結月の一息
「ただいま。」
「おかえりなさい。ん、そちらさんは?」
「小学校の時の同級生。足湯カフェに来たかったんだって。」
結月が戻るとミツハは真緒のマッサージを終え受付にいた。
結月が知り合いと戻るとフリードが二人の前に颯爽と現れる。
「お嬢さんお名前は?」
「え、えっと高岡佳奈です。」
「ようこそ。」
と言い、いつの間にか手を握ってる。
「結月ちゃん。せっかくだから休憩入ってその子と足湯浸かってきな。飲み物も好きなの飲んでいいから。」
と、フリードを引き剥がしながらミツハは言う。
「え、いいの?」
「積もる話もあるだろうし、お客さん増えたらフリードに働かせるから、ちょっとゆっくりしてきな。」
「僕にはなんの断りも無しなのかいマイフレンド?」
「じゃあそのフレンドのために汗水流してくれ。」
と言い、フリードを引っ張ってミツハも下がる。
ミツハとフリードがいなくなると結月と佳奈は話し始める。
「結月、あの人たちは誰なの?」
「施設の身元を引き受けてくれた人の知り合い。あの金髪の人はわりと最近知り合ったんだ。」
「そっか……やっぱり施設に。」
「まぁ身内が一人もいないしね。」
「そうだよね……」
「私の方こそお別れ言えずでごめんね。」
「それはいいよ……大変なのは結月なんだし。」
なかなか話題が暗い方から出てこれない。
「せっかく久しぶりに佳奈に会えたんだから、暗い話はやめよ。確かに家族のことは悲しいけど今はだいぶ吹っ切れてるし、そんなマイナスになれるほど暇でもないしさ。」
満面の笑顔を佳奈に見せる。それを見て佳奈も笑顔になる。
「じゃあ、あの人たちのこと教えてよ。」
「え、さっきも言ったとおりだよ。身元を引き受けてくれた人の知り合いだって。」
「いいや、あのチビスケはなんか怪しいね。」
受付の方からクシャミが聞こえる。
「チビスケ?ミツハ君のこと?彼は二歳年下の子で今マンションで預かってるけど……」
その一言を言った瞬間にマズイと結月は察するが佳奈の反応のほうが早かった。
「とうとう吐いたね。やるね〜男と同棲か。このスケベ女!!」
「そんなんじゃないから。」
先程と打って変わって楽しそうな雰囲気になりお互いの間にあった壁のようなものは無くなっていた。
ひとしきり話した後、佳奈は帰宅することになり、結月はお見送りをする。
「結月、番号交換しとこ。また話ししたいし。」
「うん。でもまた茶化すならブロックするからね。」
「まぁまぁ。そんな拗ねなさんな。また来るね。」
「まぁ……うん。」
少し照れくさい表情を浮かべながら結月は見送る。
ミツハとフリードが締め作業をしている所に結月も戻り、
「ありがとうね。おかげで楽しかった。」
と一言だけ言ってソプラの元に片付けの手伝いをしに戻る。
その姿をほんのり笑顔で見つめる。
所変わって異世界。
王国内にて。
「やはり。先の異世界探索が失敗したのは痛い。」
王様が言う。
「確かに大きな痛手でございます。」
位の高そうなおそらく側近の者が王の言葉に返答する。
「だが、失敗したからこそ余計に彼らの国が欲しくなった。なるべく早くに次の部隊を送れ。」
失敗したこと、ソウヤを失ったこと以上に文明の高い異世界のことを考え、そのイメージが王を酔わせている。その姿はさながらおもちゃを買ってもらった子どものようだった。
「ですが召喚の儀式には多大なる魔力が必要ゆえ。次の儀式は今しばらくお待ちくださいませ。」
「ほう。王である余に待てと申すか?」
先程までの酔いしれた顔から急に目つきが鋭くなる。その眼光に側近の者は恐れ這いつくばる。
「いえ。滅相もございません。王を待たせるなどと。」
「なんのためにあの薄汚いモンスター共を狩らせていると思っている?素材など二の次、奴らの持つ膨大なエネルギーであろう?」
「その通りでございます。」
「もっとハンターたちにモンスター、幻獣、魔物を狩らせろ。あとは足りない動力は罪人、ゴロツキ、病人色々なところからかき集めろ!!
それでも足りないならば分かっているであろう?」
「すぐに手配いたします。」
急いで扉から出ていこうとすると王が呼び止める。
「くれぐれもタカヤとミカには伝えるな。あの二人まで行くとゴネられたら色々と面倒だからな。」