第56話 神性
眠いですよね。わかる。
「神性が落ちた?領域?」
裕一は再び問う。
「ふふふ、お喋りだけしててもつまらんだろう。戦おうではないか。」
国沈はそうとだけ言うと、渦からぶら下がった状態のまま、裕一に向けて術式を放った。
* * *
話しながら情報を引き出したかったが、ここらが限界か。
相手は国沈、過去に日本を相手に取り戦った大怪異。それにしても、コイツは俺を殺したら帰ってやると言っていたな。ターゲットは俺か。二人組の吸血鬼達が召喚を行った時に願った契約内容なのだろう。
ふと、裕一は思う。数百年前の国沈襲来。あの時も国沈の狙いはただ一人であったのでは無いのだろうかと。コイツは召喚に応じ、契約内容を遂行しているだけなのだろうと。
「まぁ、今はどうでも良いか。」
大まかにはトカゲ型の巨体、いたるところに手足が生えているお陰で割と器用な動きも出来るらしい。現在は渦から半身をぶら下げた状態である。
「それで、この出力と重複詠唱か。」
裕一は防壁術式を発動しながら呟く。
「ふははははは!!良いぞ!!あの時にはお前程動ける奴は居なかった!!」
国沈は楽しそうに複数の術式を詠唱しながら笑う。
レーザーのような力を圧縮したビームを打つ術式や雷を放つ術式、広範囲に重力を発生させる術式を国沈は連続で放ち続ける。
「バケモンみてぇな火力しやがって。」
裕一は呟く。展開した防壁術式が軒並み一撃で消失してしまうのだ。本来は重たい術式を正面から何発も食らわなければ消失しないような術式の筈である。
そして、対国沈においての最大の難点。
「なんっっで通んねぇんだよ!!」
裕一はイラッとしながら叫ぶ。空間圧縮術式に増幅術式、超爆発に……等の非常に火力を重視した組み合わせ。要は実用レベルで出せる最高火力を直撃させたにもかかわらず、国沈は無傷であった。
「ふはは!!残念だのう!!」
国沈は楽しそうに笑う。
クソ、冷静になれ。絶えず放たれる術式に対応する為、防壁術式を展開しながら頭を回す。
今の術式の着弾の瞬間をじっと見て分かった。
奴の体に俺の術式は届いていない。空の裂け目の時と一緒だ。不思議な力によって術式が掻き消されている。
何を打てば届く?
俺が今まで戦ってきた怪異達の中にも特定の術式に対して耐性を持つ怪異は存在した。相手は国沈だ。かなりの種類の術式に耐性を持っている気がする。試すしか。
国沈の攻撃を処理しつつ、ひたすら色々な種類の術式を放ち、情報を集める。この作戦しかない。
* * *
渦の外縁部で戦っていた怪異家達の多くは眼前に広がるその異質な光景に立ちすくんでいた。
渦の中心部から垂れ下がる巨体の邪神、奴が現れた今も、渦から生み出される怪異は止まらない。
一刻も早く裕一の元へと向かいたい。伝えなければならない。
しかし、この場にいる並の怪異家のその殆どが、自分があの場に行けば一秒と掛からず死ぬであろう事を本能的に理解してしまっていた。
「俺は、裕一さんに伝えに行く。吸血鬼達から聞く事が出来たこの情報、知らなければ例え裕一さんといえども奴には勝てない。」
そう言って関東圏の名家、新妻家の若頭のマコトは立ち上がる。
「そうだな。我々関東の五家が向かう。最大限の補助系術式を掛けてくれ。」
そう言って橋口吾郎も己の装備を点検する。
「…………!わかりました!!」
そう言って怪異家達は動き出した。
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