭い世界だからな。長く居ればそれだけ知る事も多くなる。それ自体はそんなに大した事じゃないさ。」
「ええと、それでなんでたえさんは桔梗家の人達を倒す事を選んだんですか?そんなに差があるなら完全に無視を決め込んで砂漠を抜ける事を優先する選択肢もあったんじゃないんですか?」
廉がそう言うと、松は話を続ける。
「終盤になればなる程、怪異家達は戦いの相手を求めて一ヶ所に集まっていく傾向がある。そうしないと決着がつかないからな。後半は複数の怪異家が戦う乱戦になりやすい。たえさんはそういった厄介な状況を極力作り出さないよう、家自体の数を減らす選択をしていったんだろう。割と強豪怪異家としてのセオリー通りの動きかな。視界に入った怪異家達を全員倒して回るってのは。」
松は歩きながら予想を語る。
「そんな台風みたいな戦い方するんですね……。」
廉は強豪怪異家の戦闘セオリーを聞き、若干引き気味である。
「まぁでも今回は君達新人が居るし、流石にそんな戦い方はしないと思うけどね。」
ははは、と松は歩きながら笑った。この松の憶測は大きく外れる事となる。
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