第63話 目覚め
がんばりむす
「ようこそ。目を覚ましたか、我が友よ。」
暗く、かなり広いことは分かるが、どれ程空間が広がっているのかも分からない場所で目が覚めた俺は声のする方へ視線をやる。
「身体に異常は無いか?呼吸は出来ているか?」
「その声、お前国沈か。」
「いかにも。」
暗闇故に姿の全体像は見えないが、その声は俺と戦った国沈の物と分かった。あれ、決着はどうなったんだったか。
こいつが生きているという事は俺は敗北している筈。
うーむ。寝起きでぼーっとしていたが、だんだんと思い出してきたぞ。
「なぁ、俺は死んだ筈だが。」
戦いの終盤、俺の判断ミスによって回避困難な国沈の術式の直撃を至近距離で食らった筈だ。国沈の術式ならあの距離の直撃で生きている訳が無い。
「いや、死んではおらん。ここは我の作り出した、我と貴様だけの領域だ。」
国沈は妙な事を言う。
「貴様が避け損なったあの術式は、亜空間術式の応用。半恒久的に相手を空間に閉じ込める我の秘伝の術式である。貴様はこの空間に閉じ込められたのだ。因みにこの中は肉体の時が止まっておるでな、年は取らぬし腹も空かん。そういう意味では死んでると言っても過言では無いかもしれんな。」
国沈はそう言い、はははと笑う。
にしても厄介な術式に捕まったもんだな。
半恒久的に独立した空間を作り出す術式だと?とんでもない術式研究の粋である予感がする。是非とも使い方を知りたいぞ。
「しかしまぁ問題は無い。腹は空かんだろうが、もっと楽しい事が出来るのだからな。」
国沈は俺の見える距離まで近付いてくる。
「あ?お前縮んだな。」
身長は俺とほぼ一緒。というか一緒か?暗くて見にくかったがよく見れば顔つきも体付きも俺そっくりだ。俺と違うのは国沈は全体的に薄暗い色をしているという事か。
「貴様の体を模倣してみた。中々動きやすい形状をしているな。人間と言う物は。」
国沈は己の手足をチラリと見て言う。
「それで、もっと楽しい事ってのは何だ。嫌な予感がするが。」
「まさか。貴様もきっと楽しめる筈だ。我は貴様が気に入った。ここで我と永遠に戦おうではないか。」
「冗談だろ?」
* * *
春雨寮内
「狐さんが部屋から出てこなくなってもう一週間か……。」
廉は朝飯の目玉焼きを焼きながらテーブルに付く京子に言う。
「裕一君も全然帰ってこないし、何だかなぁ。」
「そうね……。」
机に置いてある調味料を見ながら京子は呟く。
京子は裕一に精霊と共に生きる為の訓練を受ける約束をしていた。
裕一が居なくなって以降、彼女の練習メニューは変化していない。
「まぁそんなに心配しないでも大丈夫ですよ~。」
寮の台所を清掃しにきた悪魔のシドが呑気な口調で言う。
廉にはシドが見えていない。
京子はキッと「心配するも何も、もう死んじゃったのよ。」という無神経さに対する抗議の視線をシドへ送る。
「だって私の契約は消滅していませんから。悪魔の契約はどちらかが死ねばそこで破棄される筈です。」
そう言ってシドは胸元から契約書を取り出し、ぴらぴらと振る。
「は?」
京子はぽかーんとした表情で座ったままシドの手元の契約書を見る。
直後、二階の扉がもの凄い早さで開いた音がする。
「そうだよ!!契約が破棄されていないじゃん!!アイツはまだ生きてんだ!!」
階段を転げ落ちるようにして、げっそりと痩せ細った狐が降りてくる。
廉はぽかーんとした京子と転げ落ちてきた狐を見て、何が起きているのか分からないといった顔で「狐さん……お久しぶりです。」と言った。
「廉!!お前も来い!!行くぞ!!」
狐はそう言って廉と京子の手を引き、春雨寮を飛び出した。
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