第65話 勝手
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「すいません……。何の話をしているんですか?」
廉は困惑した様子で言う。戸惑うのも無理はない。狐に手を引かれるまま付いてきた場所の人間が、何故か己を知っており、己の知らない事を伝えると言うのだから。
「あんたの人生に関わるお話だ。だけどまずは、私の事を信用してもらわなくちゃね。」
たえはそう言うと変身術式を発動する。
「!?え!?おばあちゃん!!?」
年を召した姿。しかし以前までの気高さを感じさせないような、いわゆる何処にでも居そうな祖母の姿。
廉にとっては非常に馴染み深い姿。彼がこの年になるまで共に生きてきた祖母の姿であった。
「廉、これから教える事は全て本当の事だよ。」
たえは優しく語り掛ける。
「申し訳ないがお二方、席を外して頂けるか。」
「良いぞ。京子、暫く外に居よう。終わったら呼んでくれ。」
「分かりました。」
たえは狐と京子に頼み、部屋から出て行ってもらう。
一呼吸置き、たえは語り出す。
〝佐藤〟廉として今まで生きてきたが、本当の名字は宇喜田である事。
宇喜田家は古来より物の怪に対峙する事を家業としてきた特殊な家である事。
同級生として入学してきた若者、宇喜田裕一の正体は廉の祖父である事。
廉がまだ幼稚園程の年の頃亡くなった両親の死因は事故死ではなく、怪異と戦った末の死であった事。
そもそも怪異とは、術式とは?物の怪に対しての基礎的な知識についての事。
裕一がいつまで経っても帰ってこないのは突如現れた大厄災、国沈に敗北したからである事。
たえはゆっくりと、廉に対して今まで秘してきた全ての事を明らかにしていった。
* * *
「そんな滅茶苦茶な話がある……?」
普段は怒りを見せる事など殆ど無い廉が、怒気の混じった声色でたえに文句をぶつける。
「僕だってこの数ヶ月の間、狐翁さん、神様と一緒に暮らしてきたから分かる。百歩譲って怪異とか、術式の存在は信じられるよ?だけど……。」
廉はそう言って俯く。
納得等、中々出来ないような滅茶苦茶な話であった。
十五年間佐藤、という名字で生きてきたにもかかわらず本当の名字は宇喜田であった事。
祖父の裕一に関しては若返りの技術すら体現させ同じ高校へと入学してくるというストーキング行為をかましてきている。
「何で今まで黙っていたの?」
廉はたえへと縋るような目で問う。
「裕一の願いだったさ。踏み入れてしまえば明日死ぬかも分からない世界。せめて高校を卒業するまでは何も知らぬまま生きて欲しいと。高校ストーキングに関しては、まぁ、あいつの暴走だ。」
全ては裕一のわがままの産物であった。たえの反対すら押し切り、廉に全てを秘した。
己が当主を務める宇喜田家は今もなお、死の危険がある場に家の者を派遣しているというのに。
息子に続き、孫を失いたくないという祖父の情が身勝手極まりない行動を引き起こしていた。
廉はたえの言葉を聞き、呆れと共に大きな溜息を吐く。
一番文句を言いたい相手は既に行方不明。廉は脱力感に襲われた。
「言いたい事は山ほどあるけど……。とりあえず、狐さん達を呼ぼうか。」
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