EX6 ハンバーガー転生10
ハンマーが来てから1年間、村は完全に街となった、書類上でももちろん街だ。インフラや、畑、細かいリテイクに施設の充実に人員の確保。エルフ族は新しい生活に戸惑いながらも慣れはじめていた。正直なところ同じ村の人たちとはいえメッチャ協力的で驚いた。渋々という感じもない、俺とアイナのお願いに潔く応えてくれる。
「……むむ、まずいな」
そんな夜、俺は薄暗いダイニングで家計簿を見ながら唸っている。
「バーガーさま?」
アイナが心配そうに覗き込む。
「ああ、アイナ、起こしてしまったかな?」
「いえ、バーガーさまが来なかったので迎えに来ました。それより何か問題がありましたか?」
「火の車だ……」
「え」
「家計簿が火の車だ」
「っ!?」
「ほら、俺たちって王様からのお金とかそんなに受け取らなかっただろ?」
「はい、気楽に生きたいからって、そう2人で話し合いましたよね」
「ああ、でもこの街を作るっていうのは完全に俺のわがまま──」
「私たちの、です」
「そうだな……、俺たちのわがままだから、ハンマーとか協力してくれた色々な人たちに相応の報酬を俺たちの財布から支払ったんだ」
「それはもちろん、……気づけなくてごめんなさい……私……」
「魔王討伐してからお金で困ったことなかったし、俺も気が抜けていたよ。……いい勉強になったね、残高はほぼ0になったけど」
アイナの手のひらに乗る。そしてスリスリと頬ずる、しっとりとしたきめ細かいスラリとした指に体を委ねる。アイナの身体が僅かにはねる。
「ん、バーガーさま……今日はアリサもいますから……め!」
「す、すまん、ついムラムラバーガーになってしまった」
「ふぅ……これからどうするつもりですか?」
「一緒にお金稼ごう、クエストとかこなしてさ」
「でも冒険者ギルドは街まで行かないと」
「バッガッガ! もうここはタスレ街だ、冒険者ギルドも作ってあります!」
「そんなものまで!」
「だからさ久しぶりにクエスト行っちゃおうぜ!夫婦水入らずで!」
「いいですね! あ、でもバーナーを置いては行けませんね」
「アリサに任せるか」
「そういうわけには、あくまで護衛として着いてくれているのですから、ベビーシッター代わりにするのはよくないですよ」
「そっか、そうだよな」
「どちらかは残ってあげないと、バーナーが可愛そうです」
「うむ……俺よりはアイナが近くにいたほうがいいな、ならばここは父親らしくめちゃくちゃ稼いできちゃおっかな!」
「……はい! お願いします!」
一瞬悩んだのはきっと止めたかったんだろう、それを見越して父親ってワードを出した。俺は悪いハンバーガーだ。




