第50話 顕現
暑くなってきましたね。
「邪神召喚の儀式が成功していたのかもしれない。話を詳しく聞かせてくれ。」
拘束されたリーザは裕一に向けて語る。
裕一は既にリーザに敵意も、抵抗の意志も無い事を理解していた。故に事の次第をリーザへと語る。
暫く前から検知できない怪異がレーダーに反応していた事。それは怪異では無く空に出来た奇怪な裂け目であった事。裂け目は渦状に形成されており、渦の中心はここの付近であった事。
裕一は知りうる全ての情報をリーザへと伝える。
リーザは話を聞き、思考する。完全な失敗に思われた邪神召喚の儀式が成功している可能性が高い。そういえは何処かで聞いた事がある。異界の強大な存在はその力故に、現世への顕現に時間を要すると。
空に出来た渦は邪神召喚までのカウントダウンなのでは?今に渦の中から邪神が現れるかもしれない。
リーザにとって最早邪神等どうでも良かった。元々裕一を打ち倒す為に求めた力。拘束されてしまった現状では意味を成さない。
リーザは懸念する。邪神への願いは裕一の殺害。儀式が成功していたのだとしたら邪神はそれを成すまで元の世界へは戻らないだろう。そして、裕一には邪神を倒す事は叶わない……。
いつの間にかリーザは考え込んでいた。付近に歩みを進めてくる何者かの存在にも気付かず。
「一件落着かい?」
声を聞き、リーザは弾かれるように背後を見る。宇喜田たえ。裕一に並び脅威であると考えていた人物であった。
* * *
目を丸くして己を見る拘束済みの女吸血鬼の表情を見てたえは事を察する。
「何だ。原因は分かったものの何も事態は好転してないんだね。厄介だ。」
相変わらずこちらの思考を先読みしてくるな。と裕一は思う。
「あんた、名前は?」
「リーザ・フェリナです。」
「そうかい。あんたの部下も連れてうちに来なさい。色々聞き取りたい事がある。」
たえはそう言うと転移術式を発動し、二人の吸血鬼を連れ消えていった。裕一を残して。
「置いてかれた……。」
誰も居なくなった洋館の庭で裕一はポカンと立ち尽くす。
ふと、上空に気配を感じる。自然を上にやると空は赤黒く染まり、渦状の裂け目が空全体に見て取れた。
「大分濃くなったなぁ。」
裕一以外、この景色を見る者は居ない。
* * *
吸血鬼拘束から数時間。
自称西洋吸血鬼の王と名乗る女吸血鬼、リーザ・フェリナとお付きの者、リペの協力的な姿勢により、彼女らの知る限りの正確な情報がたえと対策部へ共有される事となった。
リーザ達の処遇は事が落ち着くまで保留となった。現在は宇喜田管理の元保護されている。
そして届いた、裕一からの「そろそろ何か起きそう。」との報告。聞けば空の裂け目は加速度的に増加、巨大化しているとの事である。早急な対応が必要であると対策部の赤谷は焦っていた。
とりあえず聞き取れた情報を裕一に伝えねば。もし邪神が本当に召喚されるのだとしたら、この事を伝えねばいくら裕一といえど、勝機は無い。
机の上に置かれた固定電話の受話器を手に取ろうとしたその瞬間、机が小刻みに揺れている事に赤谷は気付く。
「……地震か?」
次第に揺れが大きくなってくる。強大な気配を感じ、赤谷が対策部の小屋から飛び出ると、奇怪な景色が視界に入った。
「空が……赤い……!」
既に日が沈んでから暫く経ったというのにも関わらず、空は夕焼けのような明るさであった。
「遂に来てしまったか。」
赤谷は思う。物の怪の類いが見えない一般人にこの景色が見えているかは分からないが、少なくとも視界に映りうる全ての範囲に影響を与えるその出力は最低でもS級の怪異。
現状一番可能性が高いのは予兆があった邪神であった。
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