第45話 接近
結構疲れました。
裕一がスケッチを持ち帰ってから三日、宇喜田家、対策部内。
赤谷は裕一の持ち帰ったスケッチを含む資料を見ながら思案していた。
「空に出来た異空間へと繋がる裂け目……。攻撃しても反応は一切無し、不思議な力によって掻き消されると……。」
正直分析は難航していた。怪異だと思われていたレーダーの反応は空に出来た裂け目のものであり、それ以上の情報が出てこない。
裂け目の発生している地点もバラバラで、とても法則性があるようには見えない。
赤谷がふと我に返った頃、かなり長い時間思案していたのか、低かった太陽は既に真上へと位置していた。
一息つこうかと、赤谷はインスタントコーヒーを入れ始める。
「裂け目……裂け……。」
思案しながら赤谷はスプーンでインスタントコーヒーを溶かす。
「裂け目……、渦?」
カップの中を渦巻くコーヒーを見て、赤谷の手が止まる。
そして作りかけのコーヒーを放置し、赤谷は机の上に置かれた資料を見る。
「ここ……ここも……。」
日に日に増えていく報告により、現在発見されている裂け目の総数は十ヶ所を超えていた。
「やっぱり……。ある一地点を中心に渦を巻くように裂け目が出来ちょる。」
赤谷は位置にばかり考えを巡らせてしまっていた。しかし、裂け目の裂ける方向、その角度を一つ一つ見ていくと、ある一点を中心に裂け目が形成されていた。
「裕一さんに行ってもらうか。」
そう呟き、赤谷は携帯電話を取り出した。
* * *
赤谷から報告が来る。
どうやら裂け目に法則性を見いだす事に成功したらしい。良かった。
俺は相変わらず爆発術式以外はたまにしくじる。七割方どんな術式も使えるラインまで脳みそが戻ってきたが、正直七割なんて不発したときが恐ろしすぎてやはり実戦では使えない。
正直爆発術式ゴリ押し戦法だけじゃ不安だがそうも言ってられない。必要に迫られた時に集中出来ると良いなぁと思う。
俺は赤谷から報告を受けた町へと転移術式で移動する手筈になっている。
赤谷曰く、裂け目が関東圏全域に広がっている為、正確な中心地点が把握しきれないとの事で町全体をうろうろしながら違和感を探す作業になる。
俺以外に今の所、手が開いてて裂け目を感知できる怪異家が居ないとのことで毎度毎度俺が使われる。
「じゃあ、行きますかぁ……。」
転移術式を詠唱する。
プスン
気の抜けた音がして転移術式の詠唱に失敗する。だりぃなぁ、これ。
* * *
リーザ・フェリナは焦る。
「裕一が飛んできた!?どこに!!?」
裕一が己の潜伏する町に転移してきたと彼女のお付きの者、リペという名の白髪の青年に問う。
「気配が大きすぎるせいで分かりません!詳細な位置を把握しようと迂闊に使い魔を飛ばせばこっちの場所が割れてしまいます!」
リーザ、リペ共々バタバタと逃走の準備を行う。
いくらリーザが西洋吸血鬼の王といえど、裕一と正面からぶつかり合えば命は無いと二人とも理解していたからである。
「あっ!!怨霊!!こんな時の怨霊だ!!」
ダラダラと汗を流しながらリーザは思い出し、叫ぶ。そして虚空に向かい、術式を詠唱し始める。焦りにより、何度か詠唱に失敗する。
「あれ!?え!!?居なくなってる!?」
リーザは登録しておいた怪異の呼び出しを行う術式を発動するが、何度呼んでみても怨霊が呼び出されない。
何故か。かつてリーザの手によって生み出された怨霊は、既に春雨寮に巣くう怪異として裕一の手によって討伐されているからである。
現在は宇喜田家の手によって無害化が施された後、冬弥の手に渡っている。
「リペ……、マズいかもしれん……。」
顔を引き攣らせたままリーザはお付きの青年へと助けを求める表情をする。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします! していただけたら狂喜乱舞します。宜しくお願いします!




