EX6 ハンバーガー転生7
アリサが来てから半年ほど経ったある日の昼下がり。俺たちは外に出てピクニックをしている。ハンモックに揺られた俺はさながらハンモックバーガーだ。
仕事に出かけたアイナの代わりにバーナーの面倒を見るアリサ(この半年間でアリサはアイナからバーナーを任せられるほどの信頼を得た)はバーナーの手をニギニギして神妙な面持ちで話し始めた。
「バーナーはすごい才能の持ち主っぽいね」
キョトンとしているバーナーの代わりに俺がリアクションしてやる。
「そりゃそうとも、俺とアイナの子だ、生きてるだけで特別な才能さ」
「いや、そういう意味ではなくて、そのままの意味だよ」
「ん? なんで分かるの?」
「逆にわかんないの?」
「いやぁ、このバンズで挟んで解析しないことにはね、絶対したくないけど」
「アイナはわかってるっぽいよ」
「え、そうなの……いやだなー、バーナーの体調の変化はちゃんと俺にも教えてほしいものだ、それでなんの才能なの?」
「魔力の才能だよ。バーナーから発せられる魔力は凄まじいよ」
「膨大な魔力を持っているっていう才能か」
「うん、勇者属性と風属性の魔力もある」
「へぇ、まぁ俺魔力持ってないから。魔力関係は全部アイナのおかげだよ」
「ううん、もう一つの属性も感じるよ」
「マジ? え、ちょっと待って!」
「どうしたの?」
いやいやいやいや、俺魔力ないから俺から受け継ぐ魔力はない。ならアイナ以外の誰の魔力を受け継いだって言うんだ……。
「DNA鑑定なんて異世界じゃできないし、それにアイナがそんなことするわけが……」
「なにぶつくさ言ってんの? バーナーのもう一つの属性は──」
「まって! 心の準備がっ!! 幸せな夫婦生活がっ!!」
「『火』だよ」
「あああああああああああああああああああ!!!!」
「声を出して聞こえないようにしてる」
「火って誰の魔力を受け継いだって言うんだ!?」
「聞こえてっし」
「隔世遺伝じゃない?」
「家計簿調べるか……」
いやいや、アイナのフォルシウス家は代々風属性使いだし、俺のグリルガード家は……ただのエセ関西弁の家計だ、火属性の魔力なんてない……、それに俺とアイナが致したとき、俺は本物の俺になっていた。
「いや、いいか、火属性がどこから来ようと、バーナーは俺の息子だ」
「プルプル震えてっぞ」
「誰がスライムだ、俺はハンバーガーだ」
「不安なら調べてあげようか?」
「必要ない、必要ないんだ」
「大丈夫っしょ、ほら目元なんてバーガーにそっくりだしっ」
「そ、そうだよな。……もしかして魔力の属性って遺伝以外にも突然増えたりすることあるのか?」
「んー、レアケースだけどあるっぽいよ、例えば長年の血統で火属性と水属性が合わさってお湯魔法になったり、そんな感じで」
もしや、女神の魔法陣か?それが俺から引き継がれたとしたら……いやだ考えたくもない。
「そーそー、話は変わるけどさー」
「な、なんだ」
「私がバーナーの先生になってもいいかな?」
「え、ベビーシッターだろ?」
「せ、い、き、し、だ、い、た、い、ちょ、う!」
「バーナーはそんなに有望なのか?」
「うん、こんな立派な魔力してるならちゃんと扱い方を教えないと危険だよ」
「失礼だが教職免許はあるのか?」
「聖騎士十大大隊長の資格を持ってるから指導も出来るよ」
エッヘンと胸を張る。
「そうか、なら個人指導頼んじゃおっかな」
少し気が早いかもだが、先に決めておくのも悪くない。
「アイナに確認取らないとな」
「もちろん! そのためにだーいぶ取り入ったからねー」
「そ、そのために!?」
「ウソウソ。私たち聖騎士十大大隊長は、この任務に誇りを持っているんだよね」
「平和の先駆けとなるこの任務にさ」
そういうアリサの視線は、この澄み渡る空のその先を見ていた。