第64話 公開
はす!
「契約が破棄されてないじゃん!!あいつはまだ生きてんだ!!」
転げ落ちるようにして狐は階段を降りてくる。
「えっ、狐さん!?急にどうしたんですか!?」
廉は目玉焼きを焼きながら困惑する。
「京子!行くぞ!おい、廉!お前も来い!!」
狐は京子と廉の手を掴み、春雨寮をもの凄い勢いで飛び出していった。
「急にどうしたんですかね……。」
そう言って春雨寮に取り残されたシドは付けっぱにされていた目玉焼きのコンロの火を消した。
* * *
宇喜田家
「たえさん!たえさん!!」
宇喜田家の怪異家は狼狽した声色で宇喜田たえがここ暫く閉じこもっている部屋の扉を叩く。
部屋の中から返事は無い。
「たえさん!?たえさん!?」
直後、扉が開く。
「うるさいねぇ。狐翁様が来たんだろ?」
扉を叩いていた怪異家は中から出て来たたえを見て、またもや狼狽する。中から出て来たのは見慣れた風貌のたえではなく、年の頃は二十代半ばと言える見た目の美少女だったからである。
しかし、と怪異家は思う。かつて見た昔の写真に写っていた、たえさんの若かりし頃の姿にそっくりである、と。
「たえさん……ですか?」
「そうだよ。裕一が使っていた術式の解析に時間が掛かってたんだ。」
年を取り、腰も曲がりかけていた筈のたえの肉体は、若々しい頃の物へと変貌している。たえは狼狽中の怪異家へと、掛けていためがねを預ける。
「さて、狐翁様の相手をするかね。」
たえはそう言うと部屋の中に置いてあった羽織を掴む。
「あと、言いにくいのですが……。」
慎重に言葉を選んでいるといった様子で怪異家は喋り出す。
「そのまま言って良い。どうした?」
「廉殿が来ております。あと市村京子殿も。」
* * *
ここは何処なんだ……?
狐さんに連れられて見た事の無い場所へと連れられる。
何故かアポ無しで押しかけた筈であるにもかかわらず、この屋敷の人は皆、落ち着いた様子で僕達を客室へと案内した。
「えぇと……、狐さん。ここは一体?」
廉はおどおどとした様子で狐に問う。
「今に分かる。」
狐翁は人間の姿へと変化している。びしりと和服を着ており、その正座等の雰囲気も格があるように見える。
直後、襖が開く。
「ようこそいらっしゃいました。海代之狐翁様。」
堂々とした様子でたえは狐翁へと挨拶をする。たえの方も見事な和服の着こなしをしており、高身長の体の圧を引き立てている。
「えっ、誰?」
ぽかーんとした様子で廉と京子はとりあえずと空気に流されるまま礼をする。
「それで……。何故この二人を?」
たえは透き通るような声で狐へと語り掛ける。
「必要だと考えたからだ。」
狐翁は言葉を次ぐ。
「いつまで、廉に伏せるつもりだ?裕一が居なくなった今、こいつの護衛を完璧にこなせる人間は居ない。そろそろ教えてやるべきなんじゃないか?」
狐は真っ直ぐな目線をたえへと向ける。
廉も裕一の血を引いており、潜在的な霊力は非常に高いと考えられる。霊力が高いにもかかわらず対抗する術を持たない廉はまさに、怪異達にとってごちそう以外の何ものでも無かった。裕一が居た頃は廉へと自然と寄ってくる怪異達を処理していたものだが……。
「確かに、もう伝える頃なのかもしれないね。」
たえは視線を落とし、机を撫でる。
「分かりました。廉には私が全てを教えます。ですが、必要だ、というのには納得いきかねる。」
狐翁とたえの間で、妙な緊張が走る。
狐の語った「必要だ。」という言葉の意味、それは国沈を討伐し、裕一を奪還する為に必要だという事。当然国沈と戦う事になる。
「まだ未熟な若者の二人に、国沈の相手は圧倒的に荷が重いでしょう。それに、これは我々大人の失態。子供達に尻拭いをさせるわけにはいかないでしょう。」
「そうだが……。この二人でなければならない理由があるのだ。」
狐は引き下がらない。
「まぁ、お待ちください。まずは廉、貴方に全ての事の次第を伝えます。」
たえはそう言うと、廉に向き直った。
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