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宮城の聖霊流し

どもども! 散髪に行ってきたらなかなかいい感じに仕上げてもらえたサトマロです!

今回は夏のあの光る虫! 幻想的な表現を書くのは難しいですね、ではお楽しみください!

信夫が宮城に来て丁度一週間、ホームシックにかかることは無く、有意義に過ごす毎日。そんな毎日だが信夫は東京を出発する前に父から教えてもらった蛍について考えていた。


 ある人は真夏の雪と言う、またある人は森の聖霊と言う。スマートフォンで蛍の群れの画像を検索するも


 「こんな感じなんだ」


 その一言で終わらせる。今の時代はインターネットがあればマップストリートビューで旅行に行った気分にもなれるし、動画投稿サイトに上がった動画でも絶景を見ることは出来る。


 気が向いたら蛍の動画でも見よう


 そう心の中で呟く信夫は正樹の家に向かって歩き出す。


 正樹の家に到着すると正樹の父親が何かを作っていた。


 「おはようございます」


 信夫が挨拶をすると


 「おはよう」


 と、返す。何を作っているのか武彦に尋ねると


 「四つ足用の罠、もっと寒くなってから作る人が多いんだけど、俺は気が早いからね」


 優しい笑い混じりの声で話す武彦、信夫は正樹は居るかと聞く、どうやら買い出しに行ってしまったらしい。


 「お茶を入れるから上がって待つと良い」


 これは長話を聞かされるのではないか? そう思った信夫は遠慮する身振りをするが半ば強引に部屋に押し込まれる。


 熱いお茶を啜る信夫に待っていたのはやはり長話、しかし冬の山での狩りの話や猪肉の味の話、それらはやはり男のロマンとでも言うのだろうか、興味津々で聞く信夫には1時間などすぐに過ぎて行った。


 すると正樹と田中のおばさんが帰ってくる。


 おばさんは昼食を食べていけと言うのでありがたく頂く事にした。


 祖母に連絡をし、正樹の部屋でオセロをしながら昼食を待つ。すると正樹が


 「そう言えば今年蛍見てないな、都会では蛍見れるところあんの?」


 「あるところにはあるらしいけど俺は見たこと無いな」


 「ならさ、今晩行くか? お前んとこのキュウリ姉ちゃん保護者にすれば大丈夫だろ」


 まあスマートフォンで蛍の画像を見ただけでは感動のような物は伝わらなかった訳だし、行っても良いかな、と思った信夫は


 「行くか」


 と、三文字返事をする。それに女性と夜の散歩をするのは少し憧れを抱いていた。二人きりならなお良いがこの際仕方がない。ある程度の妥協をして望む夜の探検は生涯忘れられないであろう幻想的な光景が待っていたことを信夫は知る余地も無かった。


 夜、三人で川原に向かう、川原までの道は昼間とは何一つ共通点が見当たらず、ひんやりした空気、昼間の空が全てを包み込む青色の空なら夜の空は全てを呑み込む漆黒の黒、そしてそれに呑み込まれた人が助けを求めるかのように光輝く無数の星。そして何者かが後を付けているかのような変な気持ち。唯一の灯りは正樹が持っている懐中電灯の心もとない明かりのみ、もしこの懐中電灯が壊れたり電池が切れたりしたらどうなるんだろう…… そんなことを考えると少し怖い。


 カエルのうめき声の様な低い鳴き声が聞こえる。それと同時に目に入るのは無数の光、ゆらりゆらりと浮かぶその光はまるで川原をさ迷う人魂の様。その光景を前に自然と口が半開きになっていたので口がカピカピに乾いてしまう。


 「やっぱり夏はこれだよな」


 正樹のその一言に続くかのように千尋が


 「田舎の特権だよね」


 二人が地べたに座ると信夫も地べたに座る。姿勢を低くして見える光景もある。蛍と夜空の星星(ほしぼし)か同じ空で光っているかのように見えた信夫はこの光景をこう名付けた。


 宮城の聖霊流(しょうろうなが)し と


 「信夫、信夫」


 正樹の小声で呼ぶ声が聞こえる。


 「見てろよ?」


 と、一言だけ言うとわざとらしいくしゃみをして首をのけ反らせる。そして頭は横にいた千尋の胸にポンと当たって跳ね返る。


 「ああ、ごめんごめん、ちょっと冷えるなぁ」


 千尋が怖い笑顔で


 「おい中坊、わざとだろ?」


 と。星がほんのり放つ明かりでその笑顔は狂喜に満ちているかに見えた。


 首にかけていた手拭いを顔に被せた正樹は寝たふりをする。


 余計なことはしないと心の中で誓った信夫は黙って蛍の光を見る。すると千尋が


 「ねぇ信夫君、ホームシックになったりしないの?」


 「そう言うのはあんまり無いですね、なんかこっちの方が住みやすいし、ぶっちゃけちゃうと父は単身赴任、母は仕事が忙しいって言って朝帰り、他の事をしてるんでしょうけどね」


 千尋は「あっちやー」と言わんばかりの顔をする、そして何を血迷ったか信夫の頭を地面に向かって押し下げる。すると固いような柔らかいような感触が横顔で感じることが出来た。


 信夫は全ての思考回路を全快にして彼女無しの都市伝説である一つの答えにたどり着いた。


 膝枕である。


 「信夫中坊よ、この瞬間を、宮城の夏をもっと楽しめ」


 その一言で信夫は自分の本当の居場所は何処なのか、この夏をどう過ごせば良いのかがハッキリと理解した。


 千尋が正樹に

 

 「正樹中坊よ、良い子にはこんなことが待っているんだよ?」


 と、言うが正樹は


 「今寝てるんで」


 と、明らかに寝ていないのに寝ているふりをするのであった。

ホタルってあれなんかゴキブリに似てると思いません?だけどホタルは大丈夫なんです。

確かに少し気持ち悪いですけどゴキブリよりは大丈夫なんです。

だけどゴキブリが光ってたら失神します、確実に

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