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ARCADIA BLUES.  作者: 那樹聖一
ナギア編
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短編章 必殺技を叫ぶ意味て何?

 タイタンの襲撃前のある日のこと。ミホノとティルナシアはカラティナ孤児院でルーデルワイスの手伝いをしていた。初めて手伝いをした時からも積極的に手伝いに参加したおかげか、子どもとの接し方や、一人一人の個性を理解してきていた。今はミホノの必殺技シリーズこと『ミホノスペシャル』というものを見せようとしていた。


「行きますよ皆さん。必殺!きりもみ炎キーック!」


ツインターボで空中へ飛びあがり、足にともした炎を体を回転させることで炎の渦を発生させ、地上へ勢いよく着地する。この技一つとってもミホノの身体能力の高さやツインターボを操作する技量の高さが伺える。二つのバーニアを駆使したきりもみなど危険だ。しかし彼女は何の躊躇もなくできるのは彼女の技量や素質が高いからだろう。しかし……


「すごいけど名前かっこ悪―い!」


「な、なんですと!ではこれならどうですか。必殺!電撃ィキーック!チャフスペシャル!」


何と言ってもミホノはネーミングセンスが圧倒的に悪い。しかしネーミングセンスを除けば強力な技と言えるだろう。


「そんなに私のネーミングセンスは悪いんでしょうか……」


「私は好きだよ。そのー、素直なところとか」


「まー、必殺技とかいちいち叫ぶなんて愚の骨頂ですよ。意味が分かっちゃったら対策されちゃうじゃないですか。ペッ・・・・・・・」


ミホノは夢幻の研究者だった。そのため必殺技を叫ぶということをあまり重要視していないのだ。


「こういうのはやっぱり男性ゼフィスやガルシアスさんに聞くのがいいんじゃないかな。ほら、龍轟斬とか地獄のオルフェとか!」


「うーむ、あの人たちの場合はロマン馬鹿野郎な気がしますが……まあ聞いてみるのはただですし、聞いてみましょうか」




ミホノはまず、ガルシアスに聞きに行くことにした。彼はいつも書斎に引きこもっているか、街の風景をスケッチしているかのどちらかだ。今日は書斎に引きこもり、ナギアの歴史に関する書物を読み漁っているようだ。


「あのうガルシアスさん、あなたって必殺技を叫んでますけどなんか意味あるんですか?」


「技?ああ、地獄のオルフェか。まあ~ロマンかなぁ。必殺技ってなんかこう格好いいじゃん」


「あー聞いた私が馬鹿でした」


「君だって叫んでいるじゃあないか。ミホノスペシャルとかなんとか」


「子どもたちに格好悪いって言われたんですよ。特にネーミングセンスがだからなんか技名のヒントとかあればなーと」


「ヒントかぁ。俺は好きな合奏曲で決めているぞ」


「合奏曲ですか……」




次にミホノはゼフィスのもとを訪れた。最近彼はハザマの紹介で魔石採掘の仕事をしている。そのせいか筋肉量が増え、たくましい体つきになっていった。


「お、ミホノじゃないか。どうしたんだ、こんなところまできて」


「今必殺技を叫ぶ理由と名付け方聞いて回ってまして。ゼフィスはどうなんです?」


「んー考えたことなかったな。ベルゼハート団長も小隊長の人たちもみんな必殺技叫んでたからかな」


「特に意味はないと?」


「別にそういうわけじゃないんだ。説明しずらいんだけどなんかこう技を出すときに心を統一するというか、気持ちが引き締まるんだ」


「なるほど、精神統一ですか」


「まあ、技名も団長の受け売りだけどね」


休憩時間が終わるとゼフィスはつるはしをもって仕事場に戻る。答えらしきものを得たのか少し頬が上がっていた。



孤児院に戻るとミホノは黙ったまま座り込んでいた。ルーデルワイス、ハザマ、ティルナシアの三人は物陰からじっと考え込んでいるミホノを見ていた。


「おいおい、ミホノは何をあんなに考え込んでおるのじゃ」


「まさか……恋⁉よーし、拙者頑張っちゃうぞー」


「そういうことじゃなくて。実は……」


「なるほど、技名じゃな。童は敵に引導を渡すために言っておる」


「特に考えてはいませんでしたなあ」


懐にしまっていたメモ帳に何か書きだすミホノ。書く手は文字というよりかは何か図を描いているようだった。丸を書いては文字を書き線を引く。それを繰り返して行くうちに書くのを止めてメモ帳を閉じ、こちらへ歩いてきていた。


「あ、どうも皆さん。ちょっと子どもたちに見せたいものがあるので皆さんもどうでしょう?」


「うん、見に行くよ」


運動場に子どもたちを集めたミホノはツインターボを身に着けていた。ティルナシアは察していた。朝のリベンジをしようとしているのだ。


「お集りの皆々様、私ミホノ・アオガネが見せます技は朝のリベンジであります。ではでは、お見せいたしましょう。新・ミホノスペシャルを!」


屈伸状態から勢いよく飛びあがり、宙を舞う。そして宙返りをしてはジェット噴射でさらに高く飛び上がる。


「必殺!疾風」


足先に風が収束し竜巻が起こる。私はシールドを形成しつつ、銀の翼を使い岩石を空へ上げる。落下する岩石を風を収束させた足でけり上げると、岩石は砕け散る。


「次!必殺、ライデン!」


次に足に電気が帯びる。そしてチャフを巻きながら地面へ落下し、地面に着地した瞬間に電撃を放つ。電気は空気中に舞うチャフを反射していく。その光景はまるで大木のように地上から天に向かって電気が枝分かれしていった。


「ラストです!火龍!」


膝をついた状態からサマーソルトキックを繰り出す。足から天に伸びた炎と、ツインターボの炎が翼を広げた龍を空中に浮かび上がった。息を切らしながらも深々とお辞儀をするミホノ。周りの子どもたちは大きな拍手をし、ティルナシアも感動を精いっぱいの拍手で表していた。


「すごかったよミホノちゃん!朝のよりも豪華というか盛大というか……言葉に表せないほどすごかった!」


「ありがとうございますお姉ちゃん。ゼフィスの『技を叫ぶのは精神を統一すること』という考えが参考になりました」


「精神を統一するか……だからあんなにダイナミックだったんだね。けど、技名はどうしたの?」


「これは…その……私、空が好きで飛行機とか好きだったんです。それで過去に活躍していた飛行機の名前を参考にしました」


ミホノの母であるミエコの仕事の影響で空を飛ぶものが好きだった。紙飛行機を毎日作ったり、飛行機が飛び立つ映像を見たりしていた。そこから彼女は技名のインスピレーションを得たのだ。


「すごいよお姉ちゃん!なんかこうずばばばーんって!」


「もっかい!もっかいやって!」


「わかりました!ではいきますよー。火龍!」


子どもはミホノの周りに集まり活気あふれていた。そしてミホノはエネルギーパックを使いすぎてしまい、ガルシアスにこっぴどく怒られたのだった。なお、タイタンのエネルギータンクによってエネルギーパックを補充できたのはまた別のお話。


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