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第80話 大戦争6

挿絵(By みてみん)



『バーガー、Mソードを構えるの!』

「わかった!」


 咥えていたMソードを筋肉の精霊に持たせる。


「しかしだなスー、Mソードでも魔王にはダメージを与えられなかったぞ」

『Mソードはまだ覚醒していないの。でもそれでもやるしかないの。剣豪たちの魂よ! 力を貸して欲しいの!』


 『おおっ!!』っと軍勢の雄叫びが背中を押す。焦って振り返っても誰もいない。オバケか?


『いまバーガーにはこの星で生まれ死んでいった剣豪たちの技術が宿ったの! 思いっきりぶちかますの!』

「そういうことか、わかった! 剣は不得手だったが、そんなに頼まれたらメニューに載せないわけにはいかないな!」


 「剣か」と魔王が呟いた。


「我は龍至上主義なきらいがある。我にとって龍以外のものなぞ劣るものでしかない。故に戦いでもこの肉体を使うが、そんな我でも業物の一本や二本は持っているぞ」


 魔王が手をかざすと一振の剣がその手に握られた。


召喚魔法(サモンマジック)で武器を召喚したの』

「なるほど、あの剣は?」

『ネスの鱗を使って作られた神剣なの。名前はDソード』

「それはヤバそうだ。でも」

『うん! いけるの!』


 『おおおお!!』背後の声が一層強くなる。こんな声が聞こえる。「一刀流か」「相手の流派は」「知らぬ。対応せよ」「呼吸じゃ呼吸」「生ある時は届かなんだ、伝説の剣を振るえるとは」「流派と言うよりも龍派だな」「ならば儂じゃ龍なら何百と切り殺したぞ」「おお、おお、順番だ」「おい、なるべく長く戦ってくれ、剣を振りたい剣馬鹿はいくらでもいる」「おお!!」「まずは俺だ」「いや俺だ!」「儂じゃ」「おいだ!」「おらだべ!」もちゃもちゃしてるが魔王の殺気を感じて誰かが前に出る感覚がした。


「1番手が決まったみたいだな、みんなでいくぞ!!」


 剣豪の技を借り受ける! 筋肉の精霊の体が勝手に動く、剣豪の魂が憑依の要領でボディを操作しているんだ。筋肉の精霊 (剣豪バージョン)が叫び、呪文を女神ボイスで発動させた。


「うおおーーッ!! 『武器召喚ウエポンサモン』」


 空間に剣やら槍やらが召喚される。


「『武器自由操作ウエポンザファンネル』」


 それらが意思を持ったように俺を取り囲む。


『これは剣豪たちが実際に使っていた武器なの。大賢者の魔法で呼び出してくれたの!』


「よし!」


 適当に剣を取る。腕で剣なんてまともに振るったことがないが不思議と馴染む。これも剣豪たちが憑依してくれているおかげか。Mソードと適当に取った剣で二刀流の形となる。


「二刀流か。来るがいい」

「おお!!」


 近くにあるグレートソードに飛び乗って、それをサーフボードのようにして空中を移動する。周囲の剣たちも俺に追従する。魚群のように剣と一つの生物となった俺は、そのまま魔王を飲み込もうとする。魔王は剣の切っ先をこちらに向けた。


龍流(りゅうりゅう)奥義。剣吐息ブレイドブレス!」


 突き出された剣から魔力が放出される。レーザー光線よりも速い。かわせない。


「く!」

『大丈夫なの!』


 筋肉の精霊が両手に持った剣で剣吐息ブレイドブレスを凌ぐ。引っ掻くような悲鳴に似た音が響き渡る。受け流した。


「ほう、一本ではダメか。ならば挟まれたならどうする、龍流奥義ーー」

「こっちも攻めるぞ! 猛火流! 火炎斬り!」

剣翼ブレイドウィング!」


 魔王は一振で両サイドからカーブする斬撃を飛ばしてきた。それは龍の翼のはためきのようだ。あれに包まれれば消し飛ばされてしまう。しかしこっちは火炎斬りだ。猛火流が最初に習い最後に使うとされる。ポピュラーでいて味わい深い技だ。この火炎斬りは魔法の炎を纏いそれで斬るという単純な技だ。単純ゆえに切断力は抜群に高い。こういう鍔迫り合いの局面でも強い。ポピュラーということは使い勝手がいいということだ。しかし。


「ぐ、ぐぐ」


 押されている。純粋なパワーで押されている。どうすれば、もっと踏ん張ってみるか? 枯れた声が聞こえた。


「童、力で返そうとしてはダメじゃ」


 次は若者の声だ。


「流水流、その心得、流れるは水が如く……」


 向かってきた魔力が体をすり抜けるようにして後方に流れていく。


「魔力の動きは水と似ておる。つまり」

「泳げるってことか!?」

「は?」


 筋肉の精霊は魔王の魔力に飛び込みバタフライする。魔王が目を見開いた。


「我の魔力を受け流すばかりか、それに乗るというのか?」


 枯れた声が呆れたように言った。


「童、ワシが言いたいのは……いや、でも出来とるしな……なにこれ」

「次は!? 次の手を!」

「させるか、龍流奥義、剣尻尾ブレイドテイル


 これは!?


「龍の尻尾はな、どんな鞭よりしなやかで、どんな槍よりも鋭く、どんな剣をも凌駕する。言わば最強の一振なのだ」


「これは受け流せないぞ」「見りゃわかるあれは水の性質なんかこれっぽっちも持っちゃいない!」「ならば火か?」「あほう、消されるわ」剣豪の魂たちがざわめいている。最強の一撃を超えられる技はないのか!?



「おっほん。勇者バーガー」


 先生っぽい諭す話し方だ、一体この人は?


「私は、刀鍛冶の神、ブレイドゴッド。Mソードを打ったものです」


 なに!?


「堂々と構えなさい。Mソードはこのためにあるのです。他の剣たちも一緒に、相手が最強であるならば、こちらは数でその差を埋めましょう」


 さらに、いく千いく万の剣が召喚される、筋肉の精霊はMソードのみを握り突撃する。


「いくぞおおおおおおお!!」


 周りの武器が魔力を放出する、俺を包むそれは、勇者斬ブレイブスルーと酷似した斬撃となる。しかし単純に質量が違う。スーの魔力、具材の力、剣豪たちの技。みんなの力が纏まって放たれたんだ! Mソードの切っ先を先頭にそのまま突っ込む。剣尻尾(ブレイドテイル)と衝突する。


「うおおーーッ!!」


 驚くことにこれでも剣尻尾ブレイドテイルの方が強い。しかしすぐに押し負けない、このMソードは刃こぼれ知らずだ!


「……うおおーーッ!!」


 ぐぎぎ、体が消し飛びそうだ! 否、実際に体のあちこちが魔力分解を起こしている。


『超再生!』


 瞬時に回復する。


『自己回復力に特価した者たちの力を借りたの!』


 これなら持ちこたえられる、魔王の剣尻尾ブレイドテイルが終わる。


「凌ぐか、やるではないか」

「くっ」


 魔王にはまだまだ余裕がある。


『バーガー、ここでネスの特性を説明するの!』

「今更!?」

『お、思い出したの。まずはあの十二の暗黒石を破壊するの』

「やっぱあれそのままはマズいのか」

『ネスは相手の能力を下げることが得意なの、暗黒石の結界はぼくたちの能力を下げているの』

「真っ先に壊すもんじゃないか!」

『それともう一つ説明するの。ネスの弱点なの』


 魔王の弱点?


「弱点属性とかあるのか?」

『聖属性魔力に弱いけど、あんなに強かったらどれも一緒なの。さっきのぼくたちの攻撃も聖属性なの』

「なるほど、属性の不利はないもんと考えた方がいいか。じゃあ何が弱点なんだ? 食べられないものでもあるのか?」

『うーん、あるかもだけど、アレルギーはないと思うの。ネスの弱点は密度なの』

「密度?」

『ネスは文字通りこの宇宙全ての暗黒魔力を支配しているの。暗がりは全てネスのものなの』

「普通に考えてヤバイよなそれ」

『でも裏を返せば、それだけ膨大な魔力は集めるのが大変なの』

「所有してても遠くにあると使えないってことか?」

『そんな感じなの。でもそれをあの暗黒石の結界が解決してるの』

「あれが効率よく魔力を凝縮してるってことか」

『そうなの! 自身を強くして他者を弱くするの!』

「よし、壊すぞ!」


 物に当たるのは得意だ!


「正攻法か、正しいな。まあ正しい攻め方だから正攻法と言うのだろうがな」


 魔王は皮肉っぽく言う。


「しかし、我を相手取りながら暗黒石を破壊できると思っているのか? 相手との実力が離れすぎていれば正攻法も邪道となるぞ」

「う、うっさいなもー! それくらいしか勝ち筋が見えないんだよ」


 筋肉の精霊が空中を駆ける。目指すは1番近い背後の暗黒石だ。ビーチフラッグに例えるなら魔王との物理的な距離がある分、旗(石)を取りやすくなる。


暗黒鎖ダークネスチェーン

「ぐっ!?」


 筋肉の精霊の首、手首、足首に極太の鎖が魔力生成される。高速移動中の筋肉の精霊を捕らえるとは、なんたる生成スピード。だがこの程度で止まる筋肉の精霊ではーー


「なんだ、力が……」


 筋肉の精霊が萎び始めた。空気の抜けたビニール人形のようだ。


「この鎖に捕えられた者は魔力を維持することが出来なくなる」

「く、スーなんとかならないか!?」

『無理なの! ネスの言った通りこの鎖は魔力を霧散させるの! 魔力支配率が5パーセントまでさがっているの!』

「こんな鎖!」

「無駄だ、それに捕まった時点でお主らの負けだ」

「ぐぎぎぎぎ!」

「封印してやろう。殺せば復活するうえに鎖からも抜けてしまうからな」


 背後から魔王が近づいてくる。ま、まずい!


「う、うおおおおお!!」

「無駄だと言って……む、来たか」

「はーっはっはっはっはっはー!!」


 高笑いとともに何かが飛んでくる。あれは火の玉だ。暗黒魔力で暗くなった世界を照らす火の玉が、俺たちのところに飛んできた。


「しゅたっ!!」


 火の玉が渦巻き消える、中から現れたのはチャイナ娘? 魔王はつまらなそうに言った。


「『神々の誓約』が発動したか」

「よ、久しぶりだな!」


 神様が荒ぶったら他の神たちがそれを粛清するという誓約か。つまりあの人は神クラスの何かだ!


「誰なんだ?」

『あの子はプロミネンスノヴァドラゴン、炎の神なの』

「ネスが神の力を使ったから制裁しに来たってことか」

『たぶんそうなの、でもよりにもよってなんでノヴァなの』

「なにかまずいのか?」

『あの子は『とんだ無知さん』の語源となった子なの』

「つまりそれって」

「んんんんん? くんくん、この甘ったるい匂いはスーだな!」

「おわ!」


 目の前にノヴァが来ていた。

 一瞬で火に包まれて消えて、一瞬でここに炎と共に出現した。


「……」


 あいては神クラス、下手なことをして気分を害するわけにはいかない。ノヴァはマジマジと俺を見つめてくる。


「スー、お前……」


 ドキドキ。


「イメチェンした?」

「違ぇよ!」


 無理! 突っ込まざるを得ない! ノヴァはキョトンとしている。


「違うのか?」

「厳密にはな、スーは俺の中にいる」

「じゃあお前誰だ!」

「俺は勇者だ!」

「ゆうしゃ!?」

「そうだ!」


 ふ、勇者はすごいんだ、万国共通語だ。


「ゆーしゃってなんだ!」

「とんだ無知さんだなあんた!」

「また言われた!?」


 マジでとんだ無知さんだ……この人強いのか?


「あれ、私何しに来たんだっけ?!」

「おい、スー、この神様大丈夫!?」

『だいじょばないの』

「お主ら、いい加減にしろ」


 魔王が言うとノヴァがハッとする。


「あ、えっと、確か、ネ、ね、ねー、ね?」

「ネスだ、スーの兄の」

「あー! お久しぶり! 何してんの?」

「話の分からんやつは下がっておれ、と言いたいが、お主が知らずとも、神々の誓約は発動している」

「思い出した! そうそう! 粛清しなきゃだっけ? ちょっと待って粛清ってなに?」

『ノヴァの頭の中には知識の焼却炉があるの!』

「まあよい。燃える頭でいつまでも考えているがいい」


 魔王が筋肉の精霊に手をかざす。


暗黒球ダークネスボール


 発射された暗黒球ダークネスボールのサイズはボーリング球サイズだ。これくらいなら手足を封じられていようと頭突きで応戦できる。


「ふん!」


 俺の頭が勝った。


『後ろなの!』

「な!」


 背後に魔王が瞬間移動している。ピタリと背中にくっつかれた。


「不死ならば精神のみを攻撃して、勇者のみを精神崩壊させてやろう、物言わぬ廃人になるがいい」

「なにを、やめろ!」


 ダメだ、鎖で縛られていて動けない!


「プロミネンスキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーク!!!!!!」

「ぐ」


 ノヴァが届かないはずの位置から、無茶苦茶なモーションでかっとんで魔王を殴り飛ばした。うん、殴り飛ばした。パンチだどうみても。どう見てもキックじゃない。


 魔王が煩わしそうに言った。


「今のはパンチだ、とんだ無知さんめ」

「あー! そっちだったか! 当たったのに外した!」


 ノヴァは指を鳴らして悔しそうにする。というか魔王にダメージを通した?! いや、まず聞かなきゃならないことがある。


「なんで助けてくれたんだ?」

「友達だから」

「は?」

「スーは私の友達、スーの友達っぽい君も友達」

「はは」


 なんだこの神様、良い人だ。


「協力してくれるんだな」

「なにを?」

「魔王を倒すのをだ」

「え?」


 そこはいい返事を……


「我を前にして長話とはな」


 魔王が怒ってる。気持ちはわかります。


「ノヴァ、頼みがある」

「なになに? なんでも言ってよー」

「この鎖を外してくれないか?」

「え、どうして?」

「動けなくて困ってる」

「そうなんだ、そういう趣味なのかと思ってた」

「そういうことは詳しいのな!」


 ノヴァは鎖を拳で砕く。色々すごいなこの子。


「よし、俺たちは魔王を倒さなくちゃならない」

「どうして?」

「そうしないと人間が滅ぶからだ」


 ノヴァは顔にクエスチョンマークを浮かべている。だからどうしたと言わんばかりの困り顔だ。


『もっと簡単に言わないと伝わらないの』

「俺たちを助けてくれ!」

「もちろん!!」

「ふん、神を手懐けて形勢逆転したつもりか?」

「来るぞ! ノヴァ、周りの暗黒石を壊せるか?」

「え?」


 そんな顔するなよ。


「あの、ほらあれ、浮かんでる黒い石だ、そうあれ、あれがあると俺たちはすごく困る。だから壊してくれ」

「もっとわかりやすく!」

「壊して!」

「わかった!」


 ノヴァがポーズを決める。


「太陽フレア!!」


 ノヴァの体から大量の火属性魔力が放出される。ちょ、ちょっと待て、この威力は!?


「し、死ぬ」


『しようがないの! 手加減を知らないの! 範囲内のものは全部攻撃するの!』


 今ので4回死んだぞ……


「スーは相変わらず凄いな! 私の火で平気なんだもんな!」

「いや、平気じゃないが……」


『ぼくがノヴァの友達って言うのは、ノヴァの炎で焼き殺されても復活してたからなの』


 そういうことかよ!


「スー?」

「なんでもないし、話してるのはバーガーだ」

「そうなん? ほらバーガーあれ壊してあげたよ」

「マジか」


 暗黒石が全て溶けている。弱体化されていたはずなのに全部壊すとか、なんて馬鹿火力なんだよ。


「追い詰めたとでも思っているのか?」


 魔王は平然とそこにいた。太陽フレアを喰らっても平気なのか。


「そうだ、下の人たちは大丈夫なのか!?」

『ネスが相殺したの』

「え?」

「ふん、下には我の部下もいる」


 優しいな。なんでこんな人と争わないといけないんだ。


「なんとも気の抜ける戦いだな。神々の誓約により、これよりは神々の戦いになるというのにな」

「どういうことだ?」

「早く我を倒さねば各地より神クラスが集まる。そうなればこの地域一帯の生物は死に絶え、数千年は草木の生えない不毛の地となるであろう。魔界のようにな」

「つまり、この状況からさらにタイムリミットまでついたってことか」

「お主が死んでくれれば我もここに留まるつもりはないのだ、既に荒れ果てた魔界で神々を屠りさる」


 みんなの命か、俺の命か、いや、俺が死ねば結果的に人類は滅ぶ、滅ぶのか? アイナたちだけでも、逃がしてやりたいな。


『バーガー、諦めちゃダメなの』


 この状況で諦めるなって。


「俺はこんなにも弱いーー」

「バーガー様!」

「ア、アイナ!?」


 気づけばアイナが俺の前にいる。魔力を固めて足場にしてこの高さまで来たんだ。


「どうして、ここは危険だ、戻れ」

「一緒に戦います!」

「……は、はは」


 そうか、諦めてるのは俺だけか。それはかっこ悪いな。


「よし、魔王を倒すぞ!」

「はい!」

「いまさらなんだ、脆弱な人間の来る場面でもないだろう」

「いいや、場面だとも、力がみなぎってきた!」

「それも嬉しいですが、今回は心の支えだけではありません! バーガー様、見ててください」

「ん?」


 アイナの周りに緑色の魔力が渦巻いた。魔力に濃い色がついている。まるでルフレオや三騎士が扱う魔力のようだ。そして叫んだ。


「気合武装! 『深緑装甲』!」

「な!?」


 アイナはエメラルドのように美しい鎧を纏った。

 魔力と精神力で鎧を魔力生成したんだ。


「す、すごいぞ! 間違いなく気合武装だ! 何時からだ!?」

「隠しててごめんなさい。ずっと隠れて練習してました。成功したのはこれが初めてです、頑張るバーガー様を見てたらできる気がして」


 アイナは照れくさそうにハニカンだ。


『すごいの! それができる人めったにいないの!」


 ああ、アイナはすごいとも。


「ほう、その歳で気合武装に達したか、余程いい出会いをしたな」

「はい! 今までの全ての出会いに感謝しています!」

「潰えるには惜しい輝きだ。故に暗黒に染めねばならん。お主、名はなんという?」

「アイナ・フォルシウスです」

「そうか、アイナよ。お主は世界平和のために勇者共々滅んでもらうぞ」

「アイナ、来るぞ!」

「はい!」


 アイナの深緑装甲の篭手の部分が光る。弓が魔力生成された。


「深緑の弓!」


 矢も魔力生成される。完全に自分のものにしている。これなら……


「ノヴァ、お願いがある」

「なに!?」

「なんでそんなに驚いてんだよ。いいか、手を出さないでほしい」

「どういうこと?」

「俺とアイナのコンビネーションを見せてやる!」

「? ……!」


 ノヴァは意味深にうなづいた。絶対分かってない。


「いいか、手を出さないでくれ、魔王を倒す前にアイナが死んでしまうからな。そんなことになったら絶対に許さないからな」

「とにかく手を出さなきゃいいんだな!」

「そういう事だ! 行くぞアイナ!」

「はい!」


 アイナは足元に魔力を固めて空を走るのに適応している。カッカッカッと階段を上るように空を駆け登る。俺も走る。魔王相手に遠距離はダメだ。有効なのは覚醒してないとはいえ魔王特攻のMソードだ。アイナが走りつつ矢を射る。牽制だ、魔王の体はMソードでも断てないからな。でも何かする必要がある、魔王は避けることなく掌でそれを受け、て……え?


「む?」


 な、な。


『まさかなの!』

「我の肉体を貫くか」


 魔王の掌にアイナの放った矢が突き刺さっている。魔王は矢を引き抜き傾けたりしてまじまじと観察する。


「この魔力はまさか」

「バーガー様。隠してたことがあります」


 アイナは困り顔で言った。


「私も勇者なんです」







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