第41話 赤谷
遅くなりました。
宇喜田家から招集が掛かった裕一。元々招集があれば駆けつけるとの条件付きでの高校生活……であったが。
「うん……、そういう訳で、ちょっと実家に帰らないといけなくなって……。」
半分ミイラのような状態にすら見える生気の無い表情で裕一は廉に暫く居なくなる言い訳をしている。
春雨寮の廉以外の人間は事情を把握している為、裕一の言い訳のフォローに回る。
たえが気を回した為、校長も事情を把握している。故に学校生活に問題は出ない。
「そういう事ならしょうが無いよね……。お父さん、体調良くなると良いね。」
廉は心配そうな表情で裕一に声掛けをする。この裕一の状態の原因は言い訳に使った身内の体調不良にあると信じたようだ。
「じゃあ、そういう事で……。」
ふらふらと荷物も持たず裕一は春雨寮の門を開き、外に出て行く。
「裕一!裕一!荷物忘れてる!!」
狐が後ろから追いかける。
「あー、どうせ亜空間術式で荷物は……、そうか。」
追いかけてきた狐に裕一は言いかけるが、廉から己の特殊性を隠す必要がある事を思い出す。
「お前本当に大丈夫か……?」
狐は心配する。正直、狐の目には裕一が泥酔状態の人間と同じくらいの知力に下がっているように見えた。
「大丈夫。」
裕一はそう言って廉の目の前で転移術式を発動しようとする。
「馬鹿!!」
直前、狐のドロップキックによって術式の発動は阻止された。
「やべ。」
裕一は我に返る。
結局裕一はある程度の所まで歩いて行った上で転移していったが、廉以外の人間は全員思う。「あいつ大丈夫か……?」と。
* * *
宇喜田家、特殊怪異対策部
宇喜田家主導の下、今回の姿の見えない怪異等の通常ほぼ存在しないような怪異に対応する為の専用の組織が設立された。
本部自体は宇喜田家敷地内に設立されているが、メンバーは様々な家の人間から構成されている。
あてがわれた小屋の中で一人の男が書類を手にし、椅子に座っている。
年の頃は30代半ばに見え、赤髪。傷は多いが、良く鍛えられた肉体をしている人物である。
「何ちゅう事じゃ……。」と苦い顔をしながら呟く。
彼の名前は赤谷鈴。今回の対策部のリーダーとして宇喜田たえに選出された人材であった。
初めに対策部のリーダーとして選出された時、彼は困惑した。
赤谷は宇喜田家の人間では無いからだ。普通宇喜田家が立てた対策部なら宇喜田家の人間がトップに立つだろうと赤谷は思っていたのだが、この理由は直ぐに明らかとなる。
たえから渡された招集された人材の名簿、中には宇喜田裕一の名があった。
赤谷が幼い頃から既に最前線を独走していた怪異家の頂点。まさに生ける伝説として全ての怪異家の人間の目に映っていた。
「確かに宇喜田の人間には裕一さんに命令なんて出来ないじゃろなぁ。」
赤谷は一人納得する。しかし彼自身もまた、裕一に命令等出来る気がしていなかった。
そもそもの疑問が赤谷の頭に湧く。
「裕一さんが指揮をすれば良いんじゃなかろうか。」
赤谷は直ぐに考えを改める事となる。
* * *
「え……、裕一さん……?」
赤谷は困惑する。
対策部の招集の日、怪異家達がばらばらの時間帯に赤谷の元へ挨拶へと訪れていた。以降怪異家達は別に用意された広間で戦力等の情報交換を行っていた……が。
午後七時頃、既に日は沈み集まっていた怪異家達も解散していた頃、赤谷の居る小屋へと何者かが転移してくる。
「宇喜田裕一でず。よろしゃじゃ。」
赤谷がかつて写真で見た若かりし頃の宇喜田裕一そっくりの人物が、知性を感じさせないような状態で転移してくる。
「裕一……さん?」
赤谷はこの脳みそが溶けたような顔をした人間が憧れの存在であると信じる事が出来なかった。
赤谷が困惑していると、二人の居る小屋へと何者かが入ってくる。そしてその人物は「ようやく来たのかい。やっぱりこうなったか。」と言った。
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