プロローグ4
「っと、まぁこんな感じで私が乗ることが引き金になって発動する『陣形魔術』とその中でもわりとメジャーなポイントとポイントを繋いで一瞬で目的地に移動する『転移魔術』でした。」
クロエが説明している横で染は茂みの中でで吐いていた。
「情けないわね。」
「こんなの何度もしてたら死んじまう。」
「そう。じゃあ死ぬ前にガンガン使ってあげるから覚悟しなさい。」
そう言うと、クロエは指を指す。
指を指した先には灯りが見える。
茂みの影からこっそりと覗くと立派な異国の建物が並ぶ街だった。
その街の中の中心にある大きな城を指差す。
「あそこに貴方のお姫様が囚われてます。」
「そうか、で?」
「ん?」
クロエはキョトンとしている。
「俺にどうしろと?」
「硬いことは無しよ。正面からあそこを潰して。」
ふざけながらの口調ではあったが冗談ではないのが声質で分かった。
「邪魔するやつを斬って斬って斬りまくってくれればそれでいいわ。」
「さっきあんた計画は計画的に行うって言ってなかったっけか?」
「言ったかもね。なるべくド派手に。やってくれるとありがたいわ。それこそこの国の歴史に語られるような大惨事を起こしてもらえると嬉しいわね。」
染は気づく、声質は変わらないがそのクロエの言葉から明らかな憎しみが籠もっていること。
そして、おそらく憎しみの矛先はこの目の前にある城ではないこと。
もっと大きなものを相手にしていること。
「約束は守れ。」
そう言うと、染は立ち上がる。そして背中に担いでいた荷物を解き、クロエに差し出す。
「なにこれ?」
「大切なものだ。預かっててくれ。地面に置いたりするなよ。」
クロエにその荷を渡すと同時にクロエの背中に寒気が走る。
すぐに染の顔を見る。
そこには先程まで吐いていた顔を青くした男はおらず牙をむき出しにして、獲物を狙う獣の姿があった。
染が街へ入る門へ向かい一人になったクロエの耳元にザーっと『ノイズ』が走る。その直後に音声が響き渡る。
「彼はどうですか?」
その問いに答える前に門の兵士が二人倒れる。
「全く、斬って斬って斬りまくれって言ったのに……」
染が刀を抜いていないのを見てクロエは文句を言う。
「聞いてますか?」
再び耳元に声がする。
「ええ。今、門番を倒してそっちに向かってるわ。」
「そうですか。」
「あのさ、」
「どうしました?」
「やっぱり女の方だけでいいんじゃないの?」
「と、言いますと?」
「あの侍は危険よ。やはりここで消えてもらうかそのまま本丸に攻めてもらうのがいいと思うわ。」
「貴方先程彼に言ったではありませんか。」
「?」
「戦力が欲しいと。」
「あら、やっぱり聞こえてたのね。」
「彼は戦力になりますよ。」
クロエは黙る。
それを察した男は続ける。
「まぁですが時間もおしていることではありますので当初の計画通り、彼にはここで消えてもらうように手筈は整えております。それでもなお、彼が生き残ったのであればその時に考えましょう。」
そう言うと、クロエの耳元でブツッと音声が途絶える。
「いけ好かないわね。」
そんな文句を一言ついた。
そして、染から預かった荷物を解いて見る。
何重にも風呂敷で包まれている小さな壺が出てくる。
「流石に蓋を開けるのは無粋ね。」




