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第19話 訪問

頑張ります。よろしくお願いします。


神奈川県鎌倉市某所。



人気の無い寂れた道路へと冬弥を連れて転移する。




 「うーーむ。確かに市村の反応はあるのだが、ぼやけてるなぁ。」





 「じゃあ結界の中、って事ですかね?」




 「多分そうだろうな。」




結界の中。つまり同業者の領域の中に市村京子が居るという事。

つまり奴は一般人では無いとほぼほぼ確定した訳だ。






同業者の家の人間ならまぁ、俺と廉の邪魔をわざわざしたりはしない……だろうが、まぁ何はともあれ乗り込んでみるか。




 「ちょっと待ってろ。今結界の位置を特定する。」




 「えっ、そんな事が出来るんですか?」





 「うん。」





一定の領域を魔物や、そもそも一般人には感知し得ないように結界を組む怪異家は多い。




我々の本拠地である京都の宇喜田家も一般人は辿り着けない。




要するに、冬弥が言いたいのは「感知させない事が目的の結界を感知しつつ侵入まで出来ちゃうんですか?」というお話だろう。




中々難しいが、実はコツさえ掴めてしまえば意外と出来るのである。

慣れって奴だな。




まずは結界術式の残り香を感じ取る。術式を貼った人間によって少しずつ霊力の波長が異なるので少しずつ波長を合わせていく。




感覚的にはラジオのチャンネルを合わせるような物。一瞬の波長が合う瞬間を見逃さないよう慎重に行う。




お、合った。




チャンネルさえ合ってしまえば後はチョロい物である。結界術式よりも出力の強い別の術式で結界術式を上書きする。




 「よしよしよしよし。乗っ取った。」





 「はや……。相変わらずいかれてますね。」





 「どうもどうも。じゃあ行こうか。あ、変装しなきゃだなぁ。」







 * * *



関東圏5本の指に入る怪異家、橋口家は朝から騒然としていた。





理由は怪異家の中で最も力があるとされている宇喜田家の電撃訪問である。




しかも宇喜田家現当主、宇喜田裕一の訪問であった為、橋口家の人間は皆一様に青ざめていた。




橋口家を更に恐れさせたのは〝訪問理由が全く分からない〟事であった。故に憶測が飛び交う。




心当たりは無いが何か気に障るような事をしてしまったのか。



ご当主様は何か不正を行っていた?




いっそ全てを投げ出してここから逃げ出すか。



いやいやそんな事をすれば間違いなく殺される。






橋口家の人間はバタバタと来客の用意をしながらそんな怒号を飛び交わせていた。





橋口家をこれ程までに震撼させている裕一本人はそんな事になっているとは露知らず通された客間でお茶を啜っていた。






 * * *



 「結構雰囲気の良い家だねぇ。そこの柱の木とか多分あそこのだろ?えーーと、何処だっけ名前、忘れちゃったなぁ。」



裕一さんはのんびりとお茶を啜りながら私に向かってそんな事を喋っている。



私は生きた心地がしない。

同業者とはいえ、ほぼ面識の無い怪異家にアポ無しで現在突撃しているのである。



私は一人反省する。




私が頼んだ事とはいえ、余りにも動かす人間がデカすぎた。




最近の若返った裕一さんを見ていたせいで心のどこかで裕一さんを軽んじていたのかもしれない。



私の目の前で今寛いでいる裕一さんは若返りの術式を解き、齢80過ぎの年老いた姿となっている。



年老いている筈なのに、感じ取る気配、立ち振る舞い、覇気。どれを取っても超一級。

まさしく何十年間も怪異家の圧倒的頂点として君臨し続けた人間の物である。



裕一さんは気付いていないのか、気付いた上で無視しているのかは分からないが、私が感知できる限り、今橋口家は壊滅的に正気を失っている。




来客が来ているというのに、静音術式の発動を忘れ皆の焦り声が微かに聞こえてくるのがその最たる根拠である。




無理もない。朝一のこんな時間帯にアポ無しでこんなバケモンが訪問してきたら誰だってこうなる。



あぁ、申し訳ない事をした。今度菓子折を持っていって謝罪しよう……。



そんな事を冬弥が考えている間に横の襖が開き、奥から和服を着た齢60程の者が出てくる。




直ぐに緊張感が漂う。この人も強い。裕一さん程の覇気は無いが、十分に経験を積んだ人間のそれと分かる立ち振る舞いである。



襖を開けた男は名乗る。



 「橋口家現当主、橋口吾郎に御座る。裕一様。今回はどのような要件でのご訪問で……。」






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