第15話 不憫
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市村京子、と名乗った女子生徒へと顔を向ける。
「ええと、京子ちゃん?俺に話を聞きたいんだっけ。良いよ。」
すると市村京子の顔がぱぁっと明るくなる。
「ありがとうございます!じゃあ……そうですね、近くの喫茶店とかでお話聞かせて下さい!!」
「分かった。」
「あ……冬弥先生、と裕一君のおばあちゃんも来ますか?」
変な気遣いをしたのか市村京子は後ろの二人にも声を掛ける。
二人ともふるふると首を振り断る。
二人が居た方がやりにくい事を分かってくれているのだろう。
「じゃあ……行きますか!!」
* * *
喫茶店「黒」
日中であるが客は少なく、暗すぎず明るすぎない、そんな落ち着いた雰囲気のある喫茶店である。
京子に手を引かれるまま入ったのがこの喫茶店である。
「それじゃあ改めまして、一年、新聞部の市村京子と言います。今日はお時間頂きありがとうございます。」
「一年の宇喜田裕一だ。よろしく。」
ここで会話する事で市村の情報を得る。
何故洗脳術式が効かないのか。
俺に話し掛ける目的は?
もしも俺の平穏な生活の邪魔をするつもりなら……。
ちょっとばかし怖い目に遭ってもらう。
「私!!あなたのソフトボール投げを見たの!!皆はただただ凄い凄い!!って言っていただけだけど、それで片付く話じゃないよね。オリンピック選手だってあんなに飛ばせないもの。」
「何の事?ソフトボール投げなら、俺は平均より少し飛んだくらいだった。」
市村京子は何を言っているのか分からないという顔をしている。
「どうしてそんなバレバレの嘘を吐くの?」
「嘘じゃない。気のせいだろう。同級生に電話して聞いてみれば良い。」
「だって私はこの目で見て。」
「良いから電話してみろ。」
市村京子は携帯を取り出し、同級生へと電話する。
「うん……うん……。ありがと。」
何度かのやり取りの後、市村は電話を切り俺へと向き直る。
「一体何をしたの……?あの子は私に嘘なんて吐けるほど器用じゃないし……。私はこの目ではっきりとあなたの投球を見た……。」
市村京子は困惑する。
このままただの記憶違いとして処理してくれれば楽なのだが……。
「それで、仮に俺がそんなにボールを飛ばしていたとして、どうしたかったんだ?」
「私は……新聞部として大スクープを持ってきたかっただけなんです。ごめんなさい。何か勘違いしてしまっていたみたい。昔から思い込みが激しいの。」
わたわたと動揺を隠せないまま手を振り、コーヒー代を置いて帰ろうとする。
帰らせない。
洗脳術式を無意識に無効化出来る耐性を持つ人間だ。まだ聞かなきゃいけない事がある。
どうやって聞くか……。
今まで一般人に物を聞く時は洗脳術式で何とかなった。
同業者や怪異には力尽くで対応出来た。
洗脳術式に対応できてしまう一般人にはどうすれば良いんだ…。
久しぶりに己の無力さを感じる。
今にも市村京子は混乱したまま帰ろうとしている。
正直ここで逃しても今すぐには害にならない。
けれども、何かの拍子に俺と廉の平穏な生活の邪魔になるかもしれない。不安要素は取り除く。
思案していると違和感を感じる。
喫茶店入り口、裏口、窓に防壁術式。
いつの間にか俺達以外の客は居なくなっている。
店員は1、2……3人。
全員厨房で倒れている。
「あっ!?あれ!!?扉が開かないんですがーーっ!!?」
市村京子はドアノブをガチャガチャとしながら喚いている。
というかよくよく見たら誰かが貼った防壁術式すら解除しかけてるな。
あいつ本当に何者だ。
あとその扉は引き戸だ。
術式無くってもそれじゃ開かないぞ。
「開きませんーーっ!?ひぅっ?」
喚いていた市村京子はその場で昏倒する。
「うーむ。誰だ?」
椅子に座り、出されたままのコーヒーを飲みながら呟く。
コーヒーは鑑定術式を掛け、安全を確認してある。
こういう何者かに攻撃されていると思われる時は余裕を保ってみせる方が経験上良い。
喚きながらドアノブをガチャガチャするなんて論外だ。
待っていれば自ずと敵は姿を現す。
「おや……。余裕そうだねぇ。」
そう言いながら厨房奥から和服に身を包み、頭に角を生やした悪魔が出て来た。
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