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第49話 降参

わかめ


 二対一、地の利、相手は爆発術式しか使わない。




 圧倒的にこちらにアドバンテージがあったにも関わらず化け物、裕一は余裕の表情で私達の攻撃を処理していた。




 永い時の間待ち続けた、裕一を打ち倒すチャンス。予想外の形での到来であったが今こそ西洋吸血鬼復興の時であると戦い始めた当初は思ったものの、そんな希望はとうに砕かれていた。




 まるで格が違う。精度早さ出力戦術。圧倒的にあらゆる面でこちらが劣っている事を見せ付けられる。




 既にリペを戦闘不能にした裕一は落ち着いた足取りでこちらに歩いてくる。一対一では最早勝負にならない。距離を取らねば。




 不幸中の幸いであるが奴は今爆発術式しか使わない。直撃さえ避けて、あそこで倒れているリペを抱えて逃げる。逃げる!






 リーザは覚悟を決め、走り出すが。



 


 隙を見て走り出した筈だが何故か視点が下がっている。何故?




 足下を見てリーザは悟る。あえて直撃を避けられたのだろう。付近をかすめた裕一の爆発術式によって足下の地面をえぐられる。




 体勢を崩した。裕一の早さならこの隙は見逃さないだろう。何が直撃を避ければだ。避けられる訳が無いのに。

 




 こうしてリーザ・フェリナとリぺは裕一に拘束されるに至った。






 * * *




 とりあえず何回か発動をミスりつつも、拘束術式を二人の吸血鬼に発動する。





 下僕吸血鬼の方は未だ気絶している。相当綺麗に入ったからな。無理もないか。





 主と思われる女吸血鬼の方はがっくりと項垂れている。





 正直、久しぶりに頭を使う戦闘をして楽しかったと思う自分が居る。




 ここ数年間は確かにフィジカルや能力、オリジナルの術式等のパワーで押し込むだけの相手とばかり戦ってきていたからな。単調で飽きていた。





 しかしコイツら二人、特に女吸血鬼の方は細かい戦闘テクニックを確実に、堅実に成していく俺好みの戦い方をしていた。




 俺が格上である事を理解した上で、驕ること無く、あらゆる手を尽くした上での敗北だ。敵ながら天晴れ。




 今回の件、犯人が見つかったら八つ裂きにして殺してやろうと思っていたが、もしもコイツらだったなら許してやっても良いという気分である。





 「宇喜田裕一。私の身柄は勝手にしてくれ。そこで寝ている青年、リぺは私が今まで巻き込んでいた。どうかリぺだけは生かしてやってくれないか。」




 女吸血鬼が口を開く。開口一番他人の心配かよ。良いな。




 「とりあえず状況の整理だ。そもそも何故お前らは俺が来た瞬間逃げ出した?」




 リーザは、あんたが怖いからだよ。という言葉を飲み込み、現在に至るまでの殆どの事の次第を裕一へ話した。




 世界的に劣勢となった吸血鬼族を復興させる為、力を求めていた事。力ある存在として裕一を殺し、取り込もうとしていた事。怨霊を蒔いたのも己であり、近頃は失敗したものの、邪神召喚の儀式を行った事も。




 最早リーザ達に打つ手は無い。みっともない真似はよして、吸血鬼族として威厳ある最期を迎えようとリーザは覚悟していた。





 「ふーむ。そうか。邪神召喚の儀式?」





 裕一は呟く。




 リーザと名乗った吸血鬼達の今までの行動は理解した。邪神召喚に失敗した?それは本当か?




 「実はここ最近、上空に感知困難な時空の裂け目がちらほら発見されている。裂け目は渦状になっている事が明らかになり、渦の中心は丁度この辺りだ。何か知らないか?」





 リーザは困惑する。感知困難な裂け目?この付近?この辺りの怪異も熟知しているリーザにとって、そんな事が起きる原因は最早彼女らの行った邪神召喚の儀式しか心当たりにない。しかし何も起きず不発だった筈。





 リーザは思考しながら裕一へと言う。




 「邪神召喚の儀式が成功していたのかもしれない。話を詳しく聞かせてくれ。」



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