第99話 再戦
ウチャラ!
「は?え?」
男は国沈の生み出した亜空間術式のような物に半身を囚われ、抵抗も敵わぬままその身を捻じ切られる。
「俺は神だぞ!おい!!」
今にもその胴が二つに泣きわかれしようという中、男は国沈へと激昂する。
「つまらん奴だ。ちいと神もどきに成り上がれたからといって己の力を過信したな。我と貴様でどれ程差があると思っておる。もう良い。貴様は消えろ。」
国沈がそう言った直後、男の身は完全に亜空間術式に取り込まれ、その場から消滅する。
「おい、あいつを何処にやったんだ?」
裕一は国沈を嗜めるでもなく、純粋な興味といった様子で国沈に問う。
「死んではおらぬ。我の作り出した永遠に続く虚無の空間に放り込んでやったわ。しばらく、そうだな。万年程の時を一人で過ごさせて反省させてやるわ。」
国沈はそう言うと邪悪そのもの、といった表情を浮かべ、からからとした笑い声を上げる。文句なしの邪神っぷりを発揮する国沈を周囲で見ていた裕一を除く宇喜田家メンバー一同はドン引きの表情を浮かべていたという。
「さて、裕一よ。互いに折角外に出る事が出来たのだ。一戦交えようではないか。あの空間とは異なり、血も肉も直ぐには治らぬこの世界で。」
国沈は裕一を向き、うずうずとした様子で裕一を誘う。
「確かに外界に出たとはいえ、この空間なら周囲に被害は出ないか。」
裕一は周囲を見てそう言う。
裕一達が居るこの空間はもともと怪異家達の大会用に構築された特殊な異空間。現実とはちょっとだけズレた世界であり、一般の民間人には感知し得ない世界であった。加えてさらに現在は国沈の神域でもある。空間を赤黒い空や光を伴う物に塗り替えるこの国沈の能力によって、現在ここは二重に結界が張られていると言える超堅牢な空間となっていた。
「あっ、じゃあ私達一回外出るわ。」
たえは戦いを始めようといった雰囲気を醸し出し始める裕一達を見て、しれーっと目立たず、かつ明確に離脱宣言を行う。
なんだかんだ、国沈に面倒な絡み方をされずに一刻も早く安全な空間を目指すべく、この場を抜けるにはたえの動きはかなり理想型であった。
「おお、そうか。では貴様らは外界へ送り出してやるとしようか。」
裕一と戦える事に機嫌を良くした国沈はそう言うと何かの術式を詠唱し、たえたち一行をドーム状の亜空間に包み込み元の世界へ送り届ける。
「よし、全員もとの世界へ返したぞ。さぁ、戦おうではないか。」
国沈はそう言うとニコニコとしながら己の身体に強化系術式を掛けはじめる。
裕一と共に居た長い時の間、国沈は裕一の使う技術を学び取っていた。
「裕一よ。繊細な戦闘テクニックは最早貴様だけの物ではない。我が学び取ったこの技術をもって貴様を打ち砕いてやろうではないか!」
「馬鹿を言え。お前みたいな雑な戦い方をする奴に学び取れるような事なんて基礎程度の技術だわ。」
裕一は国沈の啖呵を聞き、嬉しそうに煽り返す。なんだかんだ裕一も国沈との戦いを楽しんでいたのだった。
「どりゃっ!あの時は見せていなかった技だ!どうだ!」
国沈は微塵も素振りを見せていなかった段階から瞬時に弓矢を放つかのような動作と共に遠距離の攻撃系術式を発動する。
「動作を表現する事である程度詠唱を短縮化させる事が出来る事に最近気付いてな。」
「そうか。」
裕一は国沈の放った術式を防御系術式で防ぎつつ言う。
「負けても泣くなよ。ぼっこぼこにしてやるわ。」
裕一はそう言うと強化系術式と爆発術式、転移術式を同時に詠唱し尋常ではない速度で国沈へ距離を詰める。
二発目の遠距離攻撃系術式を放とうと用意していた国沈は不意を突かれ距離を取る間もなく懐に飛び込んできた裕一の爆発術式をもろに喰らう。
「がぁっ!良いぞっ!この距離ならっ!!」
国沈は爆発術式と共に殴り飛ばされつつも、殴り飛ばされた事によって発生した間合いを利用し、己の最も得意とも言える術式、亜空間術式を発動する。
「見切ってんだよ!!」
裕一はそう叫ぶと己を取り囲むかのように発生した亜空間術式へ全方向に同時に複数の転移術式をぶつける事で相殺する。
「ふはははははは!!知らなかったぞ!!そんな回避方法があったのだな!!」
国沈は裕一が回避した直後、一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、直ぐに驚きの感情と共に笑みを浮かべた。
国沈はたった今まで己の放つ亜空間術式を回避する方法があるとは思ってもみなかった。実際、発動まで持ち込んだ上で回避してきた存在は裕一が初めてである。
亜空間術式に囚われた上で、裕一であればゴリ押しか新たな手法かでそこから再度態勢を立て直してくるのだろうと思っていた国沈の考えはいともあっさりと裕一の手によって覆される事となった。
「ほら!!休んでんじゃねぇよ!!」
一瞬、裕一の神業ともいえる所業に見とれていた国沈は相殺直後に既に動き出していた裕一の挙動に遅れをとる。
二、三発と集中的に腹へと裕一の重たい術式の乗った格闘術を喰らった国沈は「げふ。」といった音を立てて膝を付く。
裕一は既に神性のある術式を自らの物と言える程に使いこなしており、裕一の放つ術式は対国沈へと圧倒的な適性を示していたのだった。
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