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ケガレナキアイ  作者: 秋栗実
10/17

初陣前


 ミツハは、「竜泉郷は今日は夜は臨時休業にして集合。」という真緒からの連絡を受け今まさに状況の説明を受けているところだった。


 「と、言うわけじゃ。だからミツハお前も手伝え。」


 「この後に敵が攻めて来るのはわかりましたけど。その電話、だいぶ胡散臭くないですか?」


 「まぁの。それは我も重々承知の上じゃ。だが、現にあいつの情報は正確での。」


 「もしかして、前に俺が襲われた時も?」


 「ああ。そん時は当日の何時間後って急じゃったがの。」


 「確かに。助けられた直後じゃにわかには信じられませんでしたわ。今、こっちに順応したからこそって感じですね。

 で、俺と誰が行くんですか?」


 「ミツハと我とソプラで行く。」


 「来るの手練れでしよ?三人で対応できますかい?」


 「人数もわからんし手練だからこそ少数精鋭というやつじゃ。それこそ主力全員で行って別動隊がいたら話にならんからの。最悪、本来の姿で戦うことも視野に入れておけ。」


 「わかりました。じゃあ、結月ちゃんに遅くなること伝えときますわ。」


 「何じゃ。律儀な奴じゃの。白竜クラミツハともあろうものが人間の女に飼い殺しか?」


 「コミュニケーション、挨拶、礼儀、約束、これ大事!!」


 そのやり取りを聞いて伊勢じいは「あんなにビクビクしていたのに調子のいい」と思ってはいたが口に出すのを止めた。


 伊勢じい宅の廊下に出て電話をする。


 「もしもし、結月ちゃん?」


 「ミツハ君?どうしたの?」


 「今日ちょっと帰り遅くなる。」


 「何時ぐらい?」


 「分かんないけど、ご飯は帰ってから食べる。」


 「分かった。気をつけてね。」


 「そんじゃ、また後で。」


 電話を切るとその後ろに真緒が立っていた。


 「ミツハ。」


 「なんです?真緒さん?」


 「お前は、結月と自分のことだけ考えてろ。」


 「急にどうしたんです?」


 「『あっち』の奴らが『こっち』に先兵を送るってことは遅かれ早かれいずれ本隊も来るはずじゃ。

 そうなると、結月にも危険が迫ることになる。

 お前はあの娘を優先して守れ。そしてあの娘を守るためにお前自身も守れ。」


 「急に深刻な話ですね。正直、それはなんとも言えないですよ。

 もちろん結月ちゃんは大事です。かけがえがないです。尊いです。」


 「ベタ褒めじゃな。」


 「でも、それと同じぐらい皆にも恩がある。優先順位を決めることはなかなか難しいです。

 相手を殺すことで仲間の一人が助かるなら他から恨まれようが殺します。

 でも、仲間の命だけは天秤にかけられない。そうなったときは俺の全能力を使ってても全てを救います。仮に俺が死ぬことになっても。」


 真緒も無言で聞く。


 「まぁ、正直な話今はなんとも言えないですよ。そもそも皆強いですしね。俺が守るなんて生意気なこと言わなくても。」


 今言えるのはこれぐらいと少し引きつった作り笑いをして真緒の方を向く。


 真緒はその顔を見てクスッと笑いながら、


 「笑い方が下手くそじゃ。気味が悪いわ。」


 「え、マジっすか。練習してるんですけどね。」


 「練習不足じゃ。もっと精進しろばかちんが。」


 少し談笑した後に、一振りの刀をミツハに渡す。


 「この刀は?」


 鞘から柄まで白い刀。鞘から抜くと波打つ刃紋が美しい。


 「ミツハを助け、戻る際にミツハの鱗を拾っていての。

 その鱗を叩き、鍛え上げた刀じゃ。鍛えたのはミノの奴じゃが。

 すまんの出来上がるのに時間がかかって振る練習も出来ずぶっつけ本番だが。」


 「ありがとうございます。」


 「行くぞ。」


 「了解。」


 いつの間にかソプラも真緒の後ろにいて三人で現場に向かう。


 



 


 本文に載っていない細かな設定。


○クラミツハの刀

 白い鞘に下緒は緑。

 刀身は乱れ刃。

 鍔は銀色で柄巻は白。縁と頭、目貫は黒。

 白竜の鱗が使われており切れ味もさることながら強度が高い。刀身から霊力というエネルギーが発生し纏っているため悪霊、怨霊、悪魔、呪いなどにはめっぽう強い。

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