EX6 ハンバーガー転生8
バーナーが2歳になったころ。
「緊急家族会議! 特別編だ!」
「はい!」
早朝のダイニングにて机を囲むもの達がいる!
ハンバーガータイプの勇者の俺、そして勇者のアイナ、一年間務めあげてくれた聖騎士十大大隊長のアリサ、タスレ村の長老、そして───────
「今年の護衛を担当する、大工のハンマーだ」
そう言うのは土方の格好をしたドワーフ族のおじさんだ。アリサがゴホンと咳払いする。
「大工ではなく『聖騎士十大大隊長』のハンマーでしょ!」
「違う俺は大工の聖騎士十大大隊長だ」
「……」
アリサがギロリと100睨みを効かせているが、そんなことは意にも介さない。
「王さまから言われて来たんだが、まだよく分かってねぇんだよな」
「王さまの話はちゃんと聞きなさいよ!」
「護衛って聞いてからそれ以降はほとんど聞いてなかった。で、俺が呼ばれたってことは、何か建てたいもんでもあるんかい?」
俺は机に躍り出る。
「ハンマー、これはあんたが今まで受けた以来の中で一番デカい山となる」
「ほぉ」
「このタスレ村を街にする」
「あ? 街作りなんぞ、何度もしたことがあるぞ」
「そんじょそこらの街じゃない、王都と同じくらい、いや王都越えの強固で安全で便利で、そして何より楽しい街にしたいんだ!」
「おおっ!!」
ハンマーが前に乗りでる。
「王都越えか、そいつは大仕事だ」
明らかに先程と比べてやる気に満ちている。
「という訳だから、村長、いいかな、壊しちゃダメな世界遺産とかあったっけ?」
「問題ないですじゃ、思いっきりやってくだされ」
こうして街の改造が始まった。
──────────────
村人の理解はとんでもなく早かった。この世界では亜人差別などない、故に人族とエルフ族は互いの文化を快く受け入れる土台が出来上がっている。先代たちが培ってきたこの精神性、環境、シチュエーションを無駄にはすまい。
「これも脆い……あれも脆い」
街を歩くハンマーは村の建物を見ながらブツブツと呟いている。
「見ただけでわかるのか?」
「おうよ、俺はドワーフの中でもビルディさまに次ぐドワーフだからな、物の呼吸くらい感じ取れるわ」
「戦いの最中でも凝った塹壕を作っちゃったりしちゃうくらいの生粋のドワーフよ」
アリサがボヤく。
2人と1品で村を回る。最南端の田舎村だからなぁ、言われてみれば青猪にすら突破されちゃうくらいのクソ雑魚防衛力しかないからな。
「多方わかった、作業に取り掛かる」
「どのくらい掛かるかな、人員も確保しないとな」
俺の言葉にアリサは苦笑し、ハンマーは「は?」と返す。
「俺一人でやる、1ヶ月も掛からんわい」
「はぁ!? え、無理でしょ」
「まぁ、見とけ」
ハンマーがハンマーを取り出す。
「ふんっ!」
地面を叩く。すると大地が輝き揺れ始める。
「うおおっ!」
土を踏み締めて作られた大通りが舗装されていく。1分も掛からずに通り心地の良い道になる。
「な、なんじゃこりゃ!!」
「これが俺の聖槌、ビルディングハンマーの力だ」
「すげぇ! マジでビルディさまじゃん!」
「ふん、こんなもの造作もない、それでどこからやろうか」
マインクラフトの始まりだ。
──────────────
この1ヶ月はハンマーに付きっきりだった。本来なら一度建てた建物を作り直したり、位置を微調整したりなんかはできない。だがハンマーがいれば俺のわがままが全て通る。途中から仕様書を変更しても対応してくる。恐ろしい男だ。
俺の世界の話をしたら、それもオリジナルに昇華して組み込んでくれる。
周囲を大きな城壁で囲み、家の作りも強固なものにした。それでいて風通しがいいようにして、アイナの風の力も遺憾無く発揮出来るようにしてある。間違いなく俺たちのための街だ。
「あとはこれだな」
俺たちがいるのは中央付近の施設だ。伽藍堂な施設内には円盤状の石版を立てたような建造物が幾つも並んでいる。大きな駅のプラットフォームのような施設だ。線路も電車も無いがかわりに石版がある感じだ。
「これに転移の魔法陣を描けば終わるな」
そう、ここから王都や、主要都市に移動できるようにする。
タスレ駅だ。