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ケガレナキアイ  作者: 秋栗実
16/17

稽古の後



 フリードたちが来てから一週間が経過し、伊勢じい宅格技場にてフリードとミツハはお互いに真剣で立ち合いをしていた。

 文字通り『真剣』を使っての実践的な立ち合いだ。金属のぶつかる音が格技場内に響き渡る。


 次第に立ち合いはエスカレートしていき前回の戦闘同様に激しさを増していく。剣だけの撃ち合いからなんでもありのガチバトルになりつつあった。

 フリードは自分の右腕のみをを部分的に変形させ大砲を作り、光弾を撃ち込む。

 対してミツハは狭い空間の中を飛び跳ねるように縦横無尽に駆け回り光弾をかわす。

 背後を取り、しっかりと踏み込み一撃を入れるが背中の形状が変化しハリネズミのように剣が伸びる。

 その剣がミツハを捉える前に後ろに下がるがそのまま剣は伸びてミツハに襲いかかる。

 無数の破壊音とともに格技場が破壊され伸びた剣が貫通する。

 だがその剣はミツハを貫くことはなかった。

 ホコリが晴れると髪の毛のみ変化を解いたミツハがおり、その白い髪の毛が格子状になって剣を防いでいた。

 まだお互いの集中は解かれておらず剣を握り直し、お互いに相手に飛びかかろうとする。


 「それまで。」


 その声があとわずかでも遅ければ両者飛びかかっていただろう。お互いに我にかえり、剣をおさめる。


 「良い調子ではないか。」


 「儂の家はそうはいきませんけどな。」


 真緒は嬉しそうで伊勢じいは少し切なそうだった。


 「なぁ、なんで俺はどっかに閉じ込めたりしないんだよ。」


 端っこの方にいたソウヤは少し不機嫌そうに言う。


 「何処かにぶち込んでほしいのか?」


 「ちげぇよ!!だけどよお前ら甘いんじゃねえの?一応俺は敵だぞ。」


 「お前は少し根性がひん曲がってるだけで完全な悪人ってわけでも無さそうだからの。まぁソプラの魅了の効果で行動には制限させてもらってるがの。」


 「せめてスマホは使わせろよ!!電子機器に触れられなくするのは拷問だろ!!ゲームやらせろ!!」ソプラの魅了には魅了している間にある程度の暗示をかけることでそれが脳が覚えていることで常時魅了していなくても行動の制限が出来るらしい。それもこの世界で身につけたとか。


 「じゃあソウヤ君はミノ君と一緒に破壊された格技場の掃除と修理じゃね。」


 ここでようやく伊勢じいが口を開く。


 「なんで俺が?壊したのそいつだろ?」


 納得いかない表情でソウヤはフリードを指さす。


 「フリード君を作ったのは?」


 「……」


 「そう。君じゃ。いわば君がフリード君のお父さんってことじゃ。ということは息子の責任は?」


 「……」


 「そう!!親である君の責任でもある。」


 満面の笑顔で伊勢じいは言う。そして真顔になり、


 「君がご家族とどのように接してきたのかは分からんけど、君が生きてきた中でご家族も君のしでかしたことに何かしらの責任は取ってきたはずじゃ。だからの……」


 といった後、また笑顔に戻り、


 「ここにいる間にそのひん曲がった根性をしっかりと叩き直してやるからの。」


 と言う。


 「お疲れさん。」


 「よろしくパパ!!」


 と言ってミツハとフリードは肩を叩く。


 声にならない叫びをあげるソウヤを置いてミツハ、フリード、真緒は出ていく。


 「そういえば、ミツハの剣術を何処かで見たことがあるような気がするよ。」


 「え?」


 フリードの一言で一同は止まる。


 「僕が人間のだった時、モンスターの大規模討伐があって冒険者、騎士、賞金稼ぎなど至る所から集まったことがあってね。その中のサムライが同じ様な動きをしていたのを思い出したよ。」


 「そうなんか。その侍の名前と顔は?」


 「そこまでは覚えていないんだが。」


 「なんでや。」


 「まぁ、少しでも手がかりが見つかったならよしとするしか無いじゃろ。」


 三人でそんな話をしていると玄関へ着く。


 「そういえば、フリード。ここにとどまる以上お前とメイドたちも働き口を探さないといかんぞ。」


 「じゃあミツハ君のところで。」


 「間に合ってる。」


 「まぁ詳しいことは竜泉郷行ってからじゃな。」


 「そうですね。」


 「金は取りますよ。ってかお前は風呂入って大丈夫なんか?」


 「問題ないさ、マイフレンド!!僕もメイドたちも防水だし、この皮膚も人間の皮膚にとても近い特殊繊維だからね。」




 竜泉郷について風呂からあがったフリードはぐったりしており、真緒はミツハからマッサージを受けていた。


 「気持ちいいのぉ〜。極楽じゃ。」


 「体内の水の流れがよく見えるんでどこが凝り固まってるとかよく分かるようになりました。おかげで爺さん、婆さんのお客も増えましたよ。」


 「竜神様々じゃな。」


 「ミツハ。女湯を覗くことは出来ないのかい?」


 唐突なフリードの質問だった。


 「お前ほんとに元騎士団長か?」


 「もちろんさ。ところでどうなんだい?質問の答えは。」


 「NOだ。ウチの覗き防止セキュリティはセ○ムも安心レベルだから変なこと考えんなよ。」


 「それは残念だ。」


 フリードはしばらく無言になって、和服姿で接客してる結月を見つめる。


 「結月さんもメイド似合うと思うよね。」


 「似合う。絶対に似合う。似合うのは分かっているけどダメ。結月ちゃんは和服。これ絶対。」


 言い終わると同時に間髪入れずに力強く言う。


 「メイド喫茶にしようかな。僕の仕事。」


 「「古っ。」」


 フリードの提案にミツハと真緒は同時に反応する。


 「ここでは足湯カフェもやってるから微妙に被ってるじゃろうが。」


 「今のロングスカートもいいけどもう少し露出を多くして若い層をターゲットにしてさどう思う?」


 「メイド喫茶そのものについて言ってるんだバカチンが。

 それに露出を増やせば客が来るとは限らないだろうが。

 最近のマンガや、アニメとかもそうだ。露出を求めすぎている。隠れているからこそ尊いものというものがある。」


 「君の感性はだいぶおっさんな感じだね。君ぐらいだったらもっと自分の趣くまま、気の向くままエロに一直線でもいいと思うけどね。」


 「覗きだ、露出だ言ってるお前の感性こそおっさんだろ。一歩間違えれば豚箱行きだぞ。」


 そんな会話を白竜と魔王と変態騎士団長が話していると、結月がこちらに来る。


 「ミツハ君。ごめん。今少しお客さん落ち着いたからオレンジジュース買いに行ってくるね。あと諸々消耗品も。」


 「オレンジジュースがないのは我にとっても一大事じゃ。」


 「おっけー。店番はしておくから車に気をつけてね。お金は渡してある小口から使ってね。」


 

 結月は出ていき、スーパーへ向かう。


 スーパーで買い物をしながら結月はミツハのことを考えていた。


 「だいぶ人付き合いも出来るようになってきたし、友達も増えてきてるみたいだし。私よりも充実してる。」


 そんなことを考えながら微笑んでいた。


 レジに並び馴染みの人から声をかけられる。


 「あら~結月ちゃん買い物?」


 「あ、どうもお世話になってます。」

 

 「な~に言ってんの。お世話になってるのはこっちよ。あの銭湯が出来てウチのお爺ちゃんも助かってるんだから。」


 「いえいえ。私なんて……」


 「可愛い子に接客されて幸せそうで当分死にそうにないわ(笑)」


 そんな会話を何人かの人としたあとにスーパーを後にする。


 「結月?」


 声をかけられて後ろを振り返る。栗色のふわっとしたボブヘアーの女性が立っていた。

 見たところ女子高生ぐらいの年齢だった。


 「えっと……どちら様?」


 その女子高生は近づいてくる。そして、和服の左胸についた名札の『藍花』という名字を見て確信に変わり表情がみるみる笑顔になってくる。


 「やっぱり結月だ。久しぶり。」


 「?」


 「覚えてないかな?佳奈だよ。高岡佳奈(タカオカカナ)小学生の頃一緒だった。」


 その名前を聞いて結月も思い出す。


 「佳奈ちゃん?」


 「も〜。佳奈でいいよ。久しぶりだね。ご家族の葬儀以来……」


 話を続けようとする佳奈の声から元気がなくなってくる。それを察し、


 「いいよ。気にしなくて。葬儀以来だね。ごめんね。何も言えずにお別れになって。」


 「それはいいよ。また会えたんだから。」


 少しだけ彼女にまた笑顔が戻ってきた。


 「佳奈ちゃ……えっと、佳奈は元気そうだね。」


 今度は結月から話しかける。


 「うん。まぁ……普通に女子高生してる感じかな。結月は?どこの高校に通ってるの?」


 「ごめん。私通信制だから高校通ってはいないんだ。」


 「ごめん……」


 「ホントに気にしないで。それよりこんなところでどうしたの?」


 「そうそう、この辺に竜泉郷っていう銭湯があって、足湯カフェあるっていうから来てみたんだよね。口コミもいい感じだし。」

 

 佳奈も話題を変えようとしている。


 「そこ、私のバイト先だ。この先だよ。案内しよっか?」


 「いいの?」


 「買い出しから戻る所だし。」


 「じゃあ、ついていこっかなー。」


 二人は雑談をしながら竜泉郷へ向かう。

 


 本文に乗っていない細かな設定


○フリード•ジークベルト

騎兵(ゴーレム)

金髪イケメン。メイド姿をこよなく愛する。

騎兵(ゴーレム)に魂が移される前はとても真面目な性格だったらしいが転生の影響もあり以前より少し違う性格になった。


○ヘレン

機械人形(オートマタ)

武装給仕(バスターメイデン)の一人。

前髪パッツン黒髪ストレート。口数は少ないが表情は豊かで分かりやすい。あまりにも不快な時はあからさまに嫌な顔もする。


○ドロシー

機械人形(オートマタ)

武装給仕(バスターメイデン)の一人。

後ろをひとまとめにした長めの茶髪。冷静。ネーミングセンスが少しズレている。


○ヒルダ

機械人形(オートマタ)

武装給仕(バスターメイデン)の一人。

銀髪ショート。目つきは鋭い。かなり不器用。


○レベッカ

機械人形(オートマタ)

武装給仕(バスターメイデン)の一人。

赤みの強い茶髪のミディアム。いつも「ふふふ」と笑っており掴みどころがない。目は細く、線目に近い。


○エリーゼ

機械人形(オートマタ)

武装給仕(バスターメイデン)の一人。

金髪ツインテール。目はぱっちりとしており元気。ノリもよく誰からも可愛がられる。誰に対しても「様」をつけ敬語もちゃんと使う。


高岡佳奈(タカオカカナ)

結月とは小学校の同級生。髪型は栗色のグラデーションオングラデーションボブ。

クールに見えるがわりと気さくで少しミステリアスなところもある。



 追加設定


○ミツハ

感性がおっさんっぽい。

髪の毛の毛先のみ白のグラデーションが出来ている。結月に対しては「イメチェン」で通してある。

•能力

《白髪硬化》

正確に言えば元々竜のたてがみは硬くゆらゆら自在に動かせており、部分的に変化を解いた形になっている。蜘蛛の巣のように張り巡らせたり、束ねてガード、攻撃など出来る。

《水を司る者》

水流の操作、水の浄化、水の汚染などができる。そこから毒の生成もできる。

目が見えなくても水の動き、体内の水分の動きなどで相手の動きを見切ることも出来る。これにより相手の健康状態が分かる。


○フリード

•能力

《部分変形》

自身の体を部分的に変形させる。腕を大砲に変形させたり出来るがあくまでも自身の体、その近くの材料による変形のため質量は制限される。火薬などは作れないためエネルギーをビー厶弾のように発射する。

駆動などにもエネルギーは使うので弾ばかりに消費できないため現状三発まで。

あらかじめ弾を持っていればそれを使うことも可。


○ソプラ

•能力

《魅了による暗示》

魅了している間にある程度の暗示をかけることでそれが脳が覚えていることで常時魅了していなくても行動の制限が出来る。一種の洗脳でもある。

これによりソウヤは電子機器に触れられないようになっている。

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