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第72話 親善

ツカレチャッテェ……モウカケナクッテェ……



 「かぁっ!全く面倒くさいね。この忙しい時に。」




 宇喜田家、たえの自室。何者かから届けられた便箋をたえは放り投げ、大型のソファにどかりと座り込み、横に置いてあった羊羹をつまみ食う。




 「誰を出すかいねぇ……。いや、あの子達を出すべきか。強敵との対戦。それを経験として糧にしてもらいたい。」




 暫しの思案の後、たえは羊羹をもぐもぐと食べながら呟いた。




 * * *




 「はい?実力向上交流試合?何ですかそれ。」




 八月も半ばに差し掛かり、照る太陽による暑さもセミの鳴き声も最高潮となっている時期。



 宇喜田家の運動場でぽかーんとした顔で廉は赤谷に問う。




 「関西圏の色々な家が集まって一緒に試合して、実力の底上げを図りましょうね?って〝建前〟の大会じゃ。」




 「建前?」




 話を聞いていた狐が訝しげに問う。




 「そうじゃ。表向きは皆仲良く親善試合をしましょうね。って感じだが、そんな事は全然無い。関西圏の最強を決める為の試合じゃ。当然関西圏最強の箔が付けばかなりの旨みがある故、何処の家も必死になって戦う。」




 赤谷は麦わら帽子をかぶり、その手には瓶入りのラムネと虫取り網を持ちながら真面目な話をしている為、かなり奇っ怪な絵面となっている。




 「皆強いんですよね?」





 「強い。何処の家も出しうる最大限の力を出しに来るからのう。裕一さんがおった頃は、誰も彼もが裕一さんに勝てる気がしないと言って長らく大会自体が開催されて居らんかった。今更になって開催されるとはなぁ。どっかしらの家が圧力をかけよったのだろう。」





 「何で僕達を出すんですか?」





 交流試合は一家につき五名の参加が許される。




 今回たえは廉と京子を参加者として指名してきている。海代之孤翁は人ではなく、神なので参加者枠には入れない。



 しかし大会の規則として、使役している怪異であれば一家につき二体まで持ち込む事が可能となっている為、孤翁を使役怪異枠としてたえは登録している。これを聞いた狐は「不遜だ!!許せん!!不遜だ!!」と言いながら抗議の意を示していた。




 「これは儂の憶測じゃが、たえさんはお前さん達に経験を積ませようとしているのだと思う。お前さん達は儂から見ても恐ろしい早さで成長しているが、なんせ圧倒的に実戦経験が不足しちょる。たえさんは今回の場を使ってお前さん達に強敵との戦闘経験を積ませるつもりなんじゃ。」




 赤谷は腕を組み、組んだ手のまま額に流れる汗を拭いながら言う。




 「でも、それじゃあ一位が。」




 京子が心配そうな声色で赤谷に言う。




 「最強の座などくれてやれ、という話じゃろうな。裕一さんを上手く連れ戻す事に成功すればどうせ元の戦力情勢へと戻るじゃろうし。」





 「そういう事だよ。」





 突如としてたえは赤谷の背後に転移してきながら言う。背後を取られた驚きに赤谷は「うぉっ!」と声を漏らした。





 「大丈夫。あんたらの他に私も着いてくる。序盤で敗退して暇させるような目には遭わさせんさ。」




 そう言ってたては胸を反らす。




 「あぁ、そういえば他の登録者は……?」




 廉がそう言うと、たえは胸元から一枚のわら半紙を取り出し、廉達へと差し出す。そこには登録者の名前が書かれていた。




 参加者


 宇喜田 たえ


 宇喜田 廉


 橋口 京子


 日村 松


 香村 しぐろ



 登録怪異


 化け狐


 西洋吸血鬼




 「はぁーーーっ!?僕化け狐って書かれてんの!?誰!?書いた奴!!許せねぇんだけど!!」



 

 使役怪異枠の問題で一度暴れてた孤翁は再び頭から火を噴きキレ散らかす。



 「まぁまぁ。」



 京子が狐をなだめる。




 「日村さんと香村さんは知らない人ですね。どんな人ですか?」





 「直ぐにでも合わせてやるさ。」

 



 たえはそう言い、にこりとした。




 



 








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