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ARCADIA BLUES.  作者: 那樹聖一
カンレーヌ編
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剣を選ぶ者

発電所の依頼を受けた俺たちは、それぞれ必要なものを買いに街へ繰り出した。俺はまず剣を探さなくてはならない。そのためにも武器屋を回っていた。丁度いい剣はないか探していたが、見つからず難航していた。剣はとりあえず切れればいいというわけではない。使い慣れたグリップや刀身の長さ、重さ、重心が揃わなければ使い慣れた武器といえど意味がない。武器には自分の命をかけていると言っても過言ではない。少しのズレが命の有無を決めるといっても過言ではない。慎重に選んでいるため、なかなかしっくりくるものがないのだ。

「ありましたか?手に馴染む剣」


「いいやなかった。まぁ、前使ってた剣もベルゼハード団長から借りてたやつだからなかなか見つからないんだよね」


「男ならつべこべ言わずあるもんを使え」


「そういうガルシアスは何使ってるんだよ」


そういうと懐から年季の入ったハンドガンと、オプションパーツを4つ取り出した。


「俺はこれだけで十分だ。状況に応じて使い分けるのが大事だからな。もし近接戦になったらダガーでも使えばいいさ」


ハンドガンのパーツは全てカスタムされており、ガルシアス専用の銃と言っていいほどの代物だった。しかし、彼のマントの奥には他に隠している武器が必ずある。ハンドガンにはピカニティーレールは2つしかない。おそらく、アサルトライフルをひとつ持っているだろう。


「とりあえず、剣に関してはミホノさんに相談しましょう。次はポーションとかどうでしょう?」


「ナイス提案だティルナシア。何が必要かわからん。解毒やらなんやら買っておくか。」


俺たちは雑貨屋に向かった。店内に入ると老婆がカウンターに座っていた。


「おやおや、お客さんが来るとは久しぶりだねぇ」


老婆は懐かしむように言った。


「おばぁちゃん。ポーションを10個、解毒薬を6個くれるかな」


「はいはい、それだけ買っていくということは、あんたたちが噂の3人だね。ありがとうミホノちゃんを助けてくれて」


老婆はポーションと解毒薬を小分けして渡してくれた。


「おばぁちゃん、この国で何があったか教えてくれますか?」


「そうだねぇ、モンスター達が現れたのはちょうど2ヶ月前の事だったよ。旅商人が教えてくれてね。そこから増えに増えてるんだよ。ちょっと来てごらん」


老婆は店を出て街の外れにある畑へ案内した。そこはひどい惨劇だった。畑は荒れに荒れ、作物は土壌から掘り起こされ齧り付いたあとが着いていた。


「どこの農家もこんな感じさね。畑だけじゃないさ。家畜も食い殺された。全く、誰がやらかしたんだろうねぇ」


老婆の目には涙が流れていた。自分の育ててきたものは荒らされ、家で怯える日々。耐えきれるかよ。街に戻る際もんをもう一度見た。酷い傷だった。昔できたものではない。傷は新しかった。ずっと防衛してきたのだろう。この依頼は早く終わらせないといけない。これ以上長引かせればこの街がもたない。


「自分に合う剣がなかった?剣なんて振って切れればいいでしょう」


無性にこの女を殴りたくなった。


「いや、俺は剣に命を託してる。だからこそこだわりたいんだ。お前の食に対する欲求のようにな」


「それは……そうなんですか。わかりました。あなたは運がいい。私の父であれば該当する剣を持っているかもしれません」


まあ、食と剣とじゃ意味合いが変わってくるが。いやぁアホの子でよかったぜ!と、思うのはさておき、ミホノの父親が鍛冶師だとはな。早速俺はミホノの家に案内された。家の外見でまず目がいくところは煙突だろう。とにかくでかい。煙突からは煙が立ち昇り続け、今まさに剣を打っているところだろう。


「ただいま帰りました」


「おお、ミホノおかえり。その方は誰だ?」


奥の工房らしき部屋からハチマキをつけた一人の男が出てきた。ガタイがいいというより引き締まっていると言うべき体つきで、手のひらを見るタコだらけだった。


「はじめまして、ゼフィス·ガラースと申します。今日は折り入ってお願いがありまして」


「ミホノの父のカーヴェ·アオガネだ。儂のところに来る奴は剣の以来以外ありえないだろうな。それかあれか?娘が欲しいとか言わねぇよな。やらんぞ、うちのミホノはチョロインじゃないんでな」


俺はその発言に耳を疑った。ごはんの一言を聞いた瞬間食いつく奴だぞ?ごはんは別と言われそうだからやめておこう。俺はカーヴェさんに希望の条件を伝えると工房へ案内された。


「おまえさんの場合は防御を切り崩した後に連撃を繰り出すパターンの剣士だな。重心が剣先よりにすることで振る時の威力をあげれるわけだ。だが柄と刃の間が折れやすくなる。今あるものだとこれとかどうだ」


一本の件を差し出された。長さは95cmぐらいで柄の長も申し分ない。ん?柄?


「こ、これは木製か?この構造。刀身を柄にはめ込むことで柄は軽く、握りやすい。木に生糸や草、皮を使うことで握りやすくなっているわけか」


「おまえさん、わかる口か。なら中を見せてやろう」


柄の表面から竹らしきピンを抜き取った。そして刀身を腕をトントンと叩きながら出した。刀身の柄部分にはふたつ穴が空いていた。恐らくあの竹で固定しているのだろう。竹は強度が高く、錆びない。そのため、中での刃こぼれを防ぐことができるのだろう。そして鍔が固定されていない。一体整形でないことで強度が上がっている。


「どこでこんな製法を?」


「儂の親父からの継承さ。工程が多い分大量生産はできんが俺はそんなものにこだわらん。剣は剣士の命を守る物だ。人を殺すためのものじゃない。大切な物を守るためにあるからな」


俺は目を輝かせた。その通りなんだ。だからこそ剣はこだわる。


「師匠と呼ばせてください」


「儂は弟子はとらん」


次は刃を見てみるとしよう。刃はひとつの素材だけでできていなかった。恐らく2つ以上の金属で作られている。混ぜることで強度が上がる。


「他にも見ていいですか?」


そう聞くと奥の方から剣をたくさん持ってきてくれた。どれも職人の技が光る逸品ばかりだ。一本一本の件にムラはなく、刃は鏡のように磨かれていた。

「この剣は……」


自然と目に入っただけだった。だがその剣を見た瞬間手が勝手に動くのだ。引き寄せられるように自然と。鞘から抜き刀身を見た。色は黒寄りの青で光の反射によっては青く光った。


「この剣の材質は?」


「詳しくは覚えてはいねぇが、確か魔石を混ぜたんだったかな?儂自身なんで混ぜたかは忘れた」


魔石を混ぜることで何が起きるか分からない。だがこの剣は他のとは全然違う。そう思った。俺が求める条件は完璧に揃っていた。これを選ばない理由がない。


「これにするよ。あとは柄の素材をしっくりするものに変えたい。」


「わかった。柄を巻く作業はタダでやってやる」


俺は剣の代金を払い柄に生糸や皮を巻く作業を見ていた。早い。だが、巻く時の力の入れ具合は強く均等だった。まるで一巻一巻に願いを込めるように巻いていた。


「よし、できた。ちょっと巻いてる時に思い出したのだがこいつを作ったのは数十年前なんだ。他はの剣は3年前。手入れも何もせずに置いてあったんだ。なぜ錆びてないんだろうなってな」


たしかに気になるな。手入れをせずに10年もつ剣か。これは強度的に期待ができる。俺はまた全力で戦える。そう思っただけでも心が高ぶる。今すぐ試したい。今すぐ斬り合いたい!


「その顔、今すぐ試したいって言ってますよ」


「ああ、ミホノ、一戦どうだ?」


「受けてたちますよ」

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