第6話 蜥蜴軍団1
翌日、マオタ街を中ほどまで進んだところで、そこで遂に例のものを発見する、あるのは知識として知っていたがこうしてみると感慨深いものだ、異世界転生者には欠かせないであろうゲームやマンガのファンタジー世界によくある建物だ。
「あれって冒険者ギルドだよな」
「んにゃ、そうだよ。よく知ってるにゃ」
「む、昔な」
「ふーん、ま、今のミーたちには関係のにゃいものだにゃ」
アイナの耳がピクピクする、これは興味ある時のピクピクだ。
「ギルドってどんなところなんですか?」
「アイニャは知らにゃいのか、んとねギルドってのはにゃー」
「ラップバトルするところ」
「そうそう、って違うよ!初めてジゼルを連れていったとき冒険者とディスり合い始めちゃってさ、仲裁するの大変だったんだからにゃー」
何してるのこのラッパー。
「でにゃ、ギルドってのは腕っ節に自信のある奴に、魔物退治とか、護衛任務とか、能力に合った雑多にゃ仕事を紹介している場所だよ。かくいうミーも王都にある冒険者ギルドで『勇者を王国まで送り届けろ』って依頼を受けているよ」
冒険者ギルドで依頼を受けたのか、俺も漫画とかゲームでしかギルドの知識はなかったが、どうやらあまり変わらないようだ。勇者もいいけど冒険者にはやっぱり憧れがあるな。
「ジゼルは王国魔導師だろ? どうしてエリノアについてきたんだ?」
「私はおじいちゃんの言っていた魔法陣に興味があってきただけ」
そういって、ジゼルは俺の体をジロジロと見てくる。俺が見ると嫌がるくせに、ずりぃぞ。
「一つ疑問があるんですけど、ルフレオさんが魔法使いで、孫のジゼルが魔導師なのはどうしてですか?」
「おじいちゃんは王国に仕えなかったから魔法使いのまま。私は魔法の研究のために国家試験を受けた。そして王さまに雇われて王国魔導師になった」
なるほど、魔法が使えてなおかつ国に認められると魔導師に認定されるのか。王国魔導師は国家資格なのね。
「簡単そうに言ってるけどにゃ、魔導師ににゃるにも条件があってにゃ、オリジナルの魔法を持っていにゃいといけにゃいんだよ」
「オリジナルの魔法って?」
「私が使える固有魔法は歌詞魔法。元はおばあちゃんが開発した魔法。だけど今はもう使えるのはもう私だけ」
ジゼルの表情がやや暗いものになる。ルフレオが言っていたが占いバァさんが死んだのは結構前だったはず、時期的にジゼルはおばあちゃんと会ってはいない、だが身内が殺されたんじゃ気分も悪くなるだろう。
「そうか······、それはどんな魔法なんだ?」
「そのうち見せる」
「魔物との戦闘ににゃれば使うから楽しみにしているといいよ。さ、いつまでもギルド前にいると冷やかしと勘違いされる、行くよ」
後ろパンを引かれるが、俺はしぶしぶ冒険者ギルドを通り過ぎた。
「あ、魔物だにゃ」
マオタ街を出立して一週間、まだ次の村に着かない俺たちはこの旅初めての魔物と遭遇する、第一村人発見ならぬ第一魔物発見だ。先頭のエリノアが先に気づいたのでまだ魔物はこちらに気づいていない。どうインタビューしようか。
「あれはなんの魔物ですか?」
「あれは蜥蜴魔法使いだにゃ、杖を持っているだろ? あの杖の先から火球を飛ばしてくるから気をつけるんだよ」
「では、私が矢で先制攻撃します」
「ヘイヨー」
「ジゼル!?」
気づけばジゼルが蜥蜴魔法使いの前に肩で風を切りながら近づいていた。
「しまった! 相手が魔法を使う奴だとああにゃるんだった!」
「どうなるんだよ!」
「ラップバトルだ!」
ジゼルはマイク状の杖を口元に当てて、蜥蜴魔法使いにラップバトルを仕掛ける、どこからともなくビートが聞こえる、マイク杖でやっているのか?。
「へいトカゲ野郎お前の纏うローブ、マジで臭すぎて鼻を覆う、そのチンケな杖はなんだ? 風の強い日に折れた枝か? そんなモン持ってもしかしてネタか?」
「シュル?」
蜥蜴魔法使いはポカンとしている、困惑気味に舌をチロチロさせている、すると。
「返せないなら吹き飛びな」
「ジャアアア!?」
蜥蜴魔法使いの周りに暴風が発生する、暴風は蜥蜴魔法使いを空高く舞いあげる、あとは重力任せだ、硬い地面に叩きつけられた、どう見ても即死だ。
「名前だけライムな野郎だったな、いえあ」
ジゼルは腕を組んでズーンとポーズを決めている。
って、え?いま、何が起きた? 今の魔法は見た感じ竜巻だ。ジゼルが蜥蜴魔法使いをディスったら、魔法が発動した?
「ジロジロ見ないで」
「あ、すいません。じゃない、今のはどうやったんだ? 呪文も唱えてないのに」
「呪文なら唱えた、歌詞の中に全てが詰まっている」
「バーガー、理解しようとするのはよしといたほうがいいよ、歌詞魔法を継承したジゼルにしか理解できにゃいからね」
「そんなことない。ラップとは自由」
「はいはい、それはそれとして、この魔物にゃんかもってにゃいかにゃー!」
そういうとエリノアは潰れた魔物の死体を漁る。
呪文を唱えずに魔法を使った。否、呪文は唱えたらしい、でも竜巻なら竜巻と唱える方が早い気も······。
俺の怪訝そうな表情に気づいたのかジゼルが解説してくれた。
「詠唱時の抵抗、魔法の精度、消費魔力の削減、その他もろもろ、歌詞魔法には魔法の全てが詰め込まれている」
「複合魔法みたいなもんか、普通の詠唱と随分違うんだな」
「世界で主流なっている簡略詠唱魔法はただのスタンダード。それに簡略詠唱なんて昔の魔導師が編み出した流派の一つにしか過ぎない。変わり種の無詠唱魔導師だってそう。本来の呪文は本一冊分くらいある」
「それを短くしたなら偉業なんじゃ」
「私のはその本を5、6冊並べてリミックスさせているようなもの」
「あ、それは凄い」
歌詞魔法、侮れないな。
タスレ村を出てから2ヶ月が経過した。
いくつかの街と村を経由しつつ旅は順調に進んでいる。
「む、また魔物だにゃ」
「最近増えましたね」
ここ数日、魔物と出くわすことが増えてきた。しかも全てが同じ種族。蜥蜴剣士や、蜥蜴魔法使いといった、爬虫類系の魔物なのだ。
「バーガー様、射ますか?」
「うん、射れ」
「射ました。こうしていると、なんだか故郷でのことを思い出しますね」
俺は100頭以上の青猪が村を襲撃した時のことを思い出す、共通点がある『同種族の繁栄』ということは統率する親玉がいる可能性が高い。
「タスレ村でにゃにかあったのか?」
「はい、村の近くでも同種の魔物が大量発生したことがありました」
「ふーん、その原因は判明したのか」
「同族の上位に位置する魔物が原因でした」
「にゃるほどにゃ、その親玉が生態系を崩していたんだにゃ」
「はい」
「てことは、ここら辺にもいる可能性が高いにゃ、みんにゃ、気を引き締めていくよ」
エリノアの言う通りだ、気を引き締めていこう。いきなり100頭のトカゲが来るかもしれない。
「お、この蜥蜴剣士、いい鱗してるにゃ、何枚か剥いでおこう」
って、おい! いきなり油断したエリノアにツッコミを入れる前にジゼルが動いた。
「ニャッ!! ジゼルにゃにをする!尻尾を握るにゃんて! ぜったいにゆるさにゃい! ぜったいににゃ!」
「エリー、お金に目がくらんでる」
「うっ! ぐ、す、すまにゃい、ゆるしてほいしよ。今のセクハラはにゃかったことにしてやるから、ニャッ!! ニギニギしちゃダメにゃの!」
数日して村に着いた。看板に書いてある村の名前はツナコマ村、しかしいつも立ち寄る村とは様子が違った。門は突破され、家は焼き払われている。アイナは倒れている村人に駆け寄って抱き起こす。エリノアとジゼルは周囲を警戒してくれている。
「大丈夫ですか!」
倒れている村人はうめき声をあげて目を覚ます、目を見開いてアイナを見るや、消え入りそうな声で話し始めた。
「ま、魔物が攻めてきた、早く聖騎士に助けを······このままでは村が······」
「バーガー様、治癒魔法をお願いします!」
「任せろ」
俺は挟んである薬草を使い魔法を発動させる、常に5枚挟んであるので余裕がある。一度の治癒での回復量は完璧に把握している。うむ、これは3回必要だな。上薬草なら1発でもお釣りがくるがわがままは言ってられまい。
「『治癒』『治癒』『治癒』」
俺は萎びた薬草をぺぺぺと吐き出す。村人の傷は完全に癒えた。村人は驚きの表情で立ち上がった。
「お、おお! 傷が治った、ありがとう! エルフさんはヒーラーなのかい?」
「いえ、こちらの勇者様が貴方の傷を癒してくださいました、お礼を言うならバーガー様に」
「え、こちらの勇者?」
ここで初めて村人と目が合った。どうやら俺をオシャレアイテムか何かだと思っていたらしい。
「どーもー、バーガーでーす」
「あ、あ、あ、ありがとうございます。ま、まさか勇者様にお助け頂けるとは思ってもいなくて」
目が泳いでますよ、村人さん。
「話は村の奥にいってからだよ。外の近くはあぶにゃいよ」
俺たちは村の中心まで移動した、そこに広がる光景は俺達の村が青猪に襲われた時と酷似していた、仮設テントに怪我人を寝かせて女子供が手当をしている。
「どんな魔物でしたか?」
「全て蜥蜴系の魔物だった、火球を使うタイプと剣を使うタイプ、弓を使うタイプや、盗賊風の蜥蜴もいたな」
「……まるで冒険者パーティ」
ジゼルが呟く、そう完全に統率が取れている。それに青猪と違い職種の概念もある、役割分担している。これでは人同士の争いと同レベルだ。
ですが、もう大丈夫ですよ、勇者が来ましたからね。
「バーガーどうする?」
「俺は勇者だからな、全てを救うのみさ」
「えー、ミーは反対だにゃ、敵の戦力も分かってにゃいのに無謀もいいとこだよ」
「エリノア、私たちは勇者一行ですよ、困っている人がいたら助けるべきです」
「にゃー、わかったよ、納得するから、ちょっと打算させて欲しいにゃ」
エリノアは背中のリュックから算盤を取り出してわざとらしい動きで弾き始める。
「バーガーがここで村を救わにゃいと、王様がバーガーを勇者と認めてくれにゃくにゃるかも、そうすると任務自体がにゃかったことに······あ、やっぱり手伝うにゃ、人を救うってのは勇者の役目だよにゃ!」
「こいつぅ······」
こうして、俺たち勇者一行は蜥蜴退治に乗り出したのであった。
まずは敵を知ることから始めよう。ツナコマ村の村長に話を聞くことにした。俺の村の村長はヨボヨボのジィさんだったが、ここの村長は50代くらいのガッチリとした男だ。場所はツナコマ村の中心近くにある村長の家だ、木製で塔のような作りなので見晴らしもいい、最上階の3階で窓を開け払い見通しを良くする、日が沈んでいくのが見える、話を切り出したのは村長からだ。
「奴らが襲撃してきたのはほんの半日前の早朝です」
「すみません、俺たちの到着がもう少し早ければこんなことには」
「いえ、魔物が悪いのです」
「それで規模はどのくらいにゃんだ?」
「50頭は確実にいました」
「多いにゃ」
「どう攻めてきたんだ?」
「数個のグループに別れて襲ってきました、グループ事に剣士や魔法使いがいて統率が取れていました。こちらも警備兵はいましたが多勢に無勢、門を正面突破されて、それからは好き放題に」
「敵の種類と装備をできるだけ細かく教えてくれ」
「確認できた敵は蜥蜴剣士、蜥蜴魔法使い、蜥蜴弓士、蜥蜴盗賊です。剣士が多かったです、剣士は片手剣を、魔法使いは火の玉を飛ばしてきます。盗賊には裏手に回られて火をつけられました。弓士はそこまで上手くはないですが、剣士を相手にしていると、やはりキツイです」
「弓士は毒矢など、変わった矢を使っていましたか?」
「いえ、矢尻は鉄製の普通のものでした」
「アジトとかねぐらは?」
「わかりません、何せ今日の出来事でして······」
「50もの魔物が移動したんだから、痕跡と臭いは消せにゃいと思うにゃ、ミーにゃら追跡は容易いよ。にゃんにゃら今からでもアジトを見つけ出してくるよ」
「今は夜だぞ、朝になるのを待った方がいいんじゃ?」
「ミーは夜目が効くから遅れは取らにゃいよ」
「早い方がいい。明日の朝。また攻めてくるかも」
「確かにその通りだな、その事はこの後で決めよう。それで村長さん、奴らはなんで引き上げたんだ?」
「私たちもただやられているわけではなかったので、農民は農具で、戦闘経験のあるものは剣で、倒せはしなくても手傷を与えてなんとか押し返しました」
よし、情報収集はこのくらいでいいだろう。
「よく耐えてくれた。ここからは勇者一行の役目だ」
「かたじけない、必要な物は何でも用意致します。宿を用意しましょう、今日はそこで休んでください」
俺たちは民宿に泊まることにした。
「じゃ、偵察に行ってくるね」
「エリノア、気をつけろよ」
「大丈夫大丈夫、にゃれてるから」
「油断は死を招く」
「ジゼルぅー、不吉なことばかり言うもんじゃにゃいよ、まったく、じゃあにゃ」
エリノアが闇夜に消えた、斥候を頼んでいる間に俺たちは3人で会議を始める。人間だった頃の知識で一つ気になることがあった。
「もしかして、奴ら夜に動きか鈍くなるとかないか?」
「どうしてですか?」
「やつらは蜥蜴の魔物だろ、太陽の出ていない夜なら動きが鈍くなるかなって」
アイナは笑顔のまま首をかしげている。うん、分かってない時のポーズだ。俺がいない時に調べるつもりだろう、そんなことを思っているとジゼルが口を開いた。
「ならない。確かに爬虫類は変温動物。でも変温動物だっていざとなれば夜でも戦かう。特に蜥蜴系の魔物は体内に火炎袋という発熱器官を持ってる。氷魔法などを使わない限り。体温が上がることはあっても下がることはない」
「やっぱり前の知識とは差が出るか」
「前の知識?」
「いや、何でもない」
夜でもダメか、なら日中に攻めたいところだ、装備はどうするか。
「装備で欲しいものはあるか?」
「私はオーディエンスとマイクがあればいい」
「アイナは?」
「私はもう少し矢が欲しいです、相手の人数より多いのが一番でしょうけど、あまり多いと動きにくくなるので、もう少しだけ」
「矢だな、わかった、エリノアは帰ってきたら聞くとして、俺はそうだな、薬草あるかな」
アイナとジゼルが寝静まった深夜、俺がぼんやりと外を眺めていると、エリノアが偵察任務から帰還した。
「遅くにゃったにゃ」
「無事で何よりだ、それでどうだった、魔物のアジトらしきものは見つけたのか?」
「うん、見つけたよ、ここからだいたい3時間くらいのところに砦があって、そこに蜥蜴どもは拠点を置いているよ」
「砦だと?」
「よくわかんにゃいけど、多分人が作ったものだにゃ」
「まんまと利用されたってわけか、たく、管理はしっかりして欲しいもんだな」
砦か、少し不安になってきた、大丈夫かな、こっちはたったの4人だぞ。でもやらないと村が蜥蜴たちに蹂躙される、2度目はない。······やはり俺は勇者、試される者なのか······、やれやれだぜ。
「そうだ、必要なものはないか? あれば村でできる限り用意してくれるらしいぞ」
俺は薬草を10枚詰めていくつもりだ。
「そんにゃら、ありったけの金を」
盗賊かよ! 俺の視線に気づきエリノアは肩をすくめて訂正する。
「はぁ、だよにゃ、勇者一行だもんにゃあ。じゃあ少しばかりのお恵で」
「武器とかは要らないのか?」
「要らにゃいよ、この腰に差してる1本と、ジゼルから貰った魔法巻物があるからにゃ。逆にバーガーには、ミーの持ってる魔物の素材を挟ませてあげるよ」
「助かる、正直ヒーラー役はもうゴメンなんだ」
「曲がりなりにも勇者だもんにゃ、バフ要員くらいにはにゃってほしいものだにゃ」
エリノアはリュックから干し肉と、ごつごつした岩でできた皮、そして光沢のある赤い鱗を取り出した。
「これは」
「この干し肉が暴れ鹿のものだにゃ。んで、この岩みたいにゃ皮は岩狼の岩皮を干したものだにゃ、そしてこの鱗はだにゃあ······にゃんとあの有名な小龍の鱗だよ、とても高価にゃものだから、いざと言うとき以外は使わにゃいでほしいにゃ」
小龍! 現実世界でも聞いたことのある龍の名前だ。は、挟みたぁい! あの岩のやつも、ああ、早く早くッうっ。我慢なんてッできないよッ!
「あむ!」
俺はこのハンバーガーの体で唯一といえる至福のひとときを堪能する。今までにない魔力の詰まった具材に俺の頬パンがとろけそうになる。いかんいかん、そもそも鱗とか岩皮が食材判定かすら怪しいのだ。早く解析をせねば。
『岩狼から硬化を検出、3回使用可能』『小龍から火炎の吐息を検出、10回使用可能』
激怒の力は知っているので端折ったが、硬化か、ルフレオいわく、自身の体を硬くする魔法らしいな。物理攻撃に対してかなり強くなるんだったな、このパンの体では防御力不足だったからこれは助かる。
そしてなんとあの紫猪を一撃で屠った火炎の吐息が驚きの10発。連射できる高火力散弾銃だ弱いわけがない。よし、これなら十分に戦うことができるぞ!
あとは日々の鍛錬の見せどころだな、この体の動かし方もコツが掴めてきたところだ、ウィルの短剣でも1頭くらい倒しておきたい。
「バーガーいい顔しているにゃあ。やっぱり戦は損得抜きにして燃えるよにゃあ、やっとミーも剣を抜くことができるよ」
「エリノアって強いのか?」
実はこの2ヶ月、あのジゼルがディスり倒した蜥蜴以外、アイナが魔物をサーチアンドデストロイしている。全てヘッドショットで一撃なのだ、エリノアの出番のターンまで回ってこなかった。
この少女はジゼルと同じで俺とアイナより2歳年上らしい、つまり14才だ。俺の世界で14才といったら中二病が発症する時期だ。もしかしたらエリノアも中二病を患っている危険性がある。確認せねば。
「にゃふふ、ミーの実力をはかりかねているにゃ?」
「どうなんだ、なんか資格とか持っているのか?」
「資格? んにゃもん持ってるわけにゃいだろー、あ、でも冒険者ギルドではSランクっていう階級にいるよ。その上はにゃいから、凄いんじゃにゃいかにゃ?」
うーん、凄い! Sランクって漫画だとだいたい強いよな! でもまだ信じきれん!
「その歳でSランクまでいけるものなのか?」
「んー、AからSに上げるのは結構大変だって話はよく他の冒険者たちから聞くにゃ。ミーはEランクミッションをこにゃしてる時にたまたま現れた小龍を倒したからSランクににゃれただけだし、そういう飛び級もあるんだよ」
「1人で小龍をやったのか?」
「そうだよ、Eランクにゃんて1人でこにゃせるような仕事しか振られてこにゃいからエンカウントした時はさすがにビビったよ。さっき渡した鱗はその時のものだよ、他は全部売っぱらってしまったにゃ」
「今の供述に嘘偽りはありませんね?」
「くどいにゃあー! つかれたにゃー! みゃーみゃーみゃー!」
エリノアは電池の切れた玩具のように倒れて眠ってしまった。斥候で疲れていたのだろう、なんだか悪い事をした、明日になれば分かること無のに、俺ももう寝よう。この体にも睡眠は······必要だ······。