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第26話 交渉

野良猫を拾った子供と親の争いみたいな感じがします。



精霊にとどめを刺そうかとしたその瞬間、精霊を殺さないでほしいという懇願の声が聞こえる。




ひとまず手を止め、声の出所を探す……が。





 「あぁ、念話か。」




声の主は我々に向けて念話で話し掛けていた。

相手の波長を割り出し、応答する。





 『お前、市村京子か?』




 『え……、うん、そうだけど……?』





きょとんとした声で返答される。




 『こいつはお前の体を乗っ取り、奪い取ろうとしたんだぞ?』




 『ううん、違うの。この人は私の事を守ろうとしてくれていただけなの。』






 『京子か!!?無事か!!?』


動揺を隠しきれない吾郎が念話へと割り込んでくる。



 『おじいちゃ……え!?誰!!?』



あぁ、そうだった。術式を使って二人とも若返っているんだったな。




誰!?と言われた吾郎は嬉しいのか嬉しくないのか、複雑な顔をしている。




あれ?





という事は最初にわざわざ年寄りの頃の姿に戻って変装した意味無くなった?




 『あーーっ!?あなた裕一さんですね!?』



市村京子が念話で叫ぶ。




バレちゃったかぁ……。

記憶を消そうにもこいつは術式耐性が強いせいで消せない……。




うーーむ。




 『市村京子、お前念話使えたのか?』




 『念話って……?普通に声を出しているだけだよ?』




あっ、そうか。精霊憑依中の被憑依者の発意は念話みたいな感じになったりするような研究を前に家で見た気もする。




となると市村京子自身はやっぱり術式に関してズブの素人。



取り憑いている精霊を殺せば耐性も下がって洗脳術式を使えるか……?





 『お前、精霊がお前を守っていたってのはどういう事だ?』





 『最近になって、夢に精霊さんが現れるようになったの。それ以来少し嫌な事とか、怪我とかをすると、全部直ぐに解決するようになって……。』




 『対価を要求されるだろ?』



精霊は人の願いを叶える代わりに対価を要求する。


悪魔も人の願いの成就と引き換えに対価を要求するが、その違いは色々ある。

まぁ今は良いや。



 『うん。精霊さんが私に要求した対価は私の体の一部。といっても伸びた爪や、髪の毛です。』




 『へぇ。』



対価がそれっぱかりで許されるって事は、市村京子自身の体の霊的な格が高いという事だろうな。


流石は怪異家の孫娘って?




霊的な栄養たっぷり、怪異や精霊達にとっては大好物だ。沢山食えれば昨日のシドみないな進化染みた事すら起きる。





あぁ、これでほぼ決まってしまったな。市村京子自身、素の格が高いようじゃ精霊を殺したとしても術式耐性は高いままだろう。

お疲れ様でした。




 『今まで精霊さんと話していた記憶を忘れていたみたい。こうして同じ体の中に居て、初めて思い出したの。』





基本一般人なんか精霊と邂逅出来たとしても特殊な力で直ぐに忘れてしまう。大人になったら皆忘れてしまったあの出会い、みたいな感じである。皆そうだ。







 『私、この精霊さんと一緒に生きていきたいです。この精霊さんは本当はきっと優しい子。だからお願いです、この精霊さんを殺さないで下さい!!』




 『そうか。しかし精霊はいずれお前にもっと大きな対価を要求するようになる。ほぼ間違い無くな。対価が払えなくなれば死が待っている。』



一般人に精霊との契約は荷が重いだろう。

そもそも憑依すればSクラスの出力が出せる精霊を飼うなど、正気ではない。





可哀想だが、殺した方が良い。




後ろの吾郎に目配せすると、「全て任せます。」と言われた。




市村京子は言葉に詰まる。




 『あなたが……、あなたが私に精霊さんとの付き合い方を教えて!!詳しいんでしょ!!?』




 『はぁ?何で俺が。』



そう言うと市村京子は一瞬の思考の後、こう言った。




 『断るなら……私、あなたといつも一緒に居る廉君にあなたとの事、全部言っちゃうから!!』






馬鹿だなぁ。












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