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ARCADIA BLUES.  作者: 那樹聖一
カンレーヌ編
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魅惑の花

エレベーターの階を表すランプの光が地下4階に近づいていく。俺とガルシアスは会話もなくただランプの光を見ていた。俺の中にはこの男に対する疑問がいくつかあった。銃を組み立てる手際の良さ、新型の幻式であるButterflyをなぜ知っているのか、病室で言われた言葉の意味など知らないことが多いのだ。


「ガルシアスさんよ、あんた何者だ?」


「ただの老いぼれさ」


「嘘をつかないでくれ。銃の組み立ての早さ、機関銃を打つ時の姿勢、Butterflyの存在を知っているなどあんたは謎が多すぎる」


ガルシアスは笑みを浮かべていた。わからない。この男が何を考えているのか。


「まあ、これから知ることになるさ」


チン……エレベーターのランプが地下4階で光った。エレベーターから出ると信じたくない光景が拡がっていた。太く発達したツタ、いいやここでは根という方がいいだろう。棘の生えた根に巻き込まれた職員たち。その光景は文字通り地獄だと思えた。逃げ遅れた人たちだろうか。まるで養分にされたように体は細くなっていた。


「大丈夫か?お前だけでも先に戻っていてもいいが」


「そういうわけにもいかんだろ。大丈夫、早く抽出機を止めよう」


俺たちは辺りを探索した。そこには報告書やらが散乱していた。機械系はほとんどが停止し、照明だけが皇后を輝いていた。


「ゼフィス!こっちに来てくれ」


ガルシアスが何か見つけたようだ。それはモンスターの研究結果の報告書だった。モンスターの生成法、作られたモンスターの種類などがまとめられていた。おそらくミホノが言っていた裏切り者のことだろう。そこには根の原因だと思われるモンスターが記されていた。「ヤテベオ」そう名付けられていた。この報告書が正しければあの植物が抽出機を狂わせているらしい。


「多分、あいつのことだよな」


ガルシアスが指さす先に根が集中している木のようなものがあった。木には一輪の大きく、美しいオレンジ色の花が咲き誇っていた。美しい。俺はひと目でそう思った。もっと近くで見たい。足が勝手に動いた。ただ美しいものを見たいという欲望が


「…い!」


誰かが俺を呼んでいる。そんなのどうでもいい。俺は、あの花をもっと近くで……


「おい! 反応しやがれ。死にてぇのか!」


銃の発砲音。同時に俺に液体のような物がかかった。俺は何を?俺の目の前に見えたものは美しい花だけではない。触手の群れと、その先には肉食獣のように口が広がり、目がついていた。俺は急いで後ろに下がる。あれがヤテベオなのか!?


「魔道具みたいに魔力に作用したか。一応幻式起動させておけ!」


俺は荒塊を装着し、ヤテベオによる効果を打ち消した。多少マシにはなった。


「花をなんとかしないとだな。あの花を見た瞬間目を奪われたんだ」


無数の触手は俺たちを攻撃し続けた。切っても切っても再生した。これでは埒が明かない。やるなら一度にあの茎を砕くしかない。もし、幻式の燃料が切れてしまっては俺たちは戦闘行為を継続することはできない。ならば先に壊すべきは花だ。いくら触手を再生できても人を魅了する力を持つ花を再生させるには月日が必要なはずだ。だが、茎のてっぺんにある以上俺の剣では届かない。魔法による攻撃でも恐らく防がれてしまう。アラクレを使用した攻撃で花を壊せたとしてもその後の戦闘が出来なくなる。くそ、空中戦が出来れば!


「すみません、遅れました!」


後ろの方から声がした。その声の主は俺が今最も求める人員だった。


「ナイスタイミングすぎるんだよ!二人とも!」


ミホノとティナだ。やっと4人揃ったのだ。二人は駆けつけるやいなや戦闘態勢に入った。俺は今の状況とヤテベオのことを伝えた。


「なるほど、美しい花には刺があるとはよく言ったものですね。まあ実際生えていますけど」


「とにかくあの花をどうにかすればいいんですね。ミホノちゃん、届きますか?」


「ええ、いけますが。お姉ちゃんサポートお願いしてもいいですか?」


「もちろん!」


ミホノは助走をつけて花めがけて空へ飛んだ。その姿を見たのかヤテベオは無数の触手をミホノに向かってしならせた。


「させない!」


その光景を見たティナは銀の翼で触手を破壊したり、シールドを作ったりして攻撃を防いだ。二人のコンビネーションは息のあったものだった。あっという間に花の近くまで飛んだ。


「これは私とお姉ちゃんのコンビネーションによって生まれた好機。見せてあげましょう! ミホノスペシャルを!」


みほのすぺしゃる?多分雷キックもそのひとつなのだろう。ミホノは花の近くまで近づいたあと勢いよく真上に飛んだ。完璧に頭上を取った。足先に炎が宿る。


「きりもみファイアーキーック!」


ターボエンジンを真上に全力噴射し、スラスターによる回転で炎がミホノの体を巻き込みながら渦を描いた。そして急降下していった。炎の渦は花目掛けて急降下した。その炎は花に触れた途端大炎上し、ヤテベオは苦しむように触手を唸らせ周りの機械を壊していった。やはりあの花だけは特別だ。


「よし、これで花に警戒しなくて済んだ。一気にたたみかけるぞ!」


これは好機だ。苦しんでいるうちに茎まで近づき、そのまま伐採する!俺はムスカリの刃に炎を宿し邪魔になる触手を払い除けて行った。ほとんどの触手は暴れまわり機能していなかった。だから全てを切る必要はない。


「よし、近くまでこれた!このまま切り倒すぞ!」


俺はアラクレを発動し、炎を帯びたムスカリの3連撃の固定と発動を行った。しかし、切った面はすぐに再生し弦を生やし反撃をされた。アラクレによる反動はないものの、やつの攻撃で足がつく。剣の反動は再生能力でどうにかできているものの、事象の固定と再生の代償のせいでLエネルギー残量は減ってしまう。このままじゃ負ける。ガルシアスの機関銃による攻撃もミホノの足技も、ティナの魔法も受けてもすぐ再生されてしまう。


「どうします?私のツインターボの燃料も底をつきそうです。一旦撤退を!」


「ダメだ。ここでやらないと被害が大きくなるし花も再生してしまう!」


どうすればいい。全員の攻撃を一点に集中させても再生能力でカバーされる。ヤツが抽出機を占拠している以上無尽蔵に再生されてしまう。


「一ついい案がある。だがそれは全員の力が必要だ」

ガルシアスが手を挙げ言う。案だと?この状況を変えれるのか?だが藁にもすがる状況だ。やるしかない!


「わかった。この状況を変えられるならなんでもいい!」


「よし、なら始めよう。It’s show time!」

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