第48話 差
それなりに筆が乗って良かったです。
今の所爆発術式しか使わない俺を見て下僕吸血鬼は怪訝な表情をする。
三、四回と接近しては離れる事を繰り返す。今の所、互いに致命傷は負っていない。
俺の方は何度か潰せるタイミングがあったが、この違和感を探る為にわざと生かしている。メインの主の方はどうやら逃げてないらしいしな。
吸血鬼が波動を飛ばす系の術式を放つ。二歩下がってしゃがむ。しゃがみながら爆発術式を用意する。
術式を用意している俺を見て吸血鬼は大回りで走りながら接近してくる。近距離のカウンター対策だな?
その動きなら逆に離れてしまえば俺が一方的に術式を打てる。
懐に飛び込んでのカウンターは俺の十八番とも言える動き。やっぱりコイツ、俺の研究をしている。
「お前らは何だ?俺の戦法を研究しているみたいだな。」
下僕吸血鬼は死を覚悟した者のそれに見える程の目付きをしている。
ここでふと、暫く前にしたたえとの会話を思い出す。
暫く前に春雨寮で捕まえた怨霊が時々、ブツブツと〝吸血鬼〟という単語を言っていたという事を。
「なぁ、お前ら。どっかで怨霊と接触したか?」
動きながら二人の吸血鬼に問う。
主っぽい吸血鬼の方も逃げたかと思いきや館の裏から遠距離術式を俺に叩き込もうと機会を狙っているようだ。そんなに殺気を出されちゃ索敵術式を使わないでも気付くぞ。
あー。返事は無いが、彼らの表情が少し引き攣る。やっぱ関係者か。というかそもそも裂け目の渦の中心付近に居る吸血鬼って事はこっちの件にも関係してそうだな。
とりあえず捕獲すっか。
突如、物陰に隠れていた主っぽい女吸血鬼が飛び出す。
「リぺ!!コイツは何でか今爆発術式しか使えんらしい!!畳みかけるぞ!!」
遠距離狙撃系の術式を発動させながら女吸血鬼は叫ぶ。バレたか。そりゃまぁ爆発術式しか使ってなけりゃバレるか。
リぺと呼ばれた下僕吸血鬼も呼び掛けを聞き、再び構え直す。
確かに今爆発術式しか使えないのは本当なんだが……。コイツら二人が結託すれば倒せるのでは無いかと希望を持たれるのは癪だな。
リぺ青年が懐から短刀を取り出しつつ術式を発動。待て、それ毒だろ。人間にはあんま適性無いから使える人ほぼ居ないんだよな。おもしろ。
女吸血鬼は遠距離狙撃系術式だな。詠唱の魔方陣をちらっと見た感じ炎系か。普段なら氷結系で相殺させるんだが発動成功確率が二分の一位まで下がってる今は回避が安全か。
下僕吸血鬼の方に突っ込み素殴り。元々フィジカルはある方だと自負しているし、それなりに通るだろ。術式程じゃないけど。
裕一の予想外の動きに戸惑ったリぺはみぞおちに重い一撃を食らう。
体勢を崩してしまったリぺは重ねて爆発術式の連弾を近距離からもろに食らう。相当なダメージを一気に食らったリぺはその場に倒れ伏し、ほぼ戦闘不能となる。
リーザは焦っていた。リぺが裕一のヘイトを買い、隙を作ってくれている筈なのに一発も遠距離術式が当たらないからである。
リーザ自身はそこまで身体的に優れていない。かつて同属と共に居た頃からリーザは周囲に比べて劣ってすら居る自覚すらあった。
しかし、彼女が吸血鬼の王に至るまでに他に差を付けた物、それは研究である。
術式の相性は?身に付けるべき技は?生き残るために必要な知恵は何か。何処までの相手なら戦いになるか。
周到な研究に、永いときの間一度たりとも歩みを止めなかった鍛錬。彼女の遠距離術式もまた、一級品に至っているとの自負があった。
なのに一発も当たらない。腹立たしい。なんだその技は?リぺの体を遮蔽物にするな。何だ今の動きは。どう見ても当たったろう。
二対一、土地を知っているという面においても圧倒的なアドバンテージがある筈の戦いにも関わらず、この戦いを支配しているのは裕一であった。
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