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ARCADIA BLUES.  作者: 那樹聖一
カンレーヌ編
15/61

代償

完全回復は意外と早く、一夜すぎると痛みも何もかもなくなっていた。俺たちは発電所を攻略するために武装の最終チェックを終わらせているところだった。


「おーい、もうそろそろ行くぞー」


ガルシアスはバックパックだけを背負い3人の前に現れた。


「はあ、荷物が少ないようだが?」


「そりゃ、俺はこいつがあればいいからな」


コートをポンポンと叩いた。そうすると金属同士がぶつかり合うカチャカチャという音がし、マントの裏側を予想させた。ほとんどがコートの中にある以上Lエネルギーパックもいらないらしい。


「準備完了。じゃあ行きますか」


俺たちは発電所の地図を2つもらい、発電所前まで案内された。


「恐らく、エネルギーが漏れだしているのは最深部にある抽出機からだと考えられます」


夢幻課長が地図を照らし合わせながら説明した。俺たちは完全武装で発電所前に立った。柵を超えた先には数十体のモンスターが跋扈し、行く手を阻んでいた。最初は夢幻社員の皆さんが手前にいるモンスター達を倒してくれるらしい。


「では、よろしいですか?」


俺たちはお互いの顔を確認しサムズアップで合図をした。


「これより、発電所停止作戦を開始します!機関銃全力掃射!」


課長の一声で社員は機関銃をうち始め、モンスター達を肉塊へと変えていく。俺たちは銃弾雨あられな中を突っ切っていった。途中、俺たちが邪魔で倒しきれない敵は切っていった。


「うぅ、血が……骨が……肉塊だ……」


ティナは目を瞑りながら走った。さすがにこれはグロテスクとしか言いようがない。俺はその手を掴み、走った。そして発電所内に辿り着いた。発電所内は薄暗く、ツタらしき物におおわれてきた。


「これはツタですね。なぜ発電所内に?まさかこれもLエネルギーの影響ですか?」


「動物に作用するのは知っているが植物に作用するのかはわからん」


壁や廊下にはツタだけでなく、モンスター同士が争った跡があった。傷は細かいものもあれば深く、大きい傷もあった。おそらく、小型だけでなく、大型のモンスターもいるのだろう。どこから襲われるかわからない。警戒しながら進んでいこう。


「前方より敵影補足。狼のようです」


数は3匹。どれも狼とは思えない形をしていた。目が4つに分かれている個体、舌が2本になってい個体、尻尾が2本になっていたりとどこがおかしかった。


「とりあえず、前に進むためにもこいつらを倒すぞ。ティナは援護よろしく。ガルシアスはティナの護衛、ミホノは俺と一緒に前線で倒しに行くぞ!」


「「了解!」」


「じゃあ行きますよ。息を合わせてください!」


ミホノはスラスターの推進力で素早く間合いを詰めた。俺も負けじと後ろを追う。それを確認してのことかミホノは空中に舞い上がり、モンスターの背後を取った。いくらモンスターといえど背後は弱点のひとつだ。俺が前で攻撃し、ミホノが背後から蹴りを入れる。挟み撃ちの状態になった。ティナのビットに気を取られている隙に三体を倒しきった。


「疑問なのですが、なぜ発電所内に動物が?」


「分かりません。私は首謀者が持ち込んだと思っています。ですが何のためにやったのかが理解不能です」


動物ばかりがモンスターになっているということは実験?Lエネルギーによる強化とか変異度合いとかだろうか。




しばらく歩くと機械系が立ち並ぶ場所に辿り着いた。そこにはメーターやらボタンやらが立ち並んでいた。ほとんどの機会が光っており、ある機械は電力量を示し、ある機械はLエネルギー流出中と示していた。


「少々お待ちください。どこで漏れているか調べますので」


ミホノは機械を弄り始めた。その動きは慣れている動きで、様々な機械を同時に動かしていた。頭は本当に良いらしい。うん、本当にそして数十分が経過した。


「調査完了。流出場所は最深部にあると断定」


やはりか。課長の予想は当たっていたらしい。


「じゃあ、とりあえずそこまで行きますか」


俺たちは最深部を目指し進んだ。途中モンスターに襲われたものの難なく倒せた。しかし、最深部に近づくにつれモンスターの量と強さが上がっている。最深部の方がLエネルギーの濃度が高いからだろう。さらにツタの大きさもどんどん太くなっている。果たしてこの生物がなんなのかいまいちわからない。所々に刺があるためバラだと思ったがこんなにも大きくなるか?と思ってしまった。俺たちは食堂にたどり着いた。そこからは何かを食い散らかす音や悲鳴が聞こえる。モンスターがまたいるのか。俺はドア越しに中を覗く。そこには人間に似たモンスターがいた。腕と胴体が大きく太い。さらに体表は鱗に覆われていた。人間か?と思ったがあの腕の大きさ的にゴリラだと思う。だがあの鱗はなんだ?トカゲや蛇などの爬虫類のような鱗に覆われていた。


「ゴリラでしょうけどあの鱗には注意ですね」


ミホノも同じことを考えたらしい。どこか弱点がないか観察していると足に目が行った。鱗が足まで生えておらず、でかい胴体に比べ明らかに小さい。よし、狙うは足だな。俺は引き続き観察を続けていた。


「あのーゼフィス?なんか近づいてきてるんですけど……」


ティナが声を震わせながら言った。へ?そうすると目の前にゴリラっぽいモンスターが現れた。


「グァァァァー!」


ドア越しに殴ってきやがった!俺たちは急いでドアから離れた。ドアは殴られた衝撃で金具ごと宙を舞い、壊れていった。ゴリラは俺たちの身長を優に超え、次の攻撃の体勢へ移っていた。急いで俺たちは食堂へ回避をした。


「おいおい、こんな暗闇の中でよくもまあ見えるもんだな!」


「馬鹿野郎!お前の持ってる光に反応したんだろうが!」


ガルシアスは急いで光を消した。もう遅い気がするが、やるに越したことはない。俺は周りを見渡した。そこには巨大化した蛇の死骸が転がり、胴体を食い散らかされたあとがあった。食って特徴をコピーしたとでも言うのか?これもLエネルギーの影響なのであれば恐ろしい。


「とりあえず、足を狙いましょう。ミホノさんお願いします!」


「はい、ティルナシアお姉ちゃん!」


「だからお姉ちゃんじゃないです!」


ティナはミホノの姉になったのか?そんなことはさておき、戦闘開始だ。まずはティナのビットで牽制をしつつ俺たちが近づき攻撃を仕掛ける。やはり足回りが弱いのか回避しようにも思うようにできないらしく、クリーンヒットできた。巨体は地面に伏せ、しばらく動かなかった。その間に攻撃を仕掛けるがやはり胴体は鱗に覆われているため硬く、刃が通らなかった。ゴリラは立ち上がり、大振りに攻撃を仕掛けてくる。攻撃は避けやすいものの、次の攻撃までのクールタイムが短いため攻撃を仕掛けにくかった。


「足だけ攻撃しても致命傷にならないし、どうすれば」

「なら、俺の出番だな。ゼフィス、ミホノ6秒稼いでくれ!」


ガルシアスはそう言うとマントをバッ!と広げ、中にあるアタッチメントを器用に素早く組み上げていった。ハンドガン以外の武器があると思っていたがそれは違った。組み上げて新しい武器を作り出しているのだ。


「よし、完成。お前ら一旦そこから離れろ!蜂の巣にされたくなければな!」


ガルシアスが持っていた武器は砲身が長く、重く、大きい弾倉を下げていた。トリガーを引くとマシンガンのように連射し始めた。砲塔はブレることなくゴリラの爬虫類のような硬い体表を貫いていた。単純に1発1発の威力が高い。いくら切ってもいくらスラスターによる蹴りをしても砕けなかった鱗がいとも容易く貫かれていく。トリガーから指を離す頃にはゴリラの原型はなくなっていた。


「ふー。久々に撃つと肩がイカれやがるな」


「まったく、あるなら先に使って欲しかったな」


「硬さがわからん以上奥の手のひとつを使うのは嫌だからな。まずは知ることからだろ?」


一理あるがなんか引っかかるんだよなぁ。


「さあ、急ぎましょう。ここを抜ければエレベーターです。乗ってしまえばそのまま最深部へ行けますから」

電力は正常であるため、問題なく動くらしい。エレベーター前につく。ドアは開けられており、いつでも入れる状態だった。


「じゃあ行きますか」


俺たちが入ろうとした瞬間、地響きが鳴り響く。そして地面から廊下に蔓延っていたツタが壁のように俺たちを分断した。ミホノとティナ、俺とガルシアスに別れてしまったのだ。


「おーい、そっちは無事かー?」


「ええ、無事でーす!」


俺の応答にティナが答えた。よかった、二人は無事なようだ。だがこのツタ、いくら切っても再生する。火で炙ってみたが水分が多いのかなかなか燃えなかった。ツタは思ったよりも硬く、切れたとしても直ぐに回復する。ここからは2手に分かれる必要があるみたいだ。


「あなた方はエレベーターで降りてください。私とお姉ちゃんは非常階段でおりますので」


「了解!気をつけろよー!」


俺たちは別々の道を行った。恐らく、下の階は持っと敵がいるだろう。バックパックの紐をきつく締め俺はエレベーターに乗るのだった。

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