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第35話 おしつけ

パワハラ上司裕一です。


 うーーん。どうするか。正直、戦力的には全然必要無いんだよなぁ……。





 俺は目の前で座る特A妖怪を見ながら思考する。確かに慣習的には大体の無力化した怪異は捕獲者自身に所有権がある事になっているが……。現状全く要らない。何なら邪魔とすら思える。廉に気付かれるリスクが高まるからな。



 

 そんな事を考えていたが、名案を思い付く。




 「たえ、ちょっと待ってくれ。今連れてくる。」




 裕一はそう言って転移術式を発動させる。




 暫しの間の後、裕一は寝間着姿の冬弥を連れたまま、たえの元へと転移術式を用いて戻ってくる。




 「ちょっと!?裕一さん!?何ですか!!!」



 冬弥は喚きながら抵抗するが裕一の力の前には為す術も無く術式から引きずり出される。冬弥の姿から察するに、寝ていた所を起こされたのだろう。余りにも不憫である。




 「特A、欲しいでしょ?」




 裕一は引きずり出された冬弥に言う。




 「え?どういう事ですか?」




 たえはこういった状況に慣れっこなのか、落ち着いた様子で裕一が土産として持ってきた羊羹を食べている。




 「朝早くからうちの馬鹿が申し訳ないね。この子を預かるかい?って事だ。」




 たえは裕一に助け船を出す。口下手な裕一の事だ。大方何も言わずに良いから来いと寝起きの冬弥に言って引きずってきたのだろうとたえは思う。そしてその予想はほぼ完璧に当たっている。

 



 冬弥は困惑しつつも、落ち着いたたえの様子に当てられてか、次第に冷静さを取り戻す。



 「ええ……と、裕一さん。一から説明してもらえますか?」



 冬弥は言う。




 「えぇーと、かくかくじかじかで……。」



 * * *



 「そうですか。そう言う経緯で私にこの妖怪を引き取らないか?と……。」




 裕一の説明によって状況を理解した冬弥が呟く。



 たえは裕一が口下手だと思っているが、たえ自身が弁が立つ事に加え、裕一ががさつな性格である事によってそう見えているだけである。本当は裕一は並程度には喋る事が出来る。




 「いやぁ……。正直私には荷が重い気がしますね……。」



 冬弥は渋い顔で答える。彼がそう考えるのも無理は無かった。




 「特A級ですもんね?最前線で戦っている訳ではない私にとっては、宝の持ち腐れと言いますか。勿体ないですよ。」



 そう。本来は特A級クラスの出力を持つ調整済みの怪異等、最前線で戦い続けるような場所に立つ者しか本来扱えないような代物である。



 それは、最前線で戦う者で無ければ特A級以上を討伐する事も殆ど存在し得ないことを意味する。


 怪異との戦いの道を選ばず、教職としての道を選んだ冬弥にとっては扱う機会も無いように思える。



 「いやいや、こいつは是非とも冬弥に預かって貰いたいんだよ。」



 そう言って裕一は食い下がる。実は誤討伐を防ぐための怪異の登録やその他諸々、煩雑な手続きを怪異の所有者は行わなくてはならない。



 そしてもう一つ、冬弥以外の人間に渡すと考慮した場合、宇喜田家の人間であればやはり当主、裕一の印。それ以外の家の者であれば怪異の性質などの綿密なすりあわせが必要となる。



 面倒くさがりな裕一が辿り着いた結論、それは分家というギリ宇喜田家では無い家に加え、大体話も分かってくれる冬弥に押し付ける事であった。




 「でも……。」




 「今後何があるか分からないだろう?こいつならお前よりも強いから身の回りが安全になるぞ。」




 そう言って裕一はダメ押しの一撃を加える。



 結局冬弥は押しに弱い為、「じゃ、じゃあ有難く……。」と特A怪異を引き取る事となった。


 

 



 

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