第71話 昔話
トコトコ
「我を呼び出した人間の話ぃ?そんな事を聞いてどうする。」
「いや、単純な興味だ。」
国沈と裕一は転移術式を連続で高速詠唱しているため、まるで宙を舞っているかのような戦闘風景の中会話する。
「そうだなぁ。そんなに細かくは覚えていないぞ?確か陰陽師とか名乗っていて都だかに仕えていると言っていたな。」
「陰陽師か。」
陰陽師。かつての現代でいう怪異家のような立ち位置の職業である。
現代では体系的な術式を用いたり、そもそも陰陽道から外れた概念を用いたりする事から、陰陽師の名称は使われなくなったと聞いているが、やっている事はほぼほぼ一緒である。
とはいえかつての陰陽師が使役したという式神等、一部の技術は伝聞されて居らず、そもそも本当にそんな技術があったのかは定かではないが、ロストテクノロジーと化している。
「知っているのか?」
国沈は懐で術式を詠唱しながら問う。
「なんというか、職種としては知っているというか。どんな奴だった?」
陰陽師という名称とふんわりとしたイメージは持っているが、実際の所の姿を知らないので言葉を濁す。
「変な奴だったな。」
「変な奴。」
戦闘大好き駄々っ子邪神である国沈に変な奴と言わしめるとは。どんな奴なのかかなり気になってきたぞ。
「あの時、我を呼び出す願いに応え、我はわざわざ時空に裂け目を作り、願いを聞く為にあの男の前に顕現したのだ。」
「あの裂け目ってお前のセルフメイキングだったんだ。」
ちゃんと召喚の願いには応え、話を聞きに行ってやってる辺り健気であると思う。
国沈が俺の頭目掛けて爆発術式を放つ。回避回避。横薙ぎに氷結術式。避けるか。
「そしたらあの男、なんて言ったと思うか?今忙しいから待ってくれだと。この我が羽虫の如き人間風情に待てと言われたのだ!」
どうやらその陰陽師は男だったらしい。
段々と国沈の口調がボルテージアップしていく。忘れていた怒りに薪をくべてしまったらしい。
「ほんほん。そんで?」
「とりあえず我は待ってやった。腹立たしいが、神相手に恐れぬ姿に興味が湧いたのだ。慈悲深いだろう?なんかのメモを取り終えた奴が願った事は、『俺を神にしてくれ。』だと。」
「神にしてくれ、ねぇ……。してやったの?」
頭目掛けて術式で作った槍をいちに、さん。避けられた。
「普通なら無理だ。大量の人間の生命エネルギーを生け贄にしたとて、せいぜい弱小精霊へと上れるかどうか……。どうだ、せいぜいと精霊で韻を踏んでやったぞ。」
韻はどうでもいいな。
「まさか過去の国沈戦ってそういう事か?」
術式を放ちながら問う。
国沈の手で大量の死傷者を生み出し、その魂を用いて神上がりを目指す。かつての国沈戦の目的は大量の人間の殺戮であったのか?
「いかにも。奴め、『それで良いから、出来るだけ多く人を殺してくれ。』と。羽虫を踏み潰し歩くのは楽しそうだったからな。暇だったし乗ってやったのだ。」
国沈は術式を放ちながら語る。角度によっては邪悪な表情にも十分見える。
「へぇ、それでなるたけ人の多い地方に顕現して人を踏み潰しまくったのか。」
「怒っているのか?」
国沈は手をぱちりと叩き、転移術式を再度詠唱する。
「まさか。千年以上前の事にとやかく言わんよ。それに人と神じゃ命の重みの感覚が違うのだろう?」
本心だ。正直身内、特に廉以外の生死には恐ろしい程関心が無い事を自分で理解してしまっている。不道徳極まりないのでなんとか真人間になりたいと最近思っている。
「まぁ、そんな感じだ。後は死人の魂を使って神上がりする為の方法等を教えてやった程度だな。我の話を聞いてるのか聞いていないのか、そもそも何を考えているのかよく分からん奴だったな。」
国沈は俺の攻撃を避けようと体を捻りながら言う。神様でも何考えてるのか分からないって、それはどうなんだよ。
というか避けんな。
「あいつ、神上がりしているだろうから今じゃ何処かのほこらの守り神とかになっていたりしてな。」
「そうなのか。」
そんな事を言いながら国沈の顔面目掛けて力のこもったグーパンチがクリーンヒット。国沈は「ふぎぃ。」と力無い声を漏らしてよろよろと倒れ込む。
今回も俺の勝ち。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を お願いします! していただけたら狂喜乱舞します。宜しくお願いします!




