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第59話 吸血鬼

はん!


 火力は足りない。数発くらえばお陀仏。





 そんな時、背後から飛来してくる二つの気配に気付く。





 馬鹿野郎。恐らく国沈はもう止まらない。こんな術式の雨あられの中突っ込んでくれば即死だ。





 「……!」




 

 上空の二つの気配は直後、防壁術式に増幅術式を複合させた高難度術式を展開する。




 あぁ、この技巧は。




 「吸血鬼か。」






 俺の視線の先ではリーザ・フェリナとリペ、二人の吸血鬼が国沈に対峙せんと術式を用意していた。





 「裕一!!私達も戦おう!!私達は悪魔術が使える!!」





 悪魔術か。確かに悪魔術なら神性があるだろう。






 彼らがこの場に来た理由。数少ない神性属性の術式が使える人材、というのもあるだろうが、彼ら二人は恐らく己の行った行為のツケを払いに来たのだろう。







 それにしても彼ら二人は本当に戦闘センスが良い。いや、努力の賜物か。




 恐らく出力的にはそれこそいってもB級格だろう。しかし、彼らにはそれを十分に埋めるテクニックがある。






 「助かる!!」





 俺はそうとだけ返事をし、国沈に向き直る。





 「ふふふふ。増えたか。しかし……、貴様らの気配、何処かで見たぞ?」






 国沈はそう、吸血鬼達に語る。






 「そうだろう。私達はお前をこの世界に呼び出した者だ。勝手な事を言って申し訳ないが、契約内容は破棄して貰えないだろうか。」





 リーザはそう言い、国沈へと向く。




 「それは出来ぬ相談だ。私は今、この生涯の中で最も楽しんでいる瞬間に居る。普段なら大人しく帰ってやっているが、今回は私の私情により破棄は出来ない。」






 「そうか。残念だ。」





 リーザはそうとだけ言い、国沈に向け悪魔術を放つ。




 あれ?あいつらこんなに火力高かったっけ。




 「補助系術式をガンガンに掛けてもらったんだ。お陰で体が異常に軽い。」




「良かったじゃん。」





 俺はそう言うと、高火力を意識した組み合わせの術式を複合詠唱し始めた。






 リーザはリペと共に術式を捌きながら解説する。補助系術式のお陰でリーザとリペの術式は現在、通常時の約十倍近くの火力となっていた。





 リペが防壁術式を唱え続け、リーザがチクチクと攻撃を国沈に向け唱え続ける。非常に安定感のある組み合わせとなっていた。





 「中々やるではないか。いつ以来だ。私を相手にここまで生き残る者達は。」





 国沈は戦いの中、ずっと楽しそうにしている。無理も無いのだろう。




 恐らく奴の居る世界には既に、国沈と張り合える存在は居ないのだろう。競り合える相手の居ない、頂点故の孤独。そういった寂しさを永遠にも等しい時間の中、味わい続けたのでは無いだろうかと。






 「私は、もっと、もっと戦いたい。貴様らとのこの時間は心底楽しいぞ。ありがとう。」





 そう言いながら国沈は大量のビーム型術式を放ち続ける。





 邪神に感謝されるのも変な気分だ。この瞬間にも俺の命を摘み取らんと術式を詠唱し続けている癖に。






 だがまぁ、俺としても久しぶりの格上相手との戦い。心が踊るというものよ。






 だがしかし、唯一の心配事は、この空間に取り込まれてしまっているという廉。たえ達が保護したようなので、無事だとは思うが……。やはり心配である。






 「裕一!!国沈が!!」





 背中の狐が叫ぶ。なんだ?





 注意深く国沈を見ると、俺から見て死角。丁度奴の体によって視線が遮られる位置で何かの術式を用意しているのが見えた。




 すかさず転移術式を使い、回避を行う。





 「あぶねぇ……。助かる。」





 食らっていればそこそこ痛い目を見ていただろう。死んでいたかもしれない。




 かなりありがたい。戦闘時間も延びている。ここから何とか攻勢に回りたい。





 「倒しに行きたいなぁ。」





 そう、俺はリーザ達へと語り掛けた。





 



 







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