第40話 憂鬱
難しいです。
たえが葉山総理を訪れてから数日。あれ以来も宇喜田家へポツポツと怪異探査レーダーの不具合報告が上がっていた。
一応全てのレーダーを引き取り、解析を行っているが、そのどれも故障は起きておらず同一の波長を検知していた。
探査レーダー等の道具周りを扱う部門の長、松からこの報告を受けたたえは、一つの結論を出した。
* * *
ある朝、狐は深く、とても重たい瘴気のような物に当てられ目を覚ました。
「なんっだ、これは……?」
なまじ霊的な干渉力が強い故に狐は下の階から流れ込んでくる瘴気に頭痛を催す。
ふと横を見ると、体に精霊を宿す市村京子が非常に寝苦しそうにうなされていた。
「何が居んだ……?裕一は何をしている。」
狐は怪訝に思う。狐はこれ程の瘴気を出すような存在が近付けば真っ先にそれを感知し、取り除く事が出来るのが裕一であると理解していた。
「とりあえず状況を確認しないと……。」
そう言って狐は地面を這いつくばりながら春雨寮の一階を目指す。
何とか頭痛や圧を乗り越え、一階へと辿り着くと瘴気の出所が狐の目に入る。
談話室、テーブルを囲んだソファの上にうつ伏せになりながら寝転ぶ裕一の体からおびただしい量の瘴気が溢れ出ていたのであった。
* * *
「裕一……!裕一……!!」
狐は談話室のソファで突っ伏す裕一に必死に呼び掛ける。瘴気に当てられ、体は体調不良のオンパレードであったが、ここで裕一から溢れ出る瘴気を止めなければ体調不良所では済まなくなる。最悪、狐のような半霊体存在は瘴気に取り込まれ死んでしまいかねない。
「あぁ、狐か……。今は話し掛け……って、えぇ!!?何じゃこりゃ!!!」
狐の必死の呼び掛けに目を開いた裕一は、己の体から溢れ出る瘴気に驚きの声を上げる。
「ちょっ、ちょ、止める!止まれ!!」
己の体をぱたぱたと叩き、裕一は溢れ出る瘴気を何とか止める。
「ぎゅぅ……。死ぬところだった……。」
瘴気は止まったものの、狐は目眩のような症状を引き起こし、その場にへたりこむ。
「裕一、お前どうしたんだ……?」
狐の問いを聞き、裕一は顔を歪ませ、深刻な表情を浮かべる。
「宇喜田家の俺の奥さん、たえから招集がかかった。暫く学校に通えないかもしれない。」
そう言って裕一は深く肩を落とし、盛大な溜息を吐いた。
* * *
狐は裕一から話を聞く。
どうやら面倒くさそうな怪異が現れる可能性がある事。認識が難しい怪異であるため、裕一のような認識の幅が広い人材が必要である事。
「元々、やむを得ない理由が有る場合の招集には応じるという条件付きでこの高校に入ってきたんだ。まさかこんなに早く招集があるとは思わなんだ……。」
裕一はそう言う。最大の裕一ショックポイントは、廉に構う事が出来なくなる事であろう。
「たえが言い訳の仕方とかの紙も招集の通知と一緒に送ってきたんだが、俺って何だと思われているんだろうな……。」
裕一は言う。
狐は「言い訳とか一切せずその年まで力技のゴリ押しで主張を通してきたから口が弱いんじゃない?」という言葉を飲み込んだ。
「まぁ、春雨寮はおいらに任せて行ってこいよ。裕一ならぱっぱと終わらせられるさ。」
そう言って狐は裕一を激励した。
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