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第91話 悪愛の魔女3

挿絵(By みてみん)



「これがギアの秘密兵器……」

「そうポメ。僕たちは一年前の大戦争でたくさんの強者を見たポメ。その全てをあのキラーキラーキラーキラー、通称、殺龍(キラードラゴン)に詰め込んだんだポメ!」


 ポラニアが熱く語る。


「気合装甲、神龍、強者たちの魔法に技能(スキル)。それらから発想を得た、あれはまさに神龍に並ぶ強さを持つ機体ポメ! 僕はそれを作ったポメ!!」


 ギアの声がした。


「ポラニアめ、熱くなりやがって。待たせたな」

「それは危険っスね」


 スカリーチェが三又槍トライデントを振るう。ドームがどんどん潰されていく。ディザスターの腕がさらに震える。


「……ッ、これ以上は持たない」

「そんな! こんなところで死にたくねぇです!」


 ギアがこっちに近づいてくる。


「まずはお前らだ、動くなよ」

「おいおいおいおい!!」


 ギアが大口をあけて俺たちを丸呑みにした。


「うわわーー!! 機械に食われるなんて! なんてバーガー生だーー!!」

「うるせぇな、落ち着け」

「あれ生きてる?」

「バカが機体の中に収納しただけだ。これは機械だぞ、口が普通の口なわけねぇだろうが」

「それもそうか、俺たちを助けてくれたんだな」

「戦いの邪魔だからな。その胃袋コックピットの中で大人しくしていろ」


 コックピットと言うがこれは司令室だ。そうだな、ネ〇フの人たちが並んだモニターとにらめっこして、一番高い場所には司令官が座っている、そんな場所だ。


 俺たちは邪魔者か。それもそうか、こんな大規模な戦いに、こんな体で何ができるって言うんだ。遅れて入ってきたサガオがキラーキラーマークIIの姿に戻る。


「サガオたちも来たんだな」

「ヒマリがいるからな。それにしてもこれは凄いな」


 巨大なモニター型の水晶が外の景色を映し出す。


「外の映像を写している。よく見ておけ、何かアドバイスがあれば言え」

「わかった!」

「野郎ども仕事だ」


 魔物(魔人含む)たちがキラードラゴンの中にある座席に走ってつく。ポラニアが一番高い座席に飛び乗った。


「ギア! スカリーチェの能力は魔眼だポメ!」

「さっき送ってきたデータで書いてあったやつだな」

「右目は因果転生の魔眼だと思われるポメ! 古文書で読んた事があるポメ!」

「あの殺しても生きてるっていうマジックみたいなネタのタネはその目のせいなんだな」

「そうポメ」


 そこまで解析してたのか。ポラニアの書いているものを見たが落書きにしか見えなかったぞ。


「お、正解っス。私の右目は因果転生の魔眼。死んだ時の因果に引っ張られて生まれ変わる魔眼っス」

「何言ってっかわかんねぇな」

「クスクス。じゃあ『こっちの目』はどうっスか?」


 スカリーチェが両目を開く、左の瞳孔だけ白い。ポラニアが驚いたように叫んだ。


「まさか左目も魔眼ポメ!?」

「それも別口っス」


 黒い魔眼の次は白い魔眼だと。


「よくわかんねぇが、させるかよ」


 ギアが巨大を思わせない俊敏な動きで詰め寄る。スカリーチェは三又槍トライデント瞬間移動テレポートする。少し離れた場所に出現した。ギアが構える。


反魔法結界アンチマジックフィールドを全開だ」


 結界は瞬く間に広がった。どこまで続くんだ。


「これで魔法は使えねぇ」

「そうっスね。魔法は使えないっス」

技能(スキル)が厄介だが。このキラードラゴンには通じねぇぞ」

「へぇ。じゃあやってみるといいっスよ」

「行くぞ、ポラニア」

「ポメ!」


 ポラニアがカタカタとボード型の魔法陣をいくつも弾いていく。まるでキーボード操作だ。


「特技殺しのキラーズフィスト! だポメ!」


 キラードラゴンが右手を強く握る、拳が光り出す。それと同じ光がスカリーチェからも発せられる。


「これは、特異体質の無効化っスか」

「これで因果転生の魔眼は使えねぇ」

「これは参ったっスね、じゃあこっちを使うしかないっスね」

死角移動キリングラン


 あの巨体でも使えるのか。スカリーチェの背後に回り込む。しかし三又槍トライデントで離れた場所に瞬間移動テレポートする。


「無駄だ」

「クスクス」


 ギアは左腕でスカリーチェを殴る。水中でもお構い無しだ。当たれば粉微塵になるだろう。


「な」


 しかしスカリーチェはそれを漆黒の右手で受け止めた。


「まさか、目以外にも特異体質があるポメ!?」

「『苛烈平等の右腕』どんな力関係も等しく平等にする能力っス」

「それも封じてやる」


 ギアは今度は左手を握り光らせる。そしてそれに連動してスカリーチェの体も光る。


「ありゃりゃ、これも封じられちゃったっスね。あーあ、つまらないっスね」

「面白くする気もねぇ」

「でも、それじゃあそっちは両手が使えないじゃあないっスか」

「見抜いてやがったか」


 なるほど能力を無効にするためには一つにつき腕一本を使わないといけないのか。たしかに両腕とも胴体にくっ付いている。


「追い詰めてるつもりかも知れないっスけど、10年とちょっとではそれが限界っスよ」

「何勘違いしてやがる」

「え?」

「これから俺にぶち殺されるやつが何言ってるって言ってんだよ。ポラニア」

「ポメー!!」


 ポラニアが髑髏マークのボタンを押した。


「今度はどんな秘密兵器を見せてくれるんだ」


 正直ワクワクしている。ギアが信じられないことを口にした。


「バーガーも仕事しろ」

「え? なに、バガガガガ!」


 な、なんだ!? 俺のいる床だけが上がっている!?

 上に上に、どんどん上に!


「お、俺をどこに連れていくんだ!?」

「決まってんだろ、その剣の出番だ」

「MAXソードの?!」

「いまバーガーをキラードラゴンの口に移動させている。キラードラゴンが口を開いたら、勇者斬ブレイブスルーでスカリーチェを仕留めろ」

「これ一日一発しか撃てないんだけど!?」

「バカが今撃たねぇでいつ撃つんだよ」

「移動完了ポメ! 勇者斬ブレイブスルースタンバイポメ!」

「待て、スカリーチェは三又槍トライデントの力でこの海の中ならどこでも瞬間移動テレポートできるんだぞ!」

「それなら問題ねぇ」


 キラードラゴンの右足が光出した。三又槍トライデントが同じく光る。


「これで無力化した、もう逃げられねぇし、海水も圧迫されねぇから口を開いても魔力で押し出せる」

「なんて能力だよ……」


 水圧が戻っていくなか、スカリーチェはそれでも嗤っている。


「クスクス」

「その強がりもここまでだ。瞬間移動テレポート以外の技がじゃ俺のロックオンからは逃れられねぇ」


 キラードラゴンの口が開く。撃つしかない!


「今だ、バーガー、撃て」

「『勇者ブレイブーー』」

「『狂気汚染の魔眼』」


 スカリーチェの左目が光ってーーあ、あ、ね、? れ、あ? な……ぎ、



 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!




































































 何が起きた?

 何が起きた何が起きた何が起きた何が起きた何が起きた何が起きた何が起きた何が起きた何が起きた何が起きたーー?


 俺は魔法を発動ーーさせーー


 え。あ、流れ込んでく、る。これは、あ、ああ。


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


(クスクス)


 だ、頭の中に、入ってくる、な、アアアアアアアアアア


 ーー(聞こえるっスか?)


 アアアアアアアアアアアうるさ、いた、い、気持ち悪、アアアアアアアアアアアア


 記憶? アアアアアア


(クスクスクスクス。勇者も心は弱いんスね)


 アアアアアアアアアア、あ、お、れに、何をーー


(そのぐちゃぐちゃな景色と酷い痛み、それに現実と思わざるを得ない悲惨なストーリー、脈絡のない泥土、人ならば心が壊れ狂気に落ちるっス)


 こ、これがあ。幻覚、だとーーアアアアアアアアアア


(幻覚なんてヤワなもんじゃないっス。このスキルが発動している間は頭の中ではそれが一つの真実となるっス。いま感じてもらってる、五感を舐める狂気は紛れもなく真実っス)


 アアアアアアアアアアーーやめ、


(これを使えばみんな狂い死ぬっス。いま凄いっスよ。この魔眼の範囲は王国全土っス。世界が発狂しているっス。ここが一番近いから一番酷いんスけど、全人類がこれを体験していると言っても過言ではないっス。世界が阿鼻叫喚っス)


 アアアアアアアアアアアアアア、や、やめて、アアアアアアアアアアアアアア


(クスクス、ほら前にそういう結界を使っていたことがあったじゃあないっスか、覚えてまス? クスクス、あれがヒントだったわけっスね。とは言っても対策なんて出来ないんスけどね。こうやって全人類の頭の中に入ってるわけっス、外の世界じゃ皆のたうち回ってゲロ吐いてるっス、クスクス、クスクスクスクス)


 アアアアアアアアアアアアアア、ど、うすれば、ぐあああああ、アアアアアアアアアアアアアア


(まだ数分っスよ、これからもっと悪化するし、永劫続くんスから、ほら、がんばれーがんばれー、ふれっふれっスー)


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア



 し、しぬ、しんじゃう、


(しかしまあ、ここまで苦戦したのはいつぶりっスかね。初めてかもしれないっス。でも結局これを使えば皆殺せるっス。すでに心の弱い人、体の弱い人が数千、数万、数百万と死に始めているっスね)


 アアアアアアア、こ、こんな、こと、は、やめ、ろアアアアアアアアアアアアアア


(その騒音と不快音の中で、よく聞き取れるっスね、頭の中をぐちゃぐちゃにしているというのに、いい耳を持っているっス。にしても、その心の形……筋肉の精霊と酷似しているっス。いやあんなものじゃないっスね、それは……。勇者の強さはそこから来ていたんスね。それもここまでっスけどね。そろそろ魔眼を強めるっス。最後に何か言おうと思ったけど、これと言って何か言う言葉も見つからないので、さようならっスー)


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
























(おいコラ)

(……)

(おいコラ、聞こえてんだろ)

(なんでギアはなんともないんスか? というか、ここはバーガーの精神内っスよ)

(その前にここはキラードラゴンの内部だ、そういうところの権限も俺にある)

(へぇ、この魔眼も無効にしたんスね)

(いやまだできてねぇ)

(じゃあなんで平気なんスか?)

(そんなの頭の中は仕事のことでいっぱいだからに決まってんだろ、他のことが入り込む容量なんざ残ってるわけがねぇ)

(いや、そんな、五感を痛めつけているのに、地獄のような苦痛がそんなことで和らぐことは決して無いっスよ)

(バカが安易に決してなんて言葉使うんじゃねぇ。そして舐めるなよ仕事を、てめぇは上司の意向に背いて私欲で会社を裏切った)

(……ホントになんのことっスか?)

(俺はそういうやつが大嫌いだ、喰らえ)

(精神世界で、これほどの? というか外の世界のときよりも凄いっス)

(聞いてやる、お前はこれに耐えられるか? 地獄の業火なんて生温い弱火とは比べ物にならねぇ仕事への情熱に耐えられるか)

(クスクスクスクス、あっはっはっはっはっは!)


 スカリーチェが燃えていく。精神攻撃を返したのか!


(これで終わりだ)


 ギアが手を握るとスカリーチェの体が引き絞られる。精神力による念動力だ!


(ギアの精神力を見誤っていたっス、精神攻撃をしたのは失敗だったっス)

(死ね)


 握りつぶした。白黒の飛沫が辺り一面に飛ぶ。痛みが薄らいでいく。


(ギア、助かったよ)

(たくこれくらい自分でなんとかしやがれ)


 光が強くなる。意識が覚醒する。


「はぁッ!! はぁはぁ!! くっ! おええ!」


 皆も起き上がっていた。顔が青ざめている。周囲には吐瀉物が散乱している。悪臭がする。糞尿を漏らした者もいるようだ。そりゃな、俺も肉体があったら……いや肉体があれば効かなかったな。


 俺は台座から飛び降りる。口から食堂を通って胃袋へって感じだ。10数メートル落下したがこんなのへっちゃらだ。司令室に戻って周りを見渡した。


「みんな無事か!」

「……おういえ」

「うにゃぁ、死ぬかと思った」

「エリー」

「ジゼルぅ」


 周りを見る、皆最悪な顔をしているが死人は出ていないな。よかった。


「おらてめぇら起きたなら仕事しろ」

「病み上がりの連中になんてこと言うんだ!」

「戦闘中だ、これくらいでごちゃごちゃ抜かすな」

「戦闘中って、もうスカリーチェは倒しただろ」

「前を見やがれ」


 モニターを見る。海が真っ赤に染まっていた。


「何が起きている」

「スカリーチェは生きている」

「なんだって」

「もう逃げ場はねぇ、やっかいなスキルもキラードラゴンの両手両足を使って4つとも封じた」


 右目の致命傷を受けてもズレた場所に全快して再出現する、因果転生の魔眼。

 人々を狂気に陥れる、左目の狂気汚染の魔眼。

 力差を無くす、苛烈平等の右腕。

 そして海を支配する三又槍トライデント


 これだけ封じたんだ。それに精神世界でギアに致命傷を負わされたのを俺は確かに見た。


「もう長くねぇだろうが、気を引き締めてかかれ。仕事ってのは最後が悪けりゃ全てダメになるもんだ」


 キラードラゴンは使えなくなった四肢を体に密着させて、ウミヘビのように海を進む。スカリーチェが海に漂っていた。ここからではその表情を確認することは出来ない。


「クスクス」


 しかし、分かる。というのも、それしか俺はスカリーチェの表情を知らない。


「クスクス」


 顔を上げる。血だらけだ。目からも口からも、血が出ている。


「魔女に火刑とは粋なことをするっスね」

「バーガー、早く口に戻って来やがれ、これ以上なにかされても厄介だ、トドメを刺すぞ」

「あ、ああ、わかった」


 降りてきた台座に乗って再び口に移動する。


「はぁ、まさか私がここまで追い詰められるとは、これを使うことになるなんて思わなかったっス」

「まだ何か隠してやがるな、早くしろ」

「よし! もう撃てるぞ!」


 キラードラゴンの口が開かれる。今こそ撃つときだ。

 もう躊躇はない。俺がスカリーチェを……殺すんだ。


「『勇者斬ブレイブスルー』」


 剣から超聖属性魔力と俺の精神力が照射される。海を裂き、瞬く間にスカリーチェを焼く、回避する素振りはなかった、ただスカリーチェは体の白い方の手を向けた。















「気合武装『黒白装甲』」























 世界が白黒になった……。古いテレビみたいな景色になる。


「クスクス、これじゃあそれもただの白っスね」

勇者斬ブレイブスルーが弾かれたポメ!」

「そんな馬鹿な、なんだこれは」


 俺の体も白になった……


「私の世界へようこそ、この世界では全てのものが白か黒かに分かれるっス」

「これは現実改編クラスの気合武装ポメ!」

「なんだそりゃ、俺にも分かるように話せ」

「それはいま解析中ポメ!」

「状況的にはバーガーの決め技が効かなかった感じか?」


 違う、勇者斬ブレイブスルーが消えたというより白になった。出ていたんだ。魔法は発動していた。当たりもした、しかしどういうわけか、あのネスにも対抗できた魔法が、ああも容易く弾かれるなんて。


「こんなことって……化物だ」

「ぼさっとしてんな次の手を考えるぞ」

「クスクス」

「来るぞ! てめーら!」

「そんな時間は与えないっス」


 スカリーチェは手のひらから黒い剣を作り出すとキラードラゴンを切り裂いた。切り裂いたのだ。


「(な)んだその剣は、このキラードラゴンのボディを斬っただと」

「そんなのただの白いだけのガラクタじゃあないでスか」

「何が起こってやがる」

「これを使うと世界が滅ぶことになるっス。ほら」


 白黒の海が避けていき谷のようになる。


「神クラスと認識されちゃいましたので『神々の誓約』が発動しちゃったっス」

「ギア! 解析が終わったポメ! この能力は世界を白か黒かに分ける能力だポメ!」

「なんだそれは」

「どんな強力な魔法や機械も白と黒に分けられて統一されるポメ!」

「マジで1ミリも理解できねぇぞ!」

「性質的には黒と白に世界を分類するっていう気合武装だポメ!」

「魔法の属性も何もかもか? このキラードラゴンのボディが白になったくらいだ、全て仕分けされててもおかしくはねぇか、で、それがどうしたカラーリングを変えるだけなのか?」

「それより先はまだ分からないポメ!」

「現場に出てやるしかねぇか、装甲が無駄な以上中にいても無駄だ、キラードラゴンから出るぞ」


 おいおいまだ状況が把握しきれてないんだぞ。


「そんなことしたら斬られるぞ」

「バカが、じゃねぇとぶち殺せねぇだろうがよ。野郎どもはいつでもキラードラゴンを動かせるようにしておけ。戦えるやつは着いてこい来い」


 サガオが立ち上がる。キラーキラーマークIIに形を戻してヒマリを吐き出した。


「おにぃちゃん!?」

「行ってくる」

「やだ! 私も行く! 中に入れて!」

「すまないヒマリ、俺は胴体を斬られても平気だがヒマリはそうじゃない」

「そんな、やだよ! もう一人にしないでよ!」

「一人にさせないためにここで戦うのだ。分かってくれヒマリ」


 サガオは優しくヒマリの頭を撫でると、俺たちと合流する。


「バーガー、俺も戦うぞ」

「待ってたよ、サガオ」

「ワシも行くぞ」

「ルフレオ」

「ここまでいい所がないからのぉ、やっと役立てそうじゃわい」


 俺はサガオに乗せてもらう。そしてルフレオとギアだ、俺たち4人でスカリーチェを討つ! アヴドキアが呆れたように言った。


「まったく、こんな絶望的な状況でよく戦おうなんて思えやがりますね」


 ポラニアが書き殴りながら言った。


「ギアこそが絶望。絶望が絶望することはないポメ!」

「理解出来ねぇです」

「それは君が絶望ではないからだポメ」


 エリノアの姉妹たちは大人しくしている。と言うか絶望した顔をしている。普通はこうなるんだろうな。俺だって顔が引き攣りそうだ、でもパンにシワがつくからしない、これから出るメンバーの顔に迷いはない。


「おら行くぞ仕事だ」

「ずっと思っていたのだが、こういうときは任務と言うのではないか?」

「ワシは使命だと思っとるぞい」

「バカが、任務だ使命だなんて言葉よりも仕事の方が皆やってて凄いことだろうが」


 俺たちは外に出る。海底に降り立つ、海が割れているから渓谷の底にいる感じだ。海水は白と黒に分かれている、海流が黒くて分かりやすい。


 ギアの体は白だ。灰色だった体が真っ白になっている。サガオも白だ。ルフレオは隕石鎧を脱いだ。使い物にならないようだ。ルフレオの体も白い。物理法則と己の肉体のみしか今は頼れない。俺も白い。みんな真っ白だ。しかし一つだけ黒いのがある、ギアの持つKILLソードは黒いかった。どういう基準で色分けされているのか気になるな。サガオの武器は白いから完全なランダムなのだろうか? だとするとえらい白に片寄ったな。


「ここからは魔法、技能スキルは使えんぞい。ワシの隕石魔法がまったく発動せんわい」

「俺の超直感も上手く機能しなくなっている」

「けっ、やっぱり機械作っといてよかったな」


 武闘派3人組だ。


「サガオ、俺はいつでもここにいるからな」

「ああ、勇者を乗せた最強の機体として、将来の童話に書かれることになるだろう!」

「ちぃ、無駄口叩いてんじゃねぇぞ、魔改造しやがって。まず俺が行く、そのままいけるなら俺が殺す」

「待つのだ、スカリーチェだけ魔法や技能(スキル)が使えるかもしれないのだぞ」

「だからその時はその時だっつってんだろ」


 ギアが走っていく。やはり魔法加速がないためスピードは落ちる。しかし重量こそ感じさせるが遅いわけでは無い。むしろこの方が体を動かしやすそうだな。白黒の大きな鎧に包まれたスカリーチェは純白と漆黒の双剣を構えている。右手側が黒で左手側が白だ。鎧の別れ方と一緒だな。


「死ね」

「クスクス」


 KILLソードがスカリーチェの右肩にヒット。ノーガードだ。


「斬れねぇ」

「お返しっス」


 漆黒の剣がギアの体を紙のように斬り裂いた。


「ギア!」


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