第21話 精霊
よろしくお願いします。
side裕一
「冬弥先生……?何で……?」
驚きの声と共に襖の奥から私服姿の市村京子が出て来る。
あぁ、そうか。市村自身の興味でここまで来たが、元は失踪した市村京子の安否確認だったな。
「市村君。実は昨日の夜から寮生の子達が言うには君が何も言わずに居なくなったと。生徒を預かる身として保護者様に申し訳が立たないから必死で探してここまで来た……のだけども。ここは君の家かい?学校に提出された住所とは違うみたいだけども。」
冬弥は落ち着いた口調で市村京子に語り掛ける。さっきまでとんでもない慌てようだったってのにな。
「この家は……、おじいちゃんの家なんです。信じて貰えないかもしれませんが昨日変な声を聞いて、おじいちゃんはそういうのに詳しいから相談しに来たんです。連絡は……すいません!忘れちゃっていました。」
市村京子失踪の真相は連絡忘れか。
ふーん。
『じいちゃんはそういうのに詳しいって言っているけど、怪異家である事は伝えているのか?』
『いえ、ただ私の趣味だと伝えています。』
念話で市村吾郎に質問をする。
しかし昨日の今日で思い立ったら即行動。学校に連絡する事も忘れるとは……何だかイノシシみたいな奴だな。
昔一緒に仕事をした奴を思い出す。
「ところで冬弥先生……。横のおじさんは?」
この瞬間、市村京子のおじさん発言で部屋が一瞬にして緊張に包まれたが、当の本人は一切気にしていなかった。
「あぁ……この人は……。」
冬弥はなんて言おうかというこちらに縋るような目線で俺を見る。
「校長代理の村田だ。市村君の安否が取れて何よりだ。しかし無申告での外出は良くないな。成績の減点は回避できないだろう。」
良い感じに偉い人感を出しつつ演技をする。上手いだろう。
「それよりも昨日聞いたという変な声というのが興味深いな。どんな声だったのだね?」
偉いけど気さくなおじさん感を出しつつ聞いてみる。
正直俺の興味はこの声の正体へと移っていた。
まぁどうせ大方シドか洗脳術式のノイズだろうが……万が一?
「ええと、昨日色々あって昼寝みたいな事をしていた時、ずっと頭の中で『僕は君を守ったのだから対価をくれよ。』ってずっと聞こえていたんです。」
へぇ。予想が付いてきたなぁ。
「それは面白いね。」
『恐らくこいつには精霊が付いている。何も訓練させていないだろう?このままじゃ憑き殺されるぞ。』
念話を使い市村吾郎へ伝える。
『精霊と……。話には聞いた事は有りますが、私は存在を確認した事がありません……。何より京子に憑いているのなら私は気付いている筈。』
『精霊の出す波長は大体の怪異と波長が違いすぎるからな。気付けんのも無理は無い。』
市村吾郎は口をつぐむ。
そもそも念話だから口は関係ないのだが。
結界を解析した時に使った波長合わせ、そもそも波長とは霊的存在を感知するためのチャンネルのようなもの。
一般人と比べて怪異家は感知できる波長の幅が広いが、それでも多くの者は感知できる幅に限界がある。
まぁ人によって高音、低音が感知しにくかったりするようなものである。人にそれぞれ合う波長がある。
俺?これは自慢だけど今まで存在が確認されている波長には大体合わせられる。
低音から高音まで何でもござれだ。
という事を考えている間にほぼ100%の確率で市村に憑いているのが精霊であるという事を確認出来た。
人に憑く精霊と相対するのは五十年ぶり位かな?興味深い、少し話してみたい……。
そんな事を。考えながら精霊へと俺は波長を合わせていく。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします! していただけたら狂喜乱舞します。宜しくお願いします!




