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第51話 開戦

よろしくお願いします。


 「ありゃりゃりゃりゃ。」




 裕一は渦の中心付近を見ながら、してやられた。という顔をする。




 地鳴りと共に開きだした裂け目からは異形の怪異が続々と出て来ている。感じる気配から見た感じ、強さ的にはC級から強い者ではS級に至っているであろう気配の者まで居る。




 「てっきりデカいのが一匹来るだけだと思ってたよ……。」





 付近に降り立ってきた渦の怪異を何匹か蹴り飛ばしつつ裕一は呟く。




 たえの持ち帰ってきた資料に載っていたかつて鎌倉時代に起きた類似の事例、国沈。





 あの時の資料にそれらしい記述が無かった故に無意識ながら国沈級以外が出て来る可能性を消去してしまっていた。反省せねば、と裕一は思う。





 幸いにも洋館での解散以降、裕一が事態の急変に備えて洋館付近で待機していた事によって、現状空の裂け目から出て来るかなりの渦怪異を地面に打ち倒す事が出来ている。が。




 「手数が足りねぇ……。」





 両手足をフルに稼働させつつ、常時五つ程の爆発術式を同時詠唱しているにも関わらず、空から流れ出てくる渦怪異の処理は間に合っていなかった。




 そもそもハイペース、広大な範囲に散らばり出現する、強い者だとA級に至る渦怪異を一人で対処しようとすること事態が本来おかしい。正気の沙汰では無いと言えた。




 * * *



 宇喜田構内は非常に慌ただしい状況となっていた。




 事前の主な予想プラン、超大型の怪異を裕一をメインアタッカーに据え、複数人で代わる代わる援護を行うという作戦が使えなくなった為である。




 万が一に備え、小型怪異が大量に発生した場合、というプランも用意されていたにはされていたが、どうしても練度に差が出てくる。




 「私達にも怪異が見える。まぁこれは不幸中の幸いかね……。」




 たえは宇喜田対策部の棟内から赤く染まった空を窓越しに眺めながら呟く。




 裂け目を認識できていなかった殆どの怪異家達にとっての最大の懸念点はそこであった。そもそも認識できない。そうなっていた場合は恐らく勝負にすらならないだろうと。




 幸運な事に、事態の急変以降は並の怪異家も認識できる程の存在感が生まれた為、並の怪異家達も対策が立てられるようになった。




 「赤谷さん!!裕一さんに連絡が繋がりません!!」




 対策部に配属されていた怪異家が通信機を握りながら赤谷へと叫ぶ。




 「関東圏全域に通信障害が起きとる!!恐らくあの渦の影響や!!」





 赤谷は机に己の拳を叩きつける。




 「電波の阻害に、強力な波動を出す事によって念話すらも対策してきちょる……。邪神さんってのはどうやら現代戦も得意らしい。」





 赤谷はプロテクターを身に付けながら言う。





 「赤谷さん!?何をするつもりですか!!」




 プロテクターを付け始めた赤谷を見て怪異家が叫ぶ。




 「渦から怪異がわらわら出て来ている。わしらも対応せにゃ間に合わん数じゃ。」




 赤黒い渦を背中に赤谷は言う。





 確かに毎秒のように渦から生み出される怪異は、既にあちらこちらへと着陸していた。





 「足の速い怪異家はおるか?」





 赤谷は言う。





 「……っ!それなら私がっ!!」




 立ち尽くす怪異家の中で一人、金髪の青年が言う。





 「そうか。今から渦怪異の掃討を行う。お前は付近一帯の怪異家を周り、その旨を伝えてこい。」





 「分かりました!!」




 金髪の青年は返事をし、転移術式を用いてその場から姿を消す。




 関東圏全怪異家、宇喜田裕一合同での渦怪異掃討作戦が行われようとしていた。




 






 




 

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