第39話 国沈
一つ前の話、第38話後半を修正しました。話の内容はほぼ変わっておりません。
申し訳ございません。
「何が出たんですか?」
印刷し終えた資料をたえに手渡しつつ、葉山は問う。
「まだ不確定さ。でも……そうだね。国沈の資料が欲しいと言ったんだ。そういう事だよ。」
たえは手渡された資料の表紙をなぞる。
【国沈記】
資料の一ページ目にはそう銘打たれている。
鎌倉時代、国沈に対応した当時の人間達が後世の為に記録を残そうと国を挙げて編纂された書物であると伝えられている。
「ここ最近、色々な怪異家から怪異の探査機に反応はあるが、怪異が居ないって話が複数件出て来ていてね。」
そう言ってたえは事の概要を葉山に伝える。
「それで、ずいぶんと前に読んだ国沈の資料に似た記載があった事を思い出してね。」
そう言いながらたえは資料のページをパラパラとめくる。
「あった。」
そういってたえがめくる手を止めたのは資料の中程、国沈の出現から討伐までの時系列的な内容の部分である。
国沈出現の現在の数え方で数週間前、ある宮仕えの陰陽師が姿の見えない怪異の存在を主張している。
話を聞いた朝廷は他の陰陽師達を使い、事を把握しようとしたが、初めに主張した陰陽師以外、姿の見えない怪異の存在を確認出来なかった。
最初に怪異の存在を主張した陰陽師は妄言を吐き朝廷を混乱させたとして打ち首に処されている。
「姿の見えない怪異。多分この陰陽師は把握できる怪異の波長が広かったんだね。しかし誰も国沈が出現するまで結局姿を見る事は叶わなかった……。」
たえは言う。
「まだ国沈みたいなのが来るとは確定していないよ。資料、忙しい中悪かったね。後は裕一に調べさせるよ。」
そう言ってたえは資料を持ったまま手をぴらぴらと振る。
「お役に立てて良かったです。裕一さんにも宜しくお伝え下さい。」
そう言ってたえは転移術式を発動させようとする。
「お待ち下さい。」
そう言ってたえを引き留める声が聞こえる。
たえは術式のキャンセルを行い、声のした方向を見やると、先程葉山に指示を出されていた秘書が居た。
「恐らく葉山総理が〝国沈〟のキーワードで検索を掛けた資料をたえ様にお渡ししたと思います。こちら、国沈という単語を含まないものの、それに関連した事象の資料です。お持ちください。」
そう言って葉山の秘書は一抱えほどもある資料の山を台車に乗せ、たえに渡す。
「こりゃ助かるわ。ありがとうね。」
そう言ってたえは秘書に礼をする。そして葉山に向けにやりと笑い、「良い秘書だね。」と言い残し、転移術式を発動させた。
* * *
「あぁ~、掃除掃除ー。だる。」
裕一は春雨寮の前で複数の術式を同時発動させながらぼやく。
裕一は今春雨寮に群がり始めた低級の怪異を纏めて掃討している所であった。
「やっぱ集まりすぎたなぁ。」
裕一は思う。低級の怪異は基本的に意志を持たず、霊力の強い方向に引き寄せられていく。
裕一、孤翁、精霊悪魔……とそういう世界に生きる存在が一つの寮に集まった事によって、低級怪異が軒並み引き寄せられてしまうスポットが出来上がる事となってしまった。
お陰で裕一は数日おきに怪異の処理を行う羽目に合っている。
「面倒くさいけど結界貼るかなぁ。」
怪異家はほぼ全ての家が結界を拠点に貼っている。それは一般人を立ち入らせないのみではなく、こういった低級怪異を寄せ付けないようにする意味もあった。
「裕一!!アイス食うか!?」
呑気に窓から外へ顔を出した狐が言う。
平和だなぁ、と裕一は思った。
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