EX6 ハンバーガー転生14
「エルフ族の神さま!」
俺は驚愕の声を出す。これって神性調査の対象だよな。魔物を見つけるよりもさきに見つけちゃった。
「無礼を許してほしい、俺たちはアンタと争うつもりはないんだ」
「そうなん?」
手を放してくれた、話のわかる神さまみたいだ。にしても具合が悪そうだ。自己紹介を軽くしてから本題に入る。
「大丈夫か? アリサが鞭でやったのが痛むのか?」
「違う、そんなことで私がダメージを……うっ、ごほごほ……」
ラゼは咳き込む。これは異常事態だ。
「アリサ、どういうことかわかるか?」
「エルフ族の神さまが邪な魔力を持っているわけがない……たぶんだけど世界中に溢れた魔力には色々なものが含まれているから邪悪な魔力を吸い取ってしまったのかも」
なるほど、そういうことなら俺の出番だな。
「ラゼ、ちょっと手を貸してくれるか」
「いーよ」
素直に手を差し出してくれる。警戒心というものがないのか?
「手を挟むけど痛くないからね」
俺はバンズでラゼの手を挟む。そして解析を開始する。魔法の検出ではなく魔力のほうを調べる。『ゴッドエルフより闇属性魔力、神属性魔力、風属性魔力、水属性魔力、土属性魔力、光属性魔力を検出』割合が高いほうから教えてくれる。なるほど闇属性魔力が多いな。ならばと俺は念じる。
『闇玉』
美しい女神の声の詠唱と同時に闇魔力の塊が空に打ち上げられる。このままラゼの闇属性魔力を使い切ってやる。
「まだまだ闇属性魔力が溜まってますね、お客さん」
「おきゃく?……」
『闇闇闇闇闇闇玉』
「きゃっ!」
久しぶりの連打だ。まだまだ残っている。使用回数は……『闇玉の残り使用回数は4993回です』。目眩がした。
「辛くないか? いまラゼの闇属性魔力を抜いてるんだけど」
「ううん、大丈夫だ、気持ちいい」
「じゃあどんどん行くわよ!」
打ち上げ花火のごとく闇玉を発射する。光属性か火属性の魔法だったらもっとインスタ映えするんだろうな。青空に黒い煙が霧散していくだけだ。治療中にも話し続ける。
「私は風の神さまだから周囲の魔力の変化を受けやすい」
「そうなのか、ラゼはここにはずっといたのか?」
「いや、私は新しい神さまだ、この地はエルフ族の聖地、昔のエルフの神の魔力がここに再び集まって新たな私となった」
「南の森ってそんな神聖な場所だったのか」
「今となってはほとんど手付かずのようだな、少し寂しい、昔はここにもエルフたちがいたはずだ、たぶんそんな感じがする、古の記憶がそう言っている」
寂しそうだな。
「今はさ、あっちの草原の向こうで暮らしているよ」
「ほんとうか!」
「ああ、人族や亜人たちと仲良く暮らしているよ」
「おお、おお、そうかそうか」
「来ちゃう?俺たちの街に」
「いっていいのか?」
「もちのろんっすよ」